環境・CSR脱炭素社会の実現に向け、EV(電気自動車)の普及は不可欠な要素である。各国が政策支援を強化し、自動車メーカーは電動化へと大きく舵を切った。物流業界でも商用EV導入は現実的な経営課題となりつつある。
ただし、EV運用拡大が進むほどに