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業界最高水準の耐風圧4500パスカルで物流インフラ確保に挑む

三和シヤッター、耐風シャッターで倉庫機能確保へ

2022年9月21日 (水)

(イメージ)

話題毎年のように列島で猛威を振るう大型台風や竜巻。大雨や落雷などとともに大きな被害をもたらすのが激しい風だ。物流業界では高速道路など交通インフラの遮断による輸配送の遅延がクローズアップされるが、こうした荷物を保管して仕分ける倉庫の被災もサプライチェーンに甚大なダメージを与える。

大型化が急速に進む物流倉庫。EC(電子商取引)サービスの普及に加えて、新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり需要の高まりによる取扱量の急増が背景にあるが、こうした大型倉庫にとって悩みの種なのが、意外にも「強風への対応」なのだ。開口が広く複層構造が主流の先進的な倉庫ゆえに、強風の影響を受けやすい。相手が自然であることから、こうした風との対峙(たいじ)はもはや「宿命」なのだろう。

倉庫の大型化がもたらす新たな課題。そこに挑む建材メーカーがある。シャッターやドアをはじめとした「動く建材」の開発・製造で知られる三和シヤッター工業だ。大手シャッターメーカーが着目した解決策。それはシャッターの「強度」と「使いやすさ」の両立への挑戦でもある。

「高耐風圧」に注力する三和シヤッターの新商品、衝撃の「風圧4500パスカル対応」

シャッターのみならず、ドアや間仕切り、トイレブースなど空間を「仕切る」建材を手掛ける三和シヤッター工業。1956年に兵庫県尼崎市で創業してから一貫して手掛けてきたシャッター関連事業は、国内で高い存在感を築くだけでなく欧米やアジア諸国にもその舞台を広げるなど、積極的なビジネス展開で市場の評価も高い。

そんな三和シヤッター工業が近年注力するテーマが、「耐風圧(たいふうあつ)性能」だ。風速80メートル毎秒に相当する風圧3900パスカル(開口幅9.5メートルを想定)に対応する「耐風ガード」を2020年4月に商品化した。

▲耐風ガードシリーズの新商品であるオーバースライダータイプの「耐風ガードOSD」

この耐風ガードシリーズの新商品として21年9月に発売した、オーバースライダータイプの「耐風ガードOSD」は一段上の最大4500パスカル(風速85.7メートル毎秒)の耐風圧強度を確保した。物流倉庫を手掛ける事業者の間で注目を集めている。これまでの耐風ガードシリーズとは“異次元”の開口部商品と称される強みはどこにあるのだろうか。

耐風ガードOSD開発の契機となった、物流倉庫の「高層化」

主に物流倉庫向けのオーバースライダー方式の開口部商品である耐風ガードOSDは、広い開口部でパネルが倉庫内の天井に沿って収納される構造が特長だ。とはいえ、耐風圧強度を相当に高めた耐風ガードシリーズで、さらに高強度な新商品の開発に踏み切った狙いは何なのか。

「物流倉庫における『耐風圧性能』のより高い開口部商品のニーズが急速に高まっているためです」と話すのは、商品開発部環境建材グループ環境建材課の坂本克広課長だ。

▲三和シヤッター商品開発部環境建材グループ環境建材課の坂本克広課長

物流倉庫の開口部に高い耐風圧強度が求められているのはなぜなのか。近年の台風の大型化による物流倉庫への甚大な被害への懸念がこれまでになく強まっているのは、もはや周知の通りだろう。しかし、坂本氏はそれだけが倉庫現場における強風への課題ではないと指摘する。

「物流倉庫の大型化、さらに具体的に言うならば『高層化』。これが倉庫運営者が頭を抱える風対策の要因なのです」

消費スタイルの多様化がもたらした、倉庫における「耐風圧」への懸念

ECサービス普及やコロナ禍を契機として国民の間で急速に進んだ、消費スタイルの多様化。ECサービスの利用拡大による物流倉庫需要の高まりに伴い、都市部を中心に高層化された大型物流倉庫が増加している。一般的に、建物は階層が高くなるに連れて風圧が急速に高まるとされている。地平でさほど強いと感じない風であっても、高層階では相当の風圧を感じるケースも少なくない。

「開口部の広い大型物流施設の場合、この風圧が大きな影響を及ぼすことが分かっています。物流倉庫は大型化に合わせて、荷物の搬出入などに必要な開口部が高層階に設けられることとなります。こうして高層化が進むほど、耐風圧強度をより引き上げなければならないのです」(坂本氏)

