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ヤマトHD、グループのサステナブル中期計画を策定

2022年3月29日 (火)

環境・CSRヤマトホールディングス(HD)は29日、ヤマトグループ中期経営計画「Oneヤマト2023」の重点施策の一つであるサステナブル経営の強化目標をまとめた「サステナブル中期計画2023【環境・社会】」を策定したと発表した。

ヤマトグループは、2020年1月に発表した中長期的な経営のグランドデザイン「YAMATO NEXT(ヤマトネクスト)100」において、2050年の二酸化炭素の排出実質ゼロ方針をはじめ4つの目標からなる「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」と、生活の質向上への貢献につながる6つの目標からなる「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない”社会の実現への貢献」という2つのビジョンを掲げている。

このたび策定したサステナブル中期計画は、これらのビジョンの達成に向けた重要課題に対する具体的な行動内容と2023年までの到達目標を定めた包括的なサステナブル中期計画だ。今後、各施策を事業活動の中で遂行することにより、社会と事業の持続可能な発展を目指す。

「環境中期計画2023」では、事業活動の環境負荷を抜本的に減らすために、総量目標および資材や車など物流業界として革新的な技術の普及に貢献できる分野についても目標を設定。多様なパートナーと協働した取り組みやビジネス機会も目標対象とすることにより、顧客やパートナー、地域社会のレジリエンスを高め、環境価値を生み出していく。

具体的には、温室効果ガス排出量を20年度比10%削減するほか、再生可能エネルギー由来電力の使用を30%とする。自動車の窒素酸化物や粒子状物質の排出量を20年度比25%削減するほか、大気汚染物質の排出が少ない自動車の導入に注力する。紙材における再生可能資源や再生材の利用を55%とするほか、埋め立て処分率を5%以下に抑える。

「社会中期計画2023」については、事業活動を通して豊かな社会を実現するために、国際的な基準やニーズに応える取り組みを計画に組み込んだ。労働や人権も目標の対象とし、多様な人材の尊重や社員が活躍できる職場環境の整備に努めるとともに、サプライチェーンや地域と共同で社会課題の解決にも取り組む。

社員一人当たりの残業時間を20年度比で20%削減するほか、有給休暇取得率を90%にする。障がい者雇用率を2.5%とするほか、女性管理職数を20年度比で2倍に増やし、比率を10%とする。安全対応では、重大交通事故の撲滅や対人交通事故件数を19年度比で半減に。休業災害度数率を19年度比で20%削減する。情報セキュリティーの管理者配置を100%とするとともに、重大事故をゼロにする。

サステナブル中期計画、その実現は業容拡大を図るうえで不可欠なプロセスだ

ヤマトHDが策定したサステナブル中期計画2023【環境・社会】は、社会活動を支えるインフラとして機能している宅配サービスを中心としたビジネス展開における環境対応目標を系統化した意味で、意義のある取り組みと言える。環境対応を経営の主軸に置く意思を鮮明にした形だが、その実行力についてはこれからの事業運営で試されることになる。

政府が2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に据えるなど、世界レベルで脱炭素化の機運が高まるなかで、物流業界の環境対応は避けて通れない命題になっている。トラックなど車両を活用した輸配送を手がけるだけでなく、現場を中心に多くの従業員の手によって荷物が取り扱われている。先進機器・システムの導入が進んでいるとはいえ、最後に荷物を届けているのは、やはり人間だ。

こうした輸配送プロセスは、これから先に変貌を遂げることがあるとしても、基本的な本質は変わらないだろう。荷物を扱う現場では、効率化だけでなく就労環境の改善にも配慮した経営が不可欠であり、その実行力が問われているのだ。それが、社会を支えるインフラの一翼を担う宅配事業者であればなおさらだ。

ヤマトHDが策定したサステナブル中期計画は例えるならば、こうした対応の実現に向けたスタートラインだ。業容拡大を図りライバルとの差別化を明確にするためには、こうした持続可能な社会の実現に向けた取り組みが伴っていなければならない。この計画の実行は、それを証明するための行程でもある。(編集部・清水直樹)

▲環境中期計画2023(クリックで拡大、出所:ヤマト運輸)

▲社会中期計画2023(出所:ヤマト運輸)