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トレーラー事故の原因、偏荷重や情報伝達不足も

2022年10月25日 (火)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を取り上げる「インサイト」。今回は「首都高の特徴踏まえた運転を、トレーラー事故多発」(10月12日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

ロジスティクス最近、海上コンテナを運ぶ大型トレーラーの事故が多発していることを受け、国土交通省がいっそうの注意を運送事業者らに呼び掛けている。中でも、コンテナの内部で荷物の積み方が悪かったために起きた事故が目立ち、そうした荷物の状態を運転者が正確に知らされていなかったケースも多く、同省は具体的な事故を例示して防止策を求めている。

大型トレーラーによる重大事故については、LOGISTICS TODAYも10月12日に深掘り取材記事シリーズ「インサイト」で事故防止のポイントを伝えた。同記事では、事故が多発している首都高速道路に着眼し、道路の特徴を踏まえた運転方法の重要性を指摘した。

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だが、事故防止に必要なのは運転者の注意や努力だけではない。運転前の段階にもいくつもの課題がある。国交省がとくに問題視しているのが、輸出入の国際海上コンテナを巡り、内部で荷物が片寄ったり荷物の間に隙間があったりする「積み荷積載方法不良」と、そうした積み荷の状況がドライバーにきちんと知らされない「貨物情報の伝達不足」の問題だ。

荷物に隙間、バランス崩す

全日本トラック協会(全ト協)などがこのほど東京都内で開いた国際海上コンテナの安全輸送講習会で、国交省自動車局の安全政策課長が登壇し、最近の具体例を示しながら課題点を説明した。ことし1〜6月に国際海上コンテナ輸送中の横転事故は全国で4件あり、その中で同省が重要視しているのが5月の福岡市での事故だ。

5月30日午前10時30分ごろ、同市博多区の福岡都市高速外回りで、輸入ドライコンテナ(長さ40フィート、背高)をけん引していた大型トラクターが左カーブを通過後に横転、運転者が重傷を負った。コンテナ内には製材26トンが積まれていたが、隙間があった。その隙間が積み荷を不安定にし、時速70〜75キロとみられる速度超過が重なり、カーブでバランスを崩したとみられる。運転者は運転前に積み荷の品目や重量は知らされていたが、積み付け方法までは把握していなかったという。

縛られていない家具、運転者には知らされず

同省は2021年に都内の国道で起きた横転事故の危険性も指摘している。輸入コンテナ(40フィート、背高)の中に組み立て式家具が固く縛られることなく片寄って積載されていた(偏荷重)。交差点に時速30キロで進入し、右折した際に25キロまで減速したが不十分で、コンテナが左後方からゆっくりと傾き、捻りながら横転した。運転者は積み荷について品目も重量も荷姿も知らされていなかったという。

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国交省のまとめによると、06〜21年の16年間に起きた国際海上コンテナの横転事故は160件。このうち速度超過やハンドル誤操作、コンテナロック不良など「運転者」に原因があった事故が128件(80%)と大半を占める。一方、「積載状態」のみに起因した事故も9件(6%)、「積載状態と運転者」が原因となった事故も同じく9件(6%)あった。合計18件(12%)を分析すると、過積載が7件、偏荷重・荷崩れが11件だった。これらの事故は輸送前に作業員や運転者に積み荷の状態が正しく伝えられ、適切な措置を行っていれば防げた可能性がある。

国交省、マニュアル作り連携呼び掛け

国交省に報告のあった国際海上コンテナ輸送中の横転事故は、21年に前年比8件増の13件と急増し、7年ぶりに死者が出た(2人)。重傷者も前年より1人多い3人となり、死傷者数5人は09年(7人)以来12年ぶりの悪い記録となった。

同省は国際海上コンテナについて「封印状態で運送されるという特殊性により、運転者がコンテナ内の貨物の重量、品目、積み付けに関する情報を十分に把握できない上、安全上問題のあるコンテナが見つかった場合でも現場の作業員や運転者のみの判断で対応することは難しい」と難点を認める。

その上で、重量超過や偏荷重などの不適切な状態を改善するための方策について「関係者間で合意形成し、協力体制を構築することが必要」とし、運送事業者や荷主、貿易関係者などの間で連携を深め、情報伝達を適切に行うよう求めている。関係者間で認識を共有できるよう、05年に安全輸送ガイドラインを、13年には安全輸送マニュアルを策定していたが、その後も状況変化に応じて数度の改訂を行った。今回の全ト協のような各地の安全講習会でもしばしば最新事例を報告し、周知を図っている。(編集部・東直人)