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「運んでくれない」危機感で物流改革、YKK AP

2023年4月11日 (火)

荷主重い、壊れやすい、形状もバラバラな荷物は「どこも運んでくれなくなるかもしれない」。そんな危機感から、荷主ながら物流改革に取り組んだのは住宅建材メーカー大手のYKK AP(東京都千代田区)だ。同社のロジスティクス部が2015年から物流体制の見直しを図り、その根幹となる「ユニットロード」を拡充させた。同社は11日、その経緯や内容について初めて公表した。

ユニットロードとは、「荷物をパレットやコンテナなどのユニット単位で効率的に運ぶ仕組み」。形や重さや荷姿が違う窓やドアなど、難易度の高い荷物を扱うため「選ばれる荷主であるために危機感を常に持っていた」(同社広報)というYKK APは、同社のロジスティクス部が2015年にパレット化を推進し、物流改革に本格的に着手した。専門チームを立ち上げ、新型のパレットを独自に開発。旧パレットとの互換性を保ちつつ、軽量化、薄型化、高強度化に成功した。内容積は8%上昇し、荷重上限は従来の400キロから600キロに増加した。荷室が大きい低床トラックの上部分のスペースには、側面ボードにリブ(突起物)を建てることで追加で積載できる工夫を施した。

▲(左から)空パレットを重ねてフォークリフトで移動する様子、縦方向の積載をアップする側面ボードを建てる様子(出所:YKK AP)

荷積みが従来のばら積み式からパレット式に変わったことで、今度はパレットやトラックへの積み付けに課題が出た。段ボールを人力でトラックに積むばら積み式と比べ、パレット式では荷積みは効率化できるが、積み付け方が悪いと積載率が低下してしまう。

▲「Y-Caps」によるパレットやトラックへの積み付けを最適化した姿図

これを解決するべく、商品やパレットの一つ一つを立方体に見立てる理論で最適な積み付け解を導くシステム「Y-Caps」(ワイキャップス)を開発し、17年に実用化にこぎ着けた。これにより、トラック手配の段階で必要なパレット数と荷物の積み方、トラックの必要台数がビジュアルで明確にわかるようになった。空きスペースには追加貨物を検討するなど効率的な配車も可能となった。

ユニットロード化が進んだことで、16年で54%だったパレット化率は22年度には92%まで上昇。作業時間は荷積みと荷下ろしを合わせ、2人の作業員で6時間かかっていたのが、パレットとフォークリフトでの作業に代わり30分にまで短縮された。パレットの効果は工程全体に波及し、荷積み前の準備や荷下ろし後の商品仕分けがパレット単位でできるようになり、作業効率を向上させているという。

同社はドライバーの拘束時間短縮への取り組みにも着手している。ドライバーの拘束時間が長くなっているルートをリスト化し、物流事業者と連携して中継輸送のポイントを改善する取り組みを始めており、ことし中には改善されたルートでの運用を開始するとしている。

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LOGISTICS TODAY編集部
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