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JILS総研×JPIC対談を軸に、CLO本格始動直前の論点読み解く「物流議論」

制度対応に終わるな、CLO始動で物流議論白熱

2026年3月3日 (火)

イベント4月のCLO(物流統括管理者)選任義務化を目前に控え、企業は「制度対応」にとどまらない判断を迫られている。本誌、LOGISTICS TODAYと野村不動産が展開する「物流議論」「CLOサロン」における議論と交流も、準備と検証の段階を終え、具体的なアクションを確認すべきタイミングとなった。

3日に開催された「第8回物流議論 × 第3回CLOサロン」では、あらためてCLO義務化の制度的背景を整理。その先にある日本物流の構造転換までの展望を語るにふさわしい2人として、日本ロジスティクスシステム(JILS)総合研究所所長の北條英氏と、フィジカルインターネットセンター(JPIC)理事長の森隆行氏が登壇した。さらに、ラストワンマイルの効率化に深く関わってきた実務の立場からセルフィット(東京都新宿区)社長の宇佐美典也氏と、野村不動産都市開発第二事業本部物流事業部副部長の宮地伸史郎氏、モデレーターとして本誌LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長が参加しての議論となった。

▲(左から)森隆行氏、北條英氏

北條氏の講演では、物流の2024年問題がなぜ発生したのか、道路貨物運送業の過当競争からドライバーの賃金減少・長時間労働につながった推移を綿密なデータ分析からひも解く。規模が小さく、下請け下位になるほど利益を得られない業界構造から、「3割以上の荷物を赤字経営の会社が運んでいる」現状を指摘。北條氏はさらなる廃業が懸念される状況を踏まえて、発・着荷主合わせて取り組み義務を課し、商慣行の見直しと意識改革を掲げた改正物流効率化法の意義を明確にする。また、直面する改正物効法に加えて、2028年中に施行される「トラック新法」の適正原価制度への対応も検証する必要があると注意を促した。

CLO選任は、企業価値を左右する経営戦略を担うとの視点を提示。積載効率の向上と荷待ち・荷役時間の削減というKPI達成のみならず、物流と商流合わせた物資の流通効率化を、サプライチェーンや業界の構造的課題全体の解決として取り組むこと、財務と非財務両面で企業価値の創出につながることが強調された。

続く森氏の講演では、北條氏同様に、改正物流効率化法によるCLO選任を義務的対応ではなく、成長戦略として解説する。CLO選任を「時代の転換点」と位置づけ、その先にあるフィジカルインターネット(PI)の社会実装への道筋を提示する。物流が競争領域から協調領域へ、所有からシェアへと転換する時代のなかで、CLOが担うべき領域を再定義した。サプライチェーン最適化に向けて、経済性や合理性だけではなく、人権・環境・リスクも勘案した戦略で再構築をけん引する役割をCLOが担うことから、オープンで標準化されたPI実現の土台が築かれるとの展望を示した。

森氏が、「24年問題解決の鍵」と位置付けるPIの実装に向けては、先ごろ完成した「PI成熟度モデル(PIMM)」を通じて、企業がどれくらいPI実装に向けた成熟段階にあるか、どう取り組むべきかを把握し、CLOはその指揮官として機能すべきと語った。CLOに求められる役割や職能、取り組むべきアクション例などを総括するとともに、スーパーマンとしてすぐに機能するのではなく、「それぞれできることから。いろいろなCLOがいて良い」(森氏)と、まずは第一歩を後押しした。

宇佐美氏は、同社が展開するラストマイル配送アプリ「DIAq」(ダイヤク)の事例を通じ、配送現場の立場からCLOを再考。トラックの役割を倉庫-配送拠点間に絞って配送機会を減らすことで積載率をあげることや、トラック輸送とギグワーカー配送を役割分担させることで、荷役時間短縮や集中是正に貢献できる可能性を示す。一方で、システム導入だけでは不十分であり、配送拠点設計や貨客混載などを含めた「物流全体の再設計」が不可欠であると強調。“CLOを補佐する存在”としてのデジタル配送プラットフォームの可能性を提案するとともに、その機能を高めるにはより多くの事業者の連携・検証が不可欠と訴えた。

