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日野自問題で調査報告書「不正2003年以前から」

2022年8月2日 (火)

荷主日野自動車の国内向けトラック・バス用エンジンの排ガス・燃費認証で不正が見つかった問題で、同社は2日、外部有識者で作る特別調査委員会の調査の結果、「長期にわたる不正の事実が判明した」と発表した。不正は3月時点の想定よりはるかに古い20年前から行われており、性能が基準に満たないエンジンが新たに5機種見つかった。同社は再発防止策を発表、経営陣を含む責任の所在は今後3か月を目処に明確化するとした。日野に対する顧客や市場の信用失墜はさらに膨らみ、すでに出荷停止で国内販売は大打撃を受けており、経営の立て直しには相当険しい道のりが予想される。

▲謝罪する日野自動車の小木曽聡社長

同社は同日、調査報告書を国土交通省に提出した後、小木曽聡社長が都内で記者会見し、「関係者の方々に多大なご迷惑をおかけした」と謝罪した。

同社の発表によると、調査委の調査により判明した事実は、トラック・バス用のディーゼルエンジンについて、排出ガスと燃費関連の認証で新たな不正行為が見つかったほか、建設機械用のエンジンでも国の劣化耐久試験に対する不正が判明した。さらに、2016年に国土交通省から認証取得時の排出ガス・燃費試験での不適切事案の有無を報告するよう求められた際に、不適切事案があるにもかかわらず「ない」とウソの報告を行ったことも明らかになった。不正は開発部門の複数の担当者が、国の規制値に達しないことなどから犯したとし、組織ぐるみの関与は否定した。ただ、開発担当者を不正に走らせた経営陣や役員の責任は認めた。

新たに5機種のエンジンに問題判明

認証不正の中で出荷されてしまった問題のあるエンジンは、3月時点で判明していた4機種に加え新たに5機種、計9機種となった。日野はこれらのエンジンの一部について国交省に届けたうえで速やかにリコールを行うとしている。新たな5機種についても同省から型式指定の取り消しを受ける可能性がある。さらに、過去に出荷したトラック・バスの燃費性能が基準値未満だったことで税制の優遇措置が無効になり、車両の保有者に追加納税が必要となった場合は日野が負担するとした。

▲顧客対応策などを説明する小木曽社長

調査報告書によると、不正行為は繰り返し行われてきたが、具体的に確認された最も古い行為は2005年12月下旬に起きた。エンジンの開発担当者が、政府の燃費規制に大幅に未達の状態でありながら、役員が達成を強く求めるなどしたため、適切な対応をしなかった。そして、翌06年4月に担当者が燃費に関する数値を操作して、国の審査をくぐり抜けていた。ただ、特別調査委員会が社員らに行ったヒアリングでは、03年以前から同様の不正があったとの証言が出ており、調査委では20年近く前から不正が行われたとみている。

小木曽社長は物流企業などトラックのユーザー企業が3月の問題発覚以降、同社の出荷停止で車両の更新などができなくなっていることについて、「顧客の方々にはただただ申し訳ない。社員を顧客のところに派遣して困りごとを聞いている。販売会社と協力してできるだけの対応をしたい」と重ねて謝罪した。また、今期の業績予想については、追加のリコール費用などが固まらないとして明らかにしなかった。

調査委員長「組織体質に問題」

▲記者会見する特別調査委員会の榊原一夫委員長

特別調査委員会の榊原一夫委員長(元大阪高検検事長)ら3人の委員も記者会見した。榊原委員長は不正が起きた「真因」として、日野自動車の伝統的な組織体質があると指摘した。「セクショナリズムが強く、組織が縦割りで、自由闊達(かったつ)な議論をしていない。みんなでクルマをつくるという発想になっていない」「上位下達の気風が強すぎ、上にものを言えない風通しの悪い組織となっている」「過去の成功体験を引きずり、できないことや過去の過ちを認めることができない」などと指摘。今後、品質保証部門の機能強化などを同社に求めた。

小木曽社長は会見の席で、親会社トヨタ自動車の豊田章男社長のコメントを紹介した。「今回、日野自動車が犯した不正はお客様を始め全ての関係者を裏切るもので、大変遺憾に思う」。ただ、小木曽社長も調査委の榊原委員長も、一連の不正行為とトヨタとの関係については否定した。