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物流危機解決へ、運送事業一丸の改革促す交流・勉強会開催

NPシステム開発が支援する、運送会社連携の取組

2023年9月26日 (火)

話題2024年問題に最前線で向かい合う運送事業者にとっては、人材不足、燃料・コスト高騰に加え、改善基準告示の対応など、さまざまな経営での不安を抱えている。

そこで、情報交換や対応策を勉強する機会を設けることで運送事業者を支援しようと、デジタルタコグラフ(デジタコ)や点呼システムなど、トラックドライバーの管理ソリューションを手掛けるNPシステム開発(愛媛県松山市)が、運送会社コンサルティングのブリックス(大阪市中央区)と協力して開催したのが、「第1回Logispread in Osaka〜with 共存強栄〜」と題した交流会・勉強会である。運送事業者が抱える様々な問題に真剣に向き合う、90社132名が開催地・大阪に集結し、ぞれぞれの課題を話し合う貴重な機会となった。

低コストのチャオヤン・タイヤで考える慣習の見直し

交流会の前に行われた2024年問題の勉強会では、ヨロズ物流(大阪府富田林市)、NPシステム開発、ブリックスが登壇、それぞれの専門領域からの課題対応について講演を行った。

▲ZCラバーのCHAOYANGブランドタイヤ

ヨロズ物流は、トラックの「タイヤ」の見直しによるコスト削減を提案する。同社が現在積極的に販売しているのは、中国タイヤメーカー、ZCラバーのCHAOYANG(チャオヤン)ブランドである。ZCラバーは、中国ナンバーワンのタイヤメーカーであり、世界市場でも上位にランクインするなどグローバル市場でも実績を残している。その中核となる、チャオヤンのブランドは、耐久性能、燃費性能において、すでに日本メーカーと比肩するとの検証もあり、「中国メーカー」という先入観や慣習を排除し、純粋に会社の経営を持続させるという観点で、タイヤブランドの見直しによるコスト削減に取り組むべきとする。特にチャオヤンタイヤの一番の強みとなる「価格競争力」では、国産メーカーとの比較で試算した具体的なコスト削減効果を提示した。同社ではこの勉強会、交流会をきっかけに、まずはブランド名のさらなる浸透と、試験導入を呼びかけ、コスト削減に直結する対策としてのタイヤ見直しの重要性を説く。

NPシステム開発、デジタコ活用による改善基準告示への具体策

▲NPシステム開発の可児勝昭取締役

今回の交流会を主導したNPシステム開発は、改善基準告示の見直しに伴って複雑化・厳格化される、トラックドライバーの労働状況の管理における具体的な対応策について、同社製デジタコの活用とともに解説する。残業時間の上限規制ばかりが話題となる2024年問題だが、改善基準告示における拘束時間の上限や連続運転時間も改正されることで、ドライバーはもちろん、その管理者にとっても法令遵守に向けて「働き方」を把握することが困難化している。また、改善基準告示違反に対しては罰則規定が設けられており、近年、労働基準監督署と運輸支局による飛び込み監査が急増していることを踏まえると、来年4月以降のより厳格な監査に向けた迅速な対応が運送会社に求められる。

同社は、今回の改正基準告示に対応するには、現場でデータ管理ツールを正しく運用することが最重要とする。デジタコを活用した具体的な対策のチェックポイントについて解説、ドライバー自身が拘束時間・休憩時間・休息時間などの定義を正しく理解してデジタコを正しく操作することで、適正な労働環境をデータとして管理することが必要となる。運行開始時間・終了時間や、荷役開始の「積込」「荷降」ボタンを正しくデジタコで操作することが、ドライバーの適切な労働時間を捻出することに繋がり、監督機関への対応においても有効となる。また、ドライバー自身にとっても、拘束時間・残業時間の超過を理由に運行できないという状況に陥りにくい。経営層からドライバーまで全社一丸の効率運行へ向けた、デジタコや点呼システムの正しい運用の意識づけを強く課題にあげた。

▲勉強会の様子(NPシステム開発)

ブリックス、生き残りかけた2024年問題対策で勝ち組へ

NPシステム開発とともに今会の主催を務めたブリックスは、2024年問題における国の規制強化を「適正な運送事業者」の選別としての側面から捉える。改善基準告示改正後の「生き残り」に必要な取り組みを説明し、ここでも、労働基準監督署と運輸支局の監査強化、行政処分の迅速化の傾向が指摘されるとともに、「未払い残業代」請求訴訟などによるリスクも増加している現状にも言及。これらのリスクに備えた企業体制を整えることが大切とする。

国策として、トラックドライバーの労働環境を改善するためのチェック体制が、ますます強化され、運送事業者にとっては締め付けが進む状況だが、見方を変えれば、いまだに長時間労働業種、過重労働による健康被害ナンバーワン業種である運送業界に、業界構造の是正を促す最後通告ともいえる。適正な運送事業者となることが、荷主との交渉力を強め、雇用ドライバーの地位を上げるためにも必要なプロセスであることに理解を示す。運送事業者としては法令遵守を前提として、運行時間と労働時間を守るサステナブルな事業者として認められることが事業存続の要素となり、それに向けた運行スキルの向上、法令知識の勉強など、ドライバー教育を進めることが生き残り企業となるカギであると指摘する。

▲勉強会の様子(ブリックス)

回を重ねて広げる運送業界「仲間作り」の場

コスト高騰、新しい法令への対応など、運送事業者を取り巻く環境は厳しく、これまでの慣例に従うだけの経営、感覚に頼る経営だけでは到底克服できない。当たり前を見直すことから始め、新たなコスト削減や、デジタコ等の効率化ツールの適正な運用とデータ活用など、これからの時代に備えた対応の重要性が強く訴えかけられた勉強会となった。

勉強会後に行われた交流会では、様々なエリア、運送形態の事業者が一堂に会し、それぞれの現場の現状や課題などがざっくばらんに話し合われた。この交流会の目的について、NPシステム開発の可児勝昭取締役は、「運送事業者同士が仲間を作ること」であると言い、物流危機に意識的な事業者が集まることで、帰り荷の確保や、ルートの集約・効率化、アセットの相互活用による有効利用など、同じ悩みを抱えるもの同士だからこそ具体化できる場となることを目指す。「この第1回をスタートに、2回、3回と長く続くことが大切。物流危機への問題意識の強い参加企業の多くが生き残れる様に、開催エリアも広げながら、運送事業者の交流、情報交換の場を広げていきたい」(可児氏)と、抱負を語った。

▲交流会の様子