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リスクばかりの狭い道路/ドライバー日誌第17回

2023年7月7日 (金)

話題伝票で配送先の住所を確認する。「ここは狭い道路が多い場所だ」。宅配の仕事を数カ月も続ければ、町名から街並みのイメージをある程度、連想できるようになるものだ。軽バンを使った宅配業務を行う上で欠かせないのが、こうした訪問先の街路を頭に思い描きながらルート設定や停車位置を決める作業だ。

▲狭い道路の住宅地。配送時にはより慎重な動きが求められる

幹線道路から信号機のない交差点を左折する。対向車とすれ違うのも難しい道路だ。駅に近い住宅地なので自転車も多く行き交い、事故の危険も高い。より慎重な運転が欠かせない。

そんな狭い道をさらに曲がった突き当たりに、目的地はあった。地図アプリケーションの道案内では正確な所在地を確認できず、手前で軽バンを路肩に寄せてから歩いて探し当てたのだ。私はこうした作業を、事前の下見になぞらえて「ロケハン」と呼んでいる。

このロケハンは成功して、無事に訪問宅を見つけることができた。問題になるのは、軽バンの駐車だ。対向車を避けられない道路だ。荷物は台車で急いで運べるとしても、道路をふさいでしまうリスクはあまりにも大きい。とはいえ、あれこれ迷っている暇がないのも事実だ。まずやるべきこと、それはできる限り迅速に荷物を届けて次の配送先に向かうことだ。

顧客宅の呼び鈴を鳴らすも、応答がない。室内も暗く、どうやら不在のようだ。伝票には置き配が可能である旨、記載されている。箱にビニール袋を巻いて玄関先に置く作業に取りかかったところで、背後でかすかに声がした。

(イメージ)

「通れません」。振り返ると、軽自動車に乗った高齢の女性が声を上げている。どうやら配送先の近くに帰宅したらしい。ビニール包装を急ぐか、中断して車を移動させるか。どちらを選択するか迷ったが、ここは後者を選択することとした。車を避ける場所はないため、ひとまず女性に後退してもらってから私の軽バンを動かそうとした。ところが、女性から「バックできないので代わりにやってほしい」と頼まれた。確かに狭い道での後退は危険である。

結局、2台の車を曲がり角で別方向に振り分けて、女性の車を先にすることにより、事なきを得た。結局、この配送地で10分以上の時間を要してしまい、想定した配送スケジュールに遅れを取ってしまった。(つづく)

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