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事前準備/ドライバー日誌第7回

2023年5月25日 (木)

話題大阪市の近郊にある物流センターから国道に出ると、早くも多くの車両が忙しく往来する姿が目に飛び込んできた。見慣れた風景であるはずが、今日に限ってはいつになく新鮮に映るのはなぜだろう。やはり、ドライバーとしての人生を踏み出した初日だからだろうか。

それにしても、そんな「門出」にもかかわらず、どうして大粒の雨が地面を打ち付ける荒天なのか。まあ、天を恨んでも仕方がない。むしろ、雨の日の配達に早く慣れてほしいとの神様の願いなのだ。そう思うことにして、ハンドルをいつもよりも強く握り締めた。

▲最初の配送先に近い待機場所で準備を開始する。顧客宅へ向かう時間が迫ってくる

さて、午前8時半に開始する午前の飲料水の配送。それは、玄関先の呼び鈴を押すことのできるもっとも早い時刻が午前8時半であるということを意味している。それを実現するには、「最初の配送先に5分前には近づいておき、時計が午前8時半の時を刻んだ瞬間に呼び鈴を押す」という周到な準備が欠かせない。

その日、私はそれを実行するための準備を練っていた。最初の配送地点、つまり半円状に分布する配送先の集積エリアから明らかに外れた1カ所の5分圏内に、駐停車の可能な場所はないか。

実は出発前のバタバタした時間帯に、スマートフォンの地図アプリケーションでこっそりと検索しておいたのだ。その結果、最初の配送先の手前400メートルの道路脇に、短時間であれば駐停車のできる道幅の区間を探し当てることに成功したのだ。物流センターでドライバーの業務を管理する事業者の担当者が前日夜、電話で教えてくれたやり方だった。

「配達という仕事を成功させる秘策、それは出発前にいかに周到に準備できるかだ」。担当者の言葉の重みを実感しながら、最初の目的地へ飲料水を載せた軽バンを走らせた。雨はやみそうもない。(つづく)

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