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運輸業の安全管理指針に「災害対応力」追加、国交省

2023年3月29日 (水)

行政・団体国土交通省はこのほど、運輸事業者の安全管理の進め方に関するガイドラインを6年ぶりに改正した。旅客・貨物運送事業者が安全管理に関する社内の規定を策定したり、取り組みや評価・検証を行う際の手引きとなるものだ。今回の改定では、近年、頻発・激甚化している自然災害への対応能力向上が盛り込まれた。全日本トラック協会(全ト協)でも29日にウェブサイトに同ガイドラインを転載するなど、会員企業や関係団体への周知を始めた。

国交省によると、自然災害が頻発化・激甚化する中で、事業者のの対応能力向上が喫緊の課題となっており、同省はガイドラインを含む運輸安全マネジメント制度のあり方について、運輸審議会(国交相の諮問機関)の運輸安全確保部会でことし1月から2回の議論を行った。それを踏まえ、「自然災害への対応能力向上」や「事故、ヒヤリ・ハット事案の再発防止」などの観点から、今回ガイドラインを改訂した。

このうち自然災害に関しては、まず「経営トップの責務」の項目に、「自然災害が輸送の安全の脅威となっていることを認識の上、自社の自然災害対応力を向上させること」という文言を加え、トップの責務であると明確化した。「安全方針」の項目にも、関係法令の遵守や安全最優先の原則などと並列する形で、「社員等及び事業施設の被害軽減の取り組み」「災害時の避難・救助・救護の原則」「発災後、安全確保の後の事業の復旧・継続」の3事項を盛り込んだ。「事故対応」の項目には「災害対策本部等を立ち上げ、自社の被害状況等を把握し、安全確保を前提として事業の復旧を図る」という要素を追加した。経営トップが1年ごとに行う「マネジメントレビュー」の項目にも、確認事項に「自然災害対応に係る取組状況」を加えた。

輸送中止やルート変更で、荷主との事前協議必要

近年、大雨や台風、豪雪で高速道路や線路が寸断されたり多数のトラックが立ち往生したりし、物流がストップしてしまうケースが相次いでいる。改正ガイドラインではこうした課題への具体的な対応方法を示した。「情報伝達」の項目の中に、「計画運休について適切に外部に対して公表する」という記述を追加。さらに、「事業者は、自然災害(台風、豪雨、雪害等の予測可能なものに限る)の発生により輸送の安全を確保できない恐れがあると予測される場合には、荷主等に対して、輸送の中止・再開、ルートの変更等について事前に協議・打合せ等を行うことにより安全の確保を図る」という事項を新設した。

全ト協の安全担当者によると、近年、自然災害で交通がマヒした際に、トラック運送業者が荷主と協議して輸送中止やルート変更などの適切な対応を取れたケースがある一方、荷主側から無理な輸送要請を受ける事例もいまだにあるという。改定されたガイドラインに基づき、災害時に運送事業者が荷主と適切に事前協議を行えるよう、平時から対処法を整えておくことを、全ト協も期待している。

全ト協は29日に協会ウェブサイトに改正ガイドラインを掲載。わかりやすい新旧対応表も併せて載せており、運送事業者に参考にしてもらう考えだ。

全ト協サイト

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