▲耐風ガードOSDは耐風圧強度4500パスカルと業界でも最高水準を確保しながら、開口幅は最大で8.3メートルまで対応できる機能が強みだ(写真のようなコンビネーションタイプも対応)

こうして生まれた耐風ガードOSDは、耐風圧強度4500パスカルと業界でも最高水準を確保しながら、開口の幅を最大で8.3メートル(アルミパネルの場合)まで対応できるのが強みだ。強度を高めながら開口部の幅を確保するという、二律背反ともいうべき課題に対応した画期的な新商品だ。

ちなみに、2000パスカル(風速57メートル毎秒)の風圧であれば開口を11.1メートル(アルミパネルの場合)まで対応できるというから、相当な強度の開口部商品と言えるだろう。

オーバースライダー部材の「全体のバランス」を重視した耐風圧強化の取り組み

壁と天井に設置したガイドレールにパネルをスライドさせるオーバースライダーを採用し、作業員の手でも簡単に開閉できるのも特長である耐風ガードOSD。その商品化には、シャッターの耐風圧強度を高めるための細かな技術面での取り組みがあった。

▲「シャッター全体の耐風圧強度を高めるためには、部材を組み合わせた状態でのバランスを考慮することが不可欠」と語る坂本氏

耐風ガードOSDのようなオーバースライダー方式の商品は、簡単に言えばパネルとローラー、レールの3つの部材で構成されている。「シャッター全体の耐風圧強度を高めるためには、それぞれの部材の強度を高めると同時に、部材を組み合わせた状態でのバランスを考慮することが不可欠です」(坂本氏)。いわば「部分最適」と「全体最適」を組み合わせた発想が、業界最高水準の耐風圧強度を実現したのだから、驚きだ。

風を直接受ける形になるパネルについては、安定した強度を確保する下框材を設置。締結部分の強度も高めるなど細部にわたって構造を見直した。ローラーはより強度を出せる材質を活用するとともに、直径を16ミリから18ミリに変更。レールも同様に固定する躯体面との結節部分にかかる力を意識した構造とした。そしてこれらの部材を組み合わせて性能試験を繰り返すことにより、最も安定して強度を確保できる構造を生み出すことができた。

「日本シヤッター・ドア協会(JSDA)の『シャッター・オーバーヘッドドアの耐風圧強度計算基準』はこれまで、パネル強度のみを考慮した設計になっていました。しかし、三和シヤッター工業は従来から新基準に対応したローラーやガイドレールの強度も考慮した設計としています」(坂本氏)。基準は21年5月に改訂された。三和シヤッター工業のスタンダードに業界がようやく追いついてきた、というところだろうか。

■オーバースライダー開閉動画

防塵や採光など多様な現場ニーズにも対応

▲パネルと床の接する部分に施されたウェザーストリップは、外部からの塵などの侵入を防ぐ機能がある

オーバースライダー本体の機能面における対策に加えて、オーバースライダーの機能である防塵性の確保につながる工夫も施している。三和シヤッター工業のオーバースライダーはパネルと床が接する最下部に「ウェザーストリップ」と呼ばれる密着度を高める部材を搭載。床の凹凸に追従することで、外部からの塵などの侵入を防いでいる。

物流倉庫におけるEC関連をはじめとする消費者向け商材の取り扱いが急増していることから、こうした防塵対策がより強化される傾向にあるという。「耐風ガードOSDは、ウェザーストリップの形状を従来商品の『くさび型』から『袋型』に変更することにより、床面への追従力を強化しています」(坂本氏)

▲ファイバーグラスタイプのパネルも対応可能

さらに、シャッターのパネルにも趣向を凝らした。通常のアルミタイプのほかに、耐候性と透光性の高いファイバーグラスタイプ、さらにアルミとファイバーグラスを組み合わせたコンビネーションタイプの3種類を用意。シャッターを閉じても採光が可能な仕様とすることで、風から荷物を守りながら庫内作業も最適化できるようにした。こちらも両立が難しい課題の解決に取り組んだ成果であろう。

社会に不可欠なインフラとして認識されるようになってきた物流。とりわけ、輸配送拠点として機能する倉庫の持続的な稼働の確保策は、サプライチェーンの確保・強化の観点からも決して避けて通れない命題だ。倉庫の稼働を阻む要素として懸念が広がっている風への実効的な方策を提案する、三和シヤッター工業。耐風圧強化への挑戦は今日も続く。


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