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物流スタートアップ・ベンチャー特集/第11回

「標準化」で物流の現場を効率化/シマント和田社長

2022年11月29日 (火)

話題LOGISTICS TODAYのスタートアップ・ベンチャー企業を応援する企画「物流スタートアップ・ベンチャー特集」。第11回は、シマント(東京都文京区)の和田怜社長です。

1つのフィールド(表の各項目)に1つ以上の複数の値を格納して処理することができる「マルチバリューデータベース技術」。シマントは、それを活用して物流現場の業務効率化・最適化を支援する取り組みに注力しています。サプライチェーン上の物流業務における問題解決をDX(デジタルトランスフォーメーション)で支援しています。

(イメージ)

マルチバリューデータベース技術との出会いは、2014年にシマントを設立する前に勤務していた銀行員時代でした。各部署から届く情報の集計業務を担当していましたが、その仕様が統一されていないためデータとして有効に活用できないという問題がありました。とはいえ、その解決には多額の費用を要するシステム改修が求められます。こうした集計業務の効率化における課題意識を模索するなかでたどり着いたのが、マルチバリューデータベース技術だったのです。

シマントでは、主に金融業界向けのビジネスを展開してきました。転機が訪れたのは、新型コロナウイルス感染症の拡大でした。各社がシステムの投資計画を見直すなかで、業績を維持する対策に頭を悩ませていたある日、物流会社から声がかかりました。それが、物流業界との本格的なビジネスの始まるきっかけになりました。

▲シマントの和田怜社長

いざ物流業界に足を踏み入れてみると、かつて銀行員時代に経験した「業務仕様の不統一」に直面しました。物流業界に特有の事情であると感じたのが、荷主と物流会社との関係性でした。データの統一による標準化を進めようとした場合に、物流業務の発注側で発言力のある荷主が「これまでのやり方を変えたくない」などの理由で断れば、受け手である物流会社が業務フローの見直しなどの対応を迫られるわけです。

現場業務の効率化を図るための標準業務フローを作ろうとすれば、「荷主への対応はそのままに、受け取り側である物流会社でデータの加工や調整を行う」ことになるのです。

輸配送や倉庫といった物流現場は、サプライチェーンという枠のなかに存在する機能です。製品工場から輸送、倉庫などを経て消費者の手元に届くまでのサプライチェーンの過程では、荷物にかかるものをはじめとする様々な情報が関係者の間で交わされます。

(イメージ)

データ集計の過程で仕様が標準化されていれば業務の効率化が実現するのですが、それは1人の力だけでは難しいでしょう。そこで効果を発揮するのが、マルチバリューデータベース技術です。物流現場の従事者が手作業で行っている業務について、シマントの独自データベースを活用して自動化することにより、業務効率の向上を促します。

シマントは、こうした現場業務の効率化を支援する取り組みを進めるにあたって、こだわっていることがあります。システム設計と企画を一体化した「ワンストップ」のシステムを提供している点です。現場と経営の間で最適なバランスを求めながら業務の効率化を図っていく、これがシマントの提示するDXです。当面は、企業や法人向けのエンタープライズ領域に特化してシステムの汎用化を進めたうえで、水平展開を図っていく考えです。(編集部・清水直樹)

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