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YEデジタル「MMLogiStation」

自動化の拡大をコスト・運用面から支えるWES

2023年6月30日 (金)

話題物流の自動化設備の普及に伴い、WMS(倉庫管理システム)とWCS(機器制御システム)を連携し、運用を最適化するWES(倉庫運用管理システム)が注目され始めている。

「WMSとWCSは直接つなげられる。だからWESは必要ない」という声も聞かれる。しかし、物流の自動化では、自動化設備導入時にWES導入を行わずに、業務効率を高める機会を逃している企業もあるはずだ。

YE DIGITAL(YEデジタル)は、物流の自動化に40年間向き合う中で課題を感じ、WESの開発に至ったという。なぜ、YEデジタルはWESに着目したのか。そして、WESはどんなメリットをもたらすのか。同社のWES「MMLogiStation」(MMロジステーション)を企画、製品化した、組込・制御システム本部物流DX事業推進部長の浅成直也氏に開発の背景と導入効果について聞いた。

WMSブラックボックス化の教訓からWESを開発

▲組込・制御システム本部物流DX事業推進部長の浅成直也氏

YEデジタルは、他社から自動化設備の委託を受け、スクラッチ開発に取り組んできた。自動倉庫だけでも200システムの納入実績を持つ。同社は2010年台初頭には、すでに各工程間の自動化設備をつなぐ改修作業に携わっていた。

一方で課題も抱えていた。それはWMSと自動化設備との接続にあった。「各工程間のつながりを実現するには、WMSの高機能な改修が必要だった。その過程でWMSが重くなり肥大化してしまった。さらに複雑化して、担当者ベースでしかわからないブラックボックスができあがってしまった」と、浅成氏は振り返る。

3PLのように複数の荷主に対して倉庫を最適化する場合では、WMSのメイン機能だけをとっても、担当者だけが操作できるという“属人化”が発生するケースは珍しくない。また、多くのWMSが自動化設備をつなぎこむ想定で開発されていない。その対応のためにカスタマイズを行えば、属人化に加え、システム自体も煩雑化する。その結果、外部からはわからない”ブラックボックス”のシステムになってしまう。

YEデジタルは、この課題に正面から取り組んだ。そして、その解決には「役割を分割し、システムをシンプルにする必要がある」(浅成氏)と考えた。こうして生まれたのが、「MMLogiStation」だった。

「MMLogiStation」は、WESの特長である自動設備連携・作業管理を体現したシステムだ。入庫・出庫作業、仕分け作業、在庫移動作業など機能をシンプルにしてシステムに搭載。オペレーション面では、作業フローをビジュアル化する「オペレーションデザイナー」の機能を提供し、自動化設備の導入や作業手順の変更などに対し、スピーディーに対応できるようにしている。

▲オペレーションデザイナーで運⽤フローをビジュアル化(クリックして拡大)

3種類以上の自動化設備導入で効果を発揮

一方で、「自動化設備を増やすごとにWESを開発しなければならないのでは」と懸念を持つ人もいるだろう。

実際、WMSとWCSを直接つなぐ際に発生するWMSの改修費用は、数千万円にのぼることが少なくない。物流会社や荷主などの中には、自動化に本気で取り組むことに対し、一度に複数ソリューションを導入する企業や将来的には自動化設備を拡張したいと考える企業もいる。その場合には、導入機器の数だけWMSの改修費用がかさみ、負担が重くのしかかってくる。

しかし、「MMLogiStation」であれば、その心配も無用だ。自動化設備との接続プラグインを用意しており、自動化設備が増えるごとに、その都度でWMSの改修や開発を行う必要がない。つまり、大規模改修が不要で、改修コストを削減できるわけだ。

(クリックして拡大)

実例を挙げよう。2023年2月にニュースリリースされたホームセンター事業を展開するカインズ(埼玉県本庄市)の事例だ。同社は西日本最大級の「マザーセンター」と位置付ける次世代大型物流センター「カインズ桑名センター」(三重県桑名市)の稼働を2024年2月に計画。そこには7社の自動化設備が導入される予定だ。

この大規模施設内に導入される7社のマテハン機器やロボット設備の一元制御・同期を行うWESとして、YEデジタルの「MMLogiStation」が採用された。

「MMLogiStation」を導入することでカインズが全社横断で使用しているWMS(倉庫管理システム)から倉庫ごとに導入される機器や設備の制御部分(WCS、倉庫制御システム)を分離し、柔軟な設備構成、運用フローを実現できるとともに、稼働開始後の新たな設備の追加もプラグインでスピーディーに実現できる。

