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倉庫フロアの流儀/ドライバー日誌第38回

2023年10月20日 (金)

(イメージ)

話題3台のパレットに、それぞれ缶の飲料ケースがうず高く積み上がった。リーダーのドライバーがビニールを巻いて養生を施し、搬送業務は完了した。

リーダーが養生作業を終えると、突然姿を消した。おそらく、今回の搬送業務を発注している企業の担当者に作業完了を報告するのだろう。私もリーダーには指示を受ける必要があると思い、軽バンの車内で待つこととした。

もう1台の軽バンは、積み上げ作業の終了とともに姿を消していた。「なぜだろう、私も離れてよいのだろうか」。思案していたとき、横から突然、大きな声が響いた。「早く車出さんかい!じゃまじゃボケ!」

振り向くと、フォークリフトを操縦している作業員が、こちらを向いて甲高い声を上げながら鬼のような形相でにらみつけている。そうか、一緒に作業していた軽バンが早々に姿を消したのは、倉庫フロアから速やかに車両を出す必要があったからだったのか。今さらながら、その理由を把握したというわけだ。

(イメージ)

ここは素直に車を構外へ退避させるしかない。リーダーの軽バンが置いたままになっているのも気になったが、そのまま立ち去った。出口からすぐの道路脇に車を寄せて、リーダーに電話を入れた。「本日の業務は終了ですね?」「はい、そうです」。あっけなく業務終了となった。ひょっとしたら、リーダーもあの作業員に怒声を浴びせられたのかもしれない。

物流倉庫は、いくら広いフロアであっても、限られたスペースの中に荷物だけでなく車両や台車などあらゆる機能が混在している場所だ。そこで少しでも空間を有効に活用することは重要な心構えなのだ。必要な業務を遂行するために最小限の時間とスペースを拝借する、これが倉庫における流儀なのだ。それを乱すことがあれば、容赦なく制裁を受けるのも、またルールなのである。(つづく)

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