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LOGISTICS TODAY24年問題セミナー開催

農水省「農産、水産品で能力不足3割強」懸念

2023年12月14日 (木)

話題差し迫る2024年問題について、官民の当事者らが語り合うLOGISTICS TODAY主催の大型企画「物流2024年問題対策会議」が14日、始まった。初日のセミナーが開かれ、オンラインで配信された。

この日は、LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長をコーディネーター役に、研究機関、老舗企業、行政のほか、ユーチューブ発信しているトラックドライバーら多彩なゲストが登壇。専門家らが今後の対策などについて、議論し、意見を交わしたセミナーは3時間を超える長丁場になった。

▲農林水産省食品流通課の戎井靖貴氏

そのなかで、行政から参加した農林水産省食品流通課の戎井靖貴・卸売市場室長は、24年問題による物流の輸送能力不足割合について、発荷主別でみた場合、農産、水産品出荷団体では、コロナ前の19年比で3割強に達するとの厳しい試算データを示す場面も。

24年問題は、24年4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用されることなどで生じる労働力不足を主因とする。物流効率化に取り組まなかった場合には、労働力不足による物流需給がさらに逼迫する恐れがある。19年比で輸送能力不足が全体で最大14.2%(不足する営業用トラック輸送トン数・4億トン)起こると試算され、懸念が続いている。

しかし、戎井氏は、「農産物・食品流通は24年問題に耐えられるのかー農林水産省が示す対応策ー」と題した講演で、さらに深刻化する農産物・食品流通の現状を説明した。

戎井氏が提示したデータによると、発荷主別で、農産、水産品出荷団体に限って試算すると、不足する輸送能力割合は32.5%に及ぶ見通しだったといい、全体(14.2%)を大きく上回った。同資料では紙、パルプが12.1%、建設業、建材で10,1%、飲料、食料品9.4%といった試算も紹介され、他業界をを大きく上回る結果だった。

さらに、対策を講じずに深刻さが増していけば、物流全体で30年には34.1%(9億4000万トン)不足へと急悪化する可能性も指摘されている。だが、農産、水産分野関連では、すでに現状でこの水準に迫る深刻さを抱えつつあることがわかる。

▲(左から)赤澤裕介・本誌編集長、戎井氏

戎井氏は、背景について農産物・食品流通では、トラックによる輸送が97%を占めていることなどを挙げた。1000キロメートルを超えるような長距離輸送が不可欠になっている現状だという。戎井氏は、関連業界にとって「トラックは生命線だ」と訴えた。

不足する輸送能力は、地域ごとでも深刻さに大きな格差が出る見込みだ。山間部などが多い中国(20.0%)や九州(19.1%)は、関東(15.6%)や中部(13.7%)に比べてより高い試算がまとまっている。

こうした現状を踏まえ、農水省では、中継輸送を増やし長距離輸送の削減するなどしていく対応を取っていくという。戎井氏は「マラソン形式からリレー形式に」と方針を語った。

全国の産地でも対策は少しづつ始まっているという。その一つとして、JA高知県園芸流通センターで取り組んでいる事例を紹介。同センターでは00年から実施している県内全JAで一元的なパレット共同輸送をする。

小口多品目の積載効率の悪さを解消するため、JA主導で運送会社2社からノウハウの提供を受けてセンター機能を構築。センターと各JAの出荷場をデータ連動させており、前日のうちに配車計画がまとまり、市場ごとにほぼ満車での出荷を実現。「積載効率を最大化できている」(戎井氏)という。

この日は、ほかにも、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の北條英・総合研究所長が講演し、「道路貨物運送業界の多重下請け構造により、2次、3次と下請けが進むにつれ、経常損益率が小さくなっている」と問題提起もあり、やや重い話が続いた。

▲野村不動産の稲葉英毅氏

さらに、物流企業側として、大手不動産デベロッパーの野村不動産都市開発第二事業本部の稲葉英毅・物流事業部長による中継拠点となる大型物流施設の地方展開の話題に続いた。

最後にトラックユーチューバーらも登場。ユーチューブを活用することで人材確保に繋げる施策などについて話を聞いて、1日目は締めくくられた。

「物流2024年問題対策会議」は15日にも2日目となるセミナーがあり、東京都港区赤坂の「赤坂プラスタ」大和ライフネクスト本社イベントスペースのリアル会場と合わせて、オンライン配信も行い、ハイブリッド開催される。企画全体で合計500人以上の視聴申し込みが寄せられる盛況ぶりだという。

▲(左から)赤澤編集長、フジグループ公認トラックユーチューバーのちゃんけ氏、同じくかなちゃん氏、フジホールディングス執行役員マーケティング部部長の川上泰生氏

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