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製造業の「中間拠点」と都市圏配送を担う高機能センター

ESR、中京圏拠点網確立の布石「名古屋南DC2」

2022年7月28日 (木)

話題香港に本社を置きアジア太平洋各国で物流不動産やデータセンター開発を手がけ、ことし不動産投資ファンドのARAアセットマネジメント(シンガポール)を買収しアジア太平洋地域最大のアセットマネジメント会社になったESR(イーエスアール)が、名古屋港の東側エリアに2か所目となるマルチテナント型物流施設を開発する。「ESR名古屋南ディストリビューションセンター2」(名古屋南DC2、名古屋市港区)。ESRが中京圏で開発した初の物流倉庫として2017年5月に稼働した「REDWOOD(レッドウッド)名古屋南ディストリビューションセンター」(名古屋南DC)とはわずか2キロの距離だ。

▲「ESR名古屋南ディストリビューションセンター2」の完成予想イメージ

現在満床で人気の高い名古屋南DCを補完する意味合いもある名古屋南DC2。ことし11月に建築工事に着手し2023年10月の完成を予定しているボックス型物流施設は、ESRが描く中京圏DCネットワークで重要な役割が期待されている。

製造拠点から名古屋港への「中間拠点」に

名古屋港は全国でも有数の貿易港であり、自動車(完成車)と自動車部品が主要な輸出品だ。自動車産業を基軸とする中京工業地帯を背景とした国際拠点港湾として、発展を続けている。

▲「ESR名古屋南DC2」のアクセスマップ(クリックで拡大)

貿易港としての存在感を強めている名古屋港の機能を支えるのが、港湾エリアにある物流倉庫だ。愛知県の内陸部に多く立地する完成車や自動車部品・部材の製造拠点から運ばれる製品は、名古屋港の近くにある倉庫で保管され、船への積み込みを待つ。

ESRが名古屋南DCとともに名古屋南DC2に期待するのが、まさにこの役割だ。「名古屋港への『中間拠点』としての機能をさらに高めること。それが名古屋南DC2を新設する一つ目の狙いです」(ESR大阪オフィスの斎藤慎一郎・リーシングオフィサー)

「名古屋都市圏の配送機能」への期待

ESRが名古屋南DC2に求めるのは、愛知県内陸部の自動車関連産業の配送拠点と名古屋港を中継する機能だけではない。名古屋南DC2が担うもうひとつの役割、それは名古屋市を中心とする都市圏配送拠点としての機能だ。

「自動車産業だけでなく食品や飲料など消費財の配送拠点として、高い利便性を発揮できると考えています」(斎藤氏)。230万の人口を擁する名古屋市を中心に、数多くの都市が連続する名古屋都市圏。卓越した産業立地だけでなく、幅広い居住域を抱える。

▲ESR大阪オフィス・リーシングオフィサーの斎藤慎一郎氏

新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛を契機とする宅配ニーズの高まりで、EC(電子商取引)サービスを活用した消費スタイルの多様化が加速。「新しい生活様式」の時代を迎えて店舗からECへと購買シフトが進むなかで、こうした配送拠点の重要性はさらに高まる。ESRは名古屋南DC2を、こうした「使命」を担う物流拠点として訴求していく。

「二つの機能」を担える仕様へのこだわり

こうした二つの機能が期待される名古屋南DC2。その役割を果たすための効率的な仕様にこだわる。

(イメージ)

限られた敷地を有効に活用するため、1階を3区画に分けて2階から4階までの3フロアをそれぞれ組み合わせて「2層使い」を可能とすることで、最大で3社に分割して賃貸できるようにした。各区画は荷物用エレベーターと垂直搬送機により高い縦方向の搬送能力を備える。「一部の垂直搬送機をバースに接した場所に据えることにより、積み下ろした荷物の搬送の手間を省けるようにしているのも特徴です」(斎藤氏)

さらに注目すべきポイントは、トラックの入出庫誘導ルートだ。名古屋南DC2へ向かうトラックが通る県道から入庫して車路を経由して出庫するまでのルートを半時計回りでスムーズに走れるよう、建屋に加えて周辺道路に接続できる通路を設けるための用地を追加で取得した。斎藤氏は「トラック誘導の円滑化により、構内における効率的な荷扱いと従業員の安全確保を実現する取り組みです」と強調する。

中京圏におけるDCネットワーク強化を推進

▲ESR愛西ディストリビューションセンター外観

ESRは名古屋南DC2の開発プロジェクトを、名古屋南DCの機能拡張とともに、中京圏におけるネットワークを強化する機会と位置付けている。ことし4月に稼働した「ESR弥富木曽岬ディストリビューションセンター」(弥富木曽岬DC、三重県木曽岬町)を含めて、中京圏で6カ所の拠点網が整うことで、名古屋港エリアから伊勢湾岸自動車道の沿線、さらに内陸部までをカバーできるネットワークを形成できるからだ。

(クリックで拡大)

愛知県内陸部における倉庫機能を担う拠点として注力するのが、「ESR愛西ディストリビューションセンター」(愛西DC、愛知県愛西市)だ。2010月に稼働した愛西DCは名古屋市中心部も20キロ以内に位置し、名古屋都市圏の配送拠点としても機能するほか、国道155号で名神高速道路の一宮インターチェンジ(IC)を経由して北陸地方も視野に入れた広域アクセスの足場としても活用できる強みがある。ESRはこうした愛西DCの立地面における強みを訴求している。

製造業が大きな存在感を発揮する、独自の経済圏を擁する中京エリア。ESRは、こうした産業需要とともに都市圏配送機能を担うため、地域特性に合わせた機能を持たせた施設を開発することで、強固な物流施設網を確立しようとしている。

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