ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

シーネットが目指すWMS起点型WESでの業界標準

2023年7月10日 (月)

話題WES(倉庫運用管理システム)は、WMS(倉庫管理システム)とWCS(倉庫制御システム)の間をつなぐもの。キーワードのおおまかなイメージとしては間違いはないのだろうけれど、ベンダーごとにその概念もさまざま。提供する側もユーザー側もいまだ手探り状態というのが本音ではないだろうか。

クラウドWMSでトップベンダーの一角を占めるシーネットがWESに取り組むとなれば、当然期待もふくらむ。シーネットが描くWES像とは。執行役員営業本部長を務める鈴木喬氏に、同社のWESがどのようなものになるのか、なぜ同社が提供するのか、その狙いとともに聞いた。

▲シーネット執行役員営業本部長の鈴木喬氏

WMSベンダーだからこそできるWES開発

シーネットのWESとは。「最初に、WMSベンダーならではのWES、ということにつきます」(鈴木氏)。WMSとWCSを結ぶというWESのイメージではなく、シーネットはあくまでもWMS起点。マテハンメーカーの手によるものとは一線を画し、まずはWMSの課題解決のためにWESを組み立てるというのがシーネットの思想であり、目標は「マテハンのインターフェース、データ連携の汎用化を高めること」(鈴木氏)だと言い切る。

業務効率化を目的に、自動化機器導入が今後ますます増えていくに連れて、マテハン使用に伴う管理機能の高度化や要求の多様化など、WMSにかかる負荷も肥大化していく状況にある。これを解決し、WMS機能を最大限に引き出すため、WESによってマテハンとの連携をよりスムーズにし、低コストでのマテハン導入や庫内管理の業務改革を実現するのがシーネットの目標だと言えよう。

“つなぐ”をコンセプトに目指す、機能と業界の汎用化

顧客から圧倒的な信頼感を獲得しているWMS「ci.Himalayas」(シーアイ・ヒマラヤ)との親和性が高いことが、まず同社WESの強みだ。それを生かして各種マテハンやロボットとの連携実績を蓄積し、機能としての汎用化を進めること。さらには、マテハンメーカー側へ標準連携を促すことで業界全体としての汎用化を進めること。シーネットは2つのポイントでの汎用化実現を、WMSベンダーの立場からアプローチし、マテハン導入の低価格化、短納期化など業界効率化を目指す。

▲WMSと親和性が高く、マテハンとのスムーズな連携を促すシーネットWES

多数のユーザーや物流機器とつながることで、さらに新しいつながりを生み、そのつながりを広げる。導入意欲はあるが、その資金がないといった企業が、積極的にマテハン導入ができる環境を作るためにも、また、将来的にはシーネットWES導入によって多数の連携実績から導入マテハンの選択肢を広げられるという状況を作るためにも、シーネットのWESは、まずつながることを重視する。つまり、同社のモットーである「つなぐ」というコンセプトを同社のWESが体現していくことになる。

WESがつなぐことで変わる業界の未来像

現在は、10月頃のサービス化を目指して開発が急ピッチで進む。鈴木氏は「シーネットは技術の会社ではなく、現場の会社」と言い、現場ユーザーのさまざまな意見を取り込んでいる段階であるとする。

確かに、WMSのみならず、グループ会社であるシーネットコネクトサービスが担う音声システム開発など、すべて現場とのつながりから発展し、形となったサービスばかりだと気付く。WESも最初から全部盛りではなく、ユーザーの要望に応じた機能を積み上げて完成させるイメージとなるのだろう。

基盤を完成させ、出荷指示・出荷実績のデータ処理やマテハン別出荷作業振り分け・振り戻し機能などのデータ連携機能や、出荷作業進ちょくや生産性状況の紹介などデータ可視化機能の装備をすでに終えて、さらに新しい段階へと進む。

そもそも、同社のWES参入は、それ自体を一から構築するのではなく、これまで手がけてきた音声認識システムや画像ソリューション、AMRをクラウド上で動かしているプラットフォームを基盤としながら外部へ拡張させていくという考えをベースとしており「WMSベンダーとして当然の判断」(鈴木氏)だったという。「ci.Himalayas」自体が、さまざまなユーザーとともに機能をブラッシュアップするなど、ユーザーに支えられ、育てられることで市場価値を確立したこともあり、WMSの強化でユーザーに還元することがシーネットの使命であったとも言える。

WESも同様に、これから「つなぐ」作業を繰り返すことで、ユーザーに育てられ、共に成長していくことを目指す。そして、その成長が物流変革を促すのであれば、それこそが業界への還元となる。鈴木氏が、シーネットのWESが「デファクト・スタンダードになれれば」と理想を語ることは、WESベンダーとして業界全体を「つなぐ」という使命を背負う決意表明にも等しい。

将来的にはWESで拡張した複数の機器やシステムのメンテナンス、煩雑な料金システムの対応、システムトラブルへの対処など物流倉庫内業務全般の取りまとめ役もWESに課せられ、システムベンダー同士もその得意分野に応じて連携するような必要性さえ出てくるかもしれない。鈴木氏はあくまでも個人的な思いと前置きしながらも、「もはや自社完結はあり得ない」と、業界全体をつなぐハブとなる未来像まで見つめている。