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三菱重工、車載型「放射線シールドシート」を開発

2012年11月13日 (火)

話題三菱重工業と大林組は13日、放射線環境下で活動する産業用車両の操縦者の被ばく量を抑制する「放射線シールドシート」を共同で開発した、と発表した。

三菱重工が特殊車両の開発・製造で培った放射線遮蔽技術と、大林組の除染作業ノウハウを活かした車載型遮蔽シート(座席)で、車両に組み付けて鎧のようにまとうことで放射線を遮蔽するもの。

遮蔽率は50%を目標に開発した。油圧ショベルなど重機を使った除染作業や瓦礫撤去、廃棄物運搬作業などの簡便な安全確保ツールとして、12月中旬に三菱重工から発売する計画。

同シートは、東京電力福島第一原子力発電所の構内作業や周辺高線量地域での除染作業、環境省が検討する中間貯蔵施設や減容化施設での放射性廃棄物の運搬作業、その他原子力施設での過酷事故対策などを念頭に開発。シートを導入することにより、放射線遮蔽機能を備えた産業用車両の新規調達や車両改造に必要なコストや手間が省ける。

シートには遮蔽効果の高いタングステンを主に使い、肩・腕部、腹・足部、首部に分解できる構造とした。油圧ショベルやクローラーキャリア、クレーン車などの車両の既存の座席シートを取り外して組み付けることができる。

総重量は130キログラムだが、各パーツが20キログラム以下となっており、それらをシートと一体構造とすることで操縦者の重量負担を最小限に抑える。

操縦者は、遮蔽シート前面を左右に開閉することで、容易に乗り降りが可能。また、各パーツは操縦者の体形に沿うように前後・上下の調整機能を備える。こうした工夫により、高い遮蔽率を確保し、連続作業でも疲れを感じさせず、操作にも支障が出ないよう配慮した。

両社は今後、同シート発売に向け放射線環境下での実地の遮蔽効果実証試験も検討し、さらなる使い勝手の改善や、遮蔽率の向上などに取り組む。製造は三菱重工が担当。除染事業を行う建設業者や汚染廃棄物焼却施設の建設・保守などを手掛ける事業者、電力会社などに対する提案に注力する。

三菱重工は昨年3月の東日本大震災発生直後から、放射線遮蔽キャビン付きフォークリフト納入や、東京電力が汚染水貯蔵のために静岡市から引き渡しを受けたメガフロートの改造工事、放射性廃スラッジタンク工事などで福島第一原子力発電所の事故対応に協力してきた。また、2011年7月には特殊車両事業部内に防災関連事業グループを設立し、防災関連機器の開発・拡販に注力している。

大林組は、福島県内の4町を対象にした除染モデル事業に取り組み、その後も本格除染工事や、新たに焼却灰の放射能濃度低減を目的とした除染実証事業など幅広く手掛けている。