同氏はさらに、「地方の深刻さ、配送員の疲弊」という、社会と現場の両面からのラストワンマイル課題を挙げる。ホルムズ海峡封鎖のような予想できない地政学的リスクが真っ先に顕在化するのも地方であることが指摘され、リスク対策としてのシェアリングや魅力ある働き方の創出、制度の見直しなどの必要性が提起された。

ダイヤクのようなプラットフォームがCLO業務のサポートソリューションに転用できる可能性を示しながら、「CLO業務に必要なシステムの要件も、まだ誰もわかっていないという現状ではないか。まずは、その要件定義からはじめ、そこにダイヤクが活用できないかなど、CLOが使うという目線で広く先導調査や実証を行いたい」と宇佐美氏は呼びかけた。

この呼びかけに共鳴するのは宮地氏だ。野村不動産は、施設開発や、企業間共創による物流課題解決コンソーシアム「Techrum」(テクラム)推進を通じて、CLO体制のサポートと提案力を強化しており、宇佐美氏の目指す先導調査や実証に、テクラムが連携する可能性も示す。

宮地氏は、CLOが担うべき責務として「法令順守」「ステークホルダーマネジメント」「合理的なコスト最適化」を示し、多様な責任領域を可視化し、対話することがCLOの最初のアクションになるという。そして、そのCLOのカウンターパートとなるのが、LPD(ロジスティクス・プロデューサー)であり、物流デベロッパーとしてLPDを担う立ち位置を明確にする。物流のつなぎ目をいかにスムーズにつなぐか、その「接点」として、また荷物とデータの集積拠点としての物流施設の役割を提示し、各エリアごとの課題に応じた実証の場を先行投資で提供、中継拠点や共同拠点としての活用、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤構築を支える。

▲(左から)宇佐美典也氏、宮地伸史郎氏、赤澤編集長

物流議論の締めくくり、特別対談には、北條氏と森氏が再び登壇。制度と構想を接続しながら、「CLO時代に企業が向き合うべき本質的論点」を整理した。物流はコストセンターではなく、価値創造の源泉へと転換できるのか。4月以降の具体的アクションにつながる課題と、今後の方向性について提起された。働き方改革など「本来、まっとうな人権感覚での改善が民間同士でできなかった反省点」(北條氏)を踏まえて、荷主企業の制度対応の現状や今後の課題について議論。2年後の施行を待つ適正原価制度の実効性はどう確保するのかという、新たな制度の懸念点や、今まさにタイムリーな話題となってしまった中東情勢の影響による軽油・ガソリン価格などのリスク管理も議題となった。

この5月には特定荷主のCLO届け出も必要となるが、「特定荷主であること自体を自覚できていない状況が現在も続いている」と北條氏はいう。物流への意識が高いJILS会員でさえも、事前調査での反応は悪かったといい、実際に制度が動き出したとき、はたして何社がCLO体制を指導できるのかも危惧されるという。北條氏、森氏ともに「広報・宣伝が足りない」として、政府のさらなる取り組みが必要との意見で一致し、特に、トップランナー企業事例の啓発、企業にとってのCLO選任メリットを伝える取り組みが足りないのではという。

CLOとなるべき候補者が出てこなければ、CLO人材の育成も滞る。今後、JILSが主導する物流統括管理者活動を支援する会議体「J-CLOP」が有効に機能することも物流革新の重要な要素となり、さらにはPI実装をリードする連携や人材輩出も左右する。まずはCLOを増やすことが重要であり、「設置することの意義を、これからも官民でしっかりと明示していくことが必要」(森氏)との意見も共有された。


物流議論は、「法改正の概要と対応」ではなく、「ロジスティクスからの経営再設計」を問う場へと深化した。CLOとして、議論を交わすべき“人の顔”や“人となり”が明確になりつつあること、それ自体がこれまでとは明らかに違う。企業がどのような物流戦略を描いて協調領域を広げられるのか、企業の外交窓口としての機能もますます重要になる。

後半の「第3回CLOサロン」はそうした外交を実践する場として、会場参加者による懇親の時間が設けられた。ただ「聞く」だけではなく「参加する」 姿勢で臨む参加者も増え、会を追うごとに熱い議論が交わされている。宮地氏は、「CLOサロンは、毎回主催者を変えることで、特定の領域に縛られることなく、それぞれの立場から課題やアイデアを持ち寄ることが開催主旨。ぜひ、“新たな主催者”にも登場してもらいたい」と挨拶し、参加者による新たなアクションが物流を変える原動力となることに期待を寄せた。

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