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スーパー「カスミ」店舗への自律型協働ロボPEER導入の狙いは

GROUND、伝統的な小売業の物流の革新も「使命」だ

2022年6月16日 (木)

話題商品がきれいに陳列された棚の間を、1台のロボットが音も立てずに進んでいく。あるコーナーで停止すると、店員がロボットに据え付けられた画面に表示された商品を棚から取り出す。商品をロボットの抱えるコンテナに入れて画面を操作すると、次の目的地へ進み出した――。

茨城県つくば市。研究機関が整然と並ぶ研究学園都市の一角で、ことし1月28日にオープンしたスーパーマーケット「BLANDE(ブランデ)つくば並木店」で、ネットスーパーサービスにおけるピッキング業務を支援しているのは、GROUND(グラウンド、東京都江東区)の開発した物流施設向け自律型協働ロボット「PEER」(ピア)だ。国内初となる実店舗での自律型協働ロボットの導入例として、流通業界でも話題となった。2月17日には、同じくつくば市の「BLANDE研究学園店」にもピッキング業支援としてPEERを導入するなど、活躍の場を広げている。

ハードウエアやソフトウエアの開発を通して物流にかかる様々な問題の解決を支援するソリューションを提供するGROUNDが、スーパーマーケットの店頭に物流ロボットを投入する狙いは何か。そこには、GROUNDが描く物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の「あるべき姿」の実現に向けた戦略があった。

「顧客との対話」から生まれたPEERの店頭導入

PEERは、ロボットと人間が協働でピッキング作業を行うことで省人化を図るソリューションだ。作業者のピッキング効率の向上や人為的ミスの低減を実現できるほか、タブレット端末による直感的でわかりやすい操作性が特徴。わずかな訓練時間で作業を習熟できることから、物流現場へ導入しやすいロボットとして注目を集めている。

▲自律型協働ロボットとして小売店舗で活躍している「PEER」

物流倉庫向けソリューションの提供で存在感を高めてきた印象が強いGROUND。小売店舗向けに自律型協働ロボットを導入した意義について、「GROUNDとお客様との対話のなかで生まれた取り組みであること」と話すのは、ソリューション営業本部ロボティクス営業部の鈴木圭一郎部長だ。

GROUNDは2015年の設立以来、物流領域における世界で最先端の技術に基づく革新的な問題解決策を提供する取り組みを続けてきた。しかし、それは物流事業者のみを対象としているビジネスモデルを貫くことを意味するのではない。物流サービスの「ユーザー」である小売業や卸売業など幅広い業種におけるDXを支える取り組みをも推進しているのが、GROUNDのスタイルだ。

▲「GROUNDの強みは、お客様との対話を通じて、自社の知見・技術を様々な問題解決に活かしていくこと」と話す鈴木圭一郎氏

今回、スーパーマーケットの新業態店舗「BLANDE」の展開をスタートした、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスグループで茨城県地盤のカスミ(つくば市)。カスミは、新業態店舗「BLANDE」の展開にあたり、ネットスーパーおよび店頭受け取りサービス「BOPIS」(ボピス、Buy Online Pick-up In Store)を支える自動化機器として、PEERの導入を決定した。

「GROUNDの強みは、お客様との対話を通じて、自社の知見・技術を様々な問題解決に活かしていくことです。今回の取り組みをきっかけに、物流施設内作業の合理化のみならず、小売店の店頭で発生する物流の課題に対しても積極的に対応していきたいと考えています」(鈴木氏)

店舗向けソリューションの実現を支えるビジネスモデルの「2つの強み」

ロボットベンダーをはじめとする、いわゆるメーカーはこれまで、自社で独自にマーケティング活動を通じて製品を開発して市場に展開する販売戦略が一般的だった。とりわけ技術力の高さを追求してきた国内メーカーにその傾向が強く、結果として顧客の意向を十分に反映できずハイスペックであるがゆえに失速してしまう事例も少なくなかった。先進的システムとして注目を集めてきたロボット分野はまさに象徴的だ。