「おおよそ3種類以上の自動化設備を導入すればWESが費用対効果を発揮する」。

浅成氏は、WESの自動化設備追加に対するコスト面での優位性について、こう説明する。WESを採用する企業の中には、将来的な拡張を考えて2種類の自動化設備を導入する時点で取り入れる企業もあるという。

「MMLogiStation」は、自動化設備の導入スピードの面でも効果を発揮する。プラグインで設備と接続できるため自動化設備を容易に入れることができるからだ。実際には、WESを介さずにこの機能を導入する場合、通常は導入に6か月かかっていたところ、4か月で導入を完了できた例もあるという。

3Dシミュレーションで運用改善コスト削減を実現

「MMLogiStation」は、現場運用の最適化にも一役買う。そもそも物流の自動化は、人海戦術のような臨機応変の対応ができなくなるリスクもはらんでいる。このことを前提にすると、「人で動いている物流の効率化」と「自動化した後の物流の最適化」は全く意味が異なるといえる。

需要のある商品の移り変わりなどにより、最適化されていない状態が続けば、いずれパンクする可能性も考えられるだろう。パフォーマンスが低下し、計画段階で想定していた投資回収がうまくいかないことも起こりうる。

自動化設備「MMLogiStation」は、各工程のマニュアル作業と自動化設備による作業の進捗状況を把握できるダッシュボードが利用可能で、運用の可視化を実現する。今後は、このダッシュボードに分析機能を追加する予定。これにより、収集したデータから滞留状況などを把握し、現在の課題に効果的な改善策を見出すことができるようになる。

▲ダッシュボードによる運⽤の可視化・分析⽀援(クリックして拡大)

では、見える化によって、具体的には、どのような改善が期待できるのか。「例えば、商品によっては自動化設備に入れず、人の手でピッキングするエリアに移動したり、あるいは自動化設備エリア内で商品を作業場所の近くに配置したりといった、作業のスタートを早めたりする改善が考えられる」と、浅成氏は話す。

▲シミュレーションによる見える化

さらに、「MMLogiStation」では、3Dシミュレーション機能「MMLogiStation Analyst」(MMロジステーションアナリスト)がある。これは、WESに蓄積したデータを取り込み、レイアウトの変更を行った場合の滞留状況の改善具合や作業スタート時間を前倒しした場合の終了時間などを事前に確認できる機能だ。現在は個別案件での取り組みを行っており、今後はサービス化を検討している。

「改善策のシミュレーションをしてみると、思ったより効果がでないと分かるケースがある。しっかりとデータ化することで運用改善コストは下がる」と、浅成氏は、3Dシミュレーション機能のメリットをこう強調する。

今までベテランの感覚頼りで属人化しやすい傾向にあった現場の采配が、シミュレーション機能で誰でも行えるようになる。結果として、各工程のつながりが最適化され、業務の効率化が進む。

データの価値化を強化しシステムを仕上げ続ける

「MMLogiStation」は今後、カスタマイズせずに標準でつなぎ込みができる自動化設備をピッキングロボット、AGF(無人搬送フォークリフト)などにも拡大する予定だ。また、メーカーから委託を受け、スクラッチ開発に携わってきた実績と経験を生かし、自動化設備の問い合わせ窓口一本化や分析機能の改良にも力を入れていく。「データの価値化を強化し、より効率的に使えるシステムに仕上げていく」と、浅成氏は展望を述べる。

▲システム構成イメージ(クリックして拡大)

WESはなくとも、自動化設備は「動く」だろう。しかし、自動化設備は動かすことが目的ではないはずだ。ましてや、自動化によってWMSの動作が鈍くなったり、属人化したりすれば、システムは効率化のツールではなく重荷に変わる。それでは本末転倒となってしまう。だからこそ、コスト・運用の両面でパフォーマンスを最大限に引き出すWESが必要なのだ。

「将来的には自動化を進めたい」と考えている物流会社や荷主企業は少なくない。そうであれば、ムダな費用をかけないためにもシステム改修前のタイミングでWESを検討するべきだろう。決断は早いに越したことはない。