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自配ロボ実装へ「社会許容度」課題、国交省の実証

2022年11月28日 (月)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「自走ロボで配送課題を探る、国交省が実験」(11月11日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

行政・団体国土交通省は26日、自動走行ロボットの走行実証に関する見学会を東京都北区で実施し、自走ロボが傾斜や段差のある公道を移動する様子を報道陣らに公開した。混雑地や段差を避けながら、目的地まで荷物を届けるロボット自動配送の実装に向けた可能性と、事故発生リスクに対する意識変革の必要性について報告した。

▲自動走行ロボットの走行実証に関する発表会

実証は、物流業界でドライバー不足による省力化・省人化への対応や非対面・接触の観点から、自配ロボがラストワンマイルを担うニーズが高まっている現状を踏まえて実施した。ロボットは川崎重工業の「FORRO」(フォロ、高さ1.2メートル、重量45キロ)を使用。段差や急な勾配、エレベーターなどの情報を含む「歩行空間ネットワークデータ」から最適な経路を探索して決定した上で、時速3キロ(最大6キロ)でJR赤羽駅前のコンビニエンスストアで購入した商品を1キロ離れた団地まで30分かけて運び、エレベーターへの乗降を含めて大きなトラブルや不具合なく走行した。

プロジェクトは、同省が取り組む「歩行空間ネットワークデータを用いた自動走行ロボットの走行実証」。2014年に大学や社会福祉法人の有識者を交えた検討委員会を設立した。「ロボットが走行する際にもバリアフリーに関する情報が必要不可欠」(同省担当者)と親和性の高さを踏まえて進められている。

同ネットワークデータは、広く情報を公開する「オープンデータ化」を通じて、道路形状の変化などを更新していく仕様を検討している。このネットワークについて、同省はロボット自動配送の運用にも活用できる仕組みづくりを進める方針で、物流事業者やロボット事業を手掛けるスタートアップ企業の参画も見据え、人手不足に苦しむ物流課題の解決につなげたい、としている。

一方で、26日の実証公開は当初、報道陣らの前で自配ロボを走行する様子を披露する予定だったが、朝からの雨天を理由に中止し、事前収録した動画を流すことに変更された。悪天候下での事故発生などを考慮した判断とみられる。


▲実証の様子。公道を荷物を積みながら走行し、エレベーターへの乗降も問題なく行われた。

一連の実証では自動走行ロボットを遠隔監視する業務について、体に障害がある人の就労支援も模索するなど人手不足に悩む物流業界にとっては新たな人材確保につながる可能性も秘めたものでもある。しかし、この日の発表で検討委の委員長を務める坂村健・東洋大学情報連携学部学部長は「日本社会は安全面に対する意識が強い。新しいことに対して抵抗勢力が強く、『絶対に安全なのか』という議論になる」と語り、ロボット自動配送の実装に向けて「社会の許容度」がハードルになると問題提起した。リスク一辺倒ではなく、万が一事故が起きた場合に、再発防止策を検討して実行していく考え方の重要性を説いた。

▲報道陣の前で写真撮影に応じる国交省の小林靖政策統括官(中央)や東洋大学の坂村健学部長(右)ら

23年4月には、自動配送ロボットなど「遠隔操作型小型車」による運行に関する規定を定めた改正道路交通法が施行される予定で、まずは過疎地域など人との接触が極力ない条件下からのスタートが見込まれる。走行時の安全を確保するため関連する法整備は進んでいるものの、「テクノロジー(技術)の問題よりも、(ロボット自動配送について)理解してもらうマインドチェンジが大切」と坂村学部長。今後は物流業界を含む民間事業者や国民が、自動配送ロボットによる事故発生などのリスクと丁寧に向き合い、未来の「物流のカタチ」を受け入れていけるのかが普及に向けた焦点になりそうだ。(編集部・安本渉)

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