「プロダクトアウト」か「マーケットイン」か。GROUNDは、高度化・複雑化する物流オペレーションに対して、需要と供給のバランスを考慮する最適なハードウエアとソフトウエアで構成されたソリューションを提供するビジネスモデルの確立を目指している。その文脈で考えれば、プロダクトアウトの発想と無縁であるのはもちろんのこと、単純なマーケットイン戦略と言い切るのも本質的な見方ではないだろう。

それでは、GROUNDの物流ソリューション提供ビジネスの特徴とは何か。「大きく2つのポイントがあると考えています」と話すのは、ソリューション営業本部ソリューション営業企画部兼ソリューション営業部の品川竜介部長だ。

まずは、先ほど鈴木氏も指摘した、「ソリューションの設計におけるお客様との対話」だ。GROUNDのビジネスモデルは「お客様の問題を抽出してその解決策を提示する」というものだ。とはいえ、そのプロセスによって解決策の内容は大きく変わるはずである。「GROUNDが提供するソリューションに、どこまでお客様の問題認識や『ありたい姿』が反映されているのか。そこに強いこだわりがあります」(品川氏)

▲「GROUNDには、ハードウエアやソフトウエアで構成されたソリューションを提供できる強みがあります」と語る品川竜介氏

しかし、それだけでは満足感のある問題解決策の提案は難しいという。そこで2つ目のポイントだ。それは問題解決につなげられるチャネル、つまり手段のラインアップの豊富さだ。ここで、プロダクトアウトでもマーケットインでもないビジネスモデルを掲げるGROUNDの強みが発揮されるのである。

「GROUNDには、ハードウエアやソフトウエアで構成されたソリューションを提供できる強みがあります。さらに正確に表現するならば、ロボットやITシステムなど様々な手段を組み合わせることで、お客様の問題を解決できる最適解を提示する力を持っていることなのです」。品川氏は、従来のロボットやソフトウエアのベンダーとの違いを強調する。

「GROUNDがソリューションを提供するためには、まず真の問題の抽出と、その解決に向けた最適な方法の検討というプロセスを踏むことが不可欠です。その手段として、お客様が抱える真の問題の抽出、それを反映した提案力、さらにはハードウエア・ソフトウエア両面で問題解決を支援する力。これらの総合力が、GROUNDの物流ソリューションなのです」(品川氏)

GROUNDの小売店舗向けソリューションも披露する「関西物流展」

GROUNDは、大阪市住之江区のインテックス大阪で6月22日から3日間の日程で開催される「第3回関西物流展」に昨年に続いて参加。PEERによるBLANDEでのピッキング自動化の取り組みを紹介する。

出入り口に近いスペースを確保し、ウイルテック、テクトレ、BIPROGY(ビプロジー)との共同でブースを展開する(小間番号:A6-11)。

GROUNDは関西物流展のブースで、PEERによる小売店舗でのピッキングをはじめ、物流施設統合管理・最適化システム「GWES」(ジーダブリューイーエス、GROUND Warehouse Execution System)など多様な物流ソリューションを披露。物流DXの旗手として圧倒的な存在感をアピールする機会とする。

▲GWESの全体像(クリックで拡大)

東京をはじめ関東に各種拠点を置くGROUNDにとって、物流ビジネスが集積する関西圏での営業活動のさらなる強化を図る足掛かりにする狙いがある。特にPEERの小売店舗への導入については、本格的な見本市での初のアピールの場となることから、鈴木氏をはじめとする関係者の期待も大きい。

関西物流展以外の訴求についても注力に余念がない。物流展を訪問できない関西圏以外の顧客に対しては、「GROUNDソリューション・オンライン見学会」を随時実施。さらに、GROUNDが2018年5月に開設し、ことし1月18日にリニューアルしたロボットソリューションや先端技術について独自に研究・開発を行うR&D(研究開発)センター「playGROUND」(プレイグラウンド)でも、実機によるデモンストレーションや操作体験の場を提供している。

「GROUNDソリューション・オンライン見学会」申込ページ

社会に不可欠なインフラである「物流」のあらゆる問題の解決に取り組むGROUND。関西物流展のブースは、こうした物流ソリューションの提供にかける強い「使命感」を体感できる空間になるだろう。それは、物流DXの「あるべき姿」を提示しているGROUNDの理念の結集なのだ。