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物流企業、事業拠点の新規立地計画は過去最高に

2024年1月16日 (火)

拠点・施設日本立地センターは16日、2023年度の新規事業所の立地計画ついて物流企業などの動向調査をまとめ、結果を公表した。新設や増設、移転の立地計画があると答えた物流企業は3割を超え、統計を始めた12年度以降で最高となった。

調査は、毎年10月に、国内の製造業や物流業の計2万社を対象に実施。事業拠点の新設や増設、移転といった立地を中心に、企業の投資意向を把握する目的で調ベている。今回は、23年10月17日〜11月6日に行われ、物流企業274社から回答を得た。回収率は5.5%。このほか、製造業(回答数1077社)でも合わせて実施された。

その結果、事業拠点の立地計画について、物流業では「計画がある」と回答したのは32.6%で前年度比2.1ポイントの増加。統計を開始して以降、最も高い数値を示した。

同センターは、その背景として、24年問題や人材不足への対応のほか、保護貿易主義や技術覇権を巡る米中貿易摩擦や経済安全保障問題が顕在化してきたこと、コロナ禍を経て経済活動が再始動したりインバウンド需要が回復したりしてきたことなどを指摘している。

立地計画があると回答した企業を対象に、立地形態を尋ねたところ、「新設」が58.1%で同7ポイントの大幅増だった。一方で、「移転」が24.4%で、6.3ポイントの大幅減と好対照だった。増設は17.4%だった。

着工予定時期については、「早急に」が38.1%で7.4ポイントの大幅増。一方、「長期的に検討」が6%で9.9ポイント減少した。

候補地域では、「南関東」が27%と最も高く、続いて「東海」が19.1%、「北関東」18%、「北部九州」14.6%だった。いずれも連続して上昇する結果で、同センターは「大都市圏および隣接地域が候補地となっている」としている。

また、「『北部九州』など半導体関連投資が活発な地域では、物流業が製造業より立地意欲を示す結果」だったという。同センターは「24年問題と合わせ、物流業の事業拠点の再編・整備が急務となっている」と指摘する。

立地計画の理由や背景について、「需要増への対応」が48.9%で最上位。「市場開拓」(40.9%)が2位に躍進し、「手狭感の解消」「老朽化」(いずれも26.1%)と続いた。

物流業の新規立地計画は「改革のメインステージ」となる

コロナ禍で変化、多様化した生活様式、とりわけEC(電子商取引)の需要拡大などへ対応する施設需要は旺盛であり、物流拠点見直しの必要性も高まっている。今後の新規事業所立地計画の調査では、物流業の30%以上が新規計画しており、物流拠点の新設計画などが統計開始以降最高の数値に反映したと思われる。首都圏など巨大商圏をターゲットとした対応はもちろん、半導体需要を背景にした北部九州エリアでの拠点増加など、社会情勢と密接にリンクした立地計画が見てとれる。

また、計画の背景については「需要増への対応」に続いて「市場開拓」が大きく増加したことは興味深い。24年問題に対応する集約拠点、分散拠点、中継拠点など、変革するサプライチェーン全体の中で新しい意義を持った「拠点再編」のカギを握るとともに、冷凍冷蔵倉庫や危険物倉庫など、多様な分野でのニーズへの対応を見据えた機能を前面にアピールする開発計画なども、市場開拓の試みと言えるであろう。

とはいえ、大量供給がリーシングの長期化や空室率の上昇を招くエリアも発生しており、施設賃料などでの二極化が進む恐れや、開発用地も無限ではないことなど中長期的な動向は注視する必要がある。物流資材や燃料費の高騰が計画を左右しないという回答が多数とはいえ、見直し・縮小を予定する回答も少なくないなど、社会環境を見極めながら拠点再編の決断を下す必要もあろう。

行政からは「物流効率化に向けた先進的な実証事業」「物流施設におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進実証事業」「財政投融資を活用した物流効率化について」など、施設機能の強化・整備を前提とした事業へ多額の予算が投下されるなど、「物流改革、DX化のメインステージ」として拠点機能が再評価される。DX化と歩調を合わせ、新規事業所の増加・見直しが物流改善に直接つながるような戦略となることが期待される。

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LOGISTICS TODAY編集部
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