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地方部での物流施設ネットワーク成功の背景にある秘策とは

大和ハウスの拠点網構築の強み、それは「地域密着型」

2022年8月16日 (火)

話題首都圏を中心に全国で物流施設ネットワークの構築を着々と進める大和ハウス工業。住宅総合メーカーとして事業を拡大するとともに、マンションやオフィスビル、ホテルといった不動産開発も展開するなど多角的な経営戦略を掲げるなかで、物流領域を大和ハウスグループにおける収益事業と位置付けている。

新型コロナウイルス感染拡大を契機にEC(電子商取引)サービスが浸透し、消費スタイルの多様化が急速に進んでいる。大和ハウス工業は「新しい生活様式」も見据えて、店舗からインターネットへと購買スタイルがシフトするなかで、物流施設開発にビジネスチャンスを見い出している。こうした取り組みで特筆すべきなのが、物流ビジネスの中核である首都圏から全国各地への積極的な拠点展開だ。

地方部にも物流拠点網を張り巡らせる狙いは何か。ここでは大都市圏ながら特有の拠点立地が顕著な東海地方に加えて、地方展開の例として北信越に着目。大和ハウス工業建築事業本部営業統括部の手塚公英・Dプロジェクト推進室長に話を聞いた。

▲大和ハウス工業建築事業本部営業統括部Dプロジェクト推進室長の手塚公英氏

大和ハウス工業が「地域密着型」物流施設の可能性を見出した「DPL富山射水」

大和ハウス工業が物流拠点開発に注力し始めた2000年代初頭。まだ現在ほど物流拠点をネットワークとして位置付ける発想がなかった時代だったが、東京から福岡までのいわゆる「太平洋ベルト地帯」を軸としたプロジェクトを順次展開。さらに、それ以外の地方でも物流施設を展開し始めることになる。これは他の物流開発事業者にはほとんど見られない動きとして注目された。

そんな拠点の一つが、2021年6月に完成した「DPL富山射水」(富山県射水市)だった。北陸地方で初のマルチテナント型施設。大都市圏でなければ成功しないとされていたマルチテナント型施設だったが、完成から半年で満床となった。「大都市圏から離れた地方でも、物流施設の需要は底堅いものがある」(手塚氏)ことを示す貴重な実績となった。

▲DPL富山射水

大和ハウス工業の物流施設開発は、首都圏と関西圏における「大都市型」とそれ以外の「地域密着型」に大別できる。地方部では、その地域特性に応じた地場の荷主の動向が鍵になる。同時に、その地域に存在しなかった物流サービスの提供を通して、新規市場の開拓につなげる意味合いも強い。地方で物流施設開発に成功しているのは、こうした2つのアプローチが奏功しているからにほかならない。

東海地方の存在感、それは高速道路結節点としての中継機能

こうした観点から、大和ハウス工業の物流施設展開の方向性を見てみよう。まずは東海地方だ。首都圏と関西圏に挟まれながらも、自動車産業を基盤とした独自の市場を擁する。

手塚氏は「全国に2か所の配送拠点を整備する場合、東海地方に倉庫を構える根拠は想定的に弱くなるのが実情」としながらも、注目を集めるとすれば「物流の2024年問題」に対応した中継機能だと指摘する。「東海地方における物流拠点は、新東名・新名神高速道路の延伸・全通が追い風になります。既存の東名・名神高速道路や中央自動車道と合わせて、東名阪を結ぶ複数の大動脈が東海地方で結節するのですから」(手塚氏)

▲DPL名港弥富I(左奥)、II(右手前)

大和ハウス工業は、こうした動きを色濃く反映した拠点展開を加速。その象徴が「DPL名港弥富I・II」(愛知県弥富市)。新東名・新名神と両端で接続する伊勢湾岸自動車道のインターチェンジ(IC)に至近の24時間稼働の施設だ。

「産業あるところに物流あり」、それを象徴する北陸地方

それでは、東海地方から東海北陸自動車道で山岳地帯を抜けた北陸地方に目を転じる。寒冷で潤いのある気候風土に加えて豊かな水資源も背景に、独自の産業が根付いてきた。富山の医薬品関連産業はその象徴だ。

「地場の産業が確立している北陸地方には、必ず物流需要があります。産業があるから物流施設を展開できる、そのために必要な土地を探す。そして入居企業に物流の付加価値を提供する。それが大和ハウス工業の地方における物流施設展開の『方程式』です」(手塚氏)

DPL富山射水の成功で北陸地方における物流施設開発の可能性に手応えを得た大和ハウス工業。そのノウハウは、新たに同じ富山県の高岡市で始動したプロジェクトに反映されることになりそうだ。

地方での物流施設網構築に見る「物流のあるべき姿」

大和ハウス工業は、物流施設の建設を担う全国35拠点がそれぞれ物流施設開発のチャンスをうかがいながら活動している。「他の不動産開発事業者は大都市、つまり東京を中心に物流施設ネットワークを考えているように感じます。大和ハウス工業は、各営業拠点がエリア内におけるニーズや市場特性を把握しながら開発案件を探索するシステムが整っています。それも地方における物流施設網の強化をあと押しする要因と考えています」(手塚氏)

物流は究極の立地産業だと言われる。この列島には実に多様な産業や文化が根付き、固有の市場を形成している。モノが動けば必ず生まれるのが物流だ。その地域における生活や産業のインフラはどうあるべきか。大和ハウス工業の取り組みは、こうした物流のあるべき姿を改めて認識する機会にもなっているのだろう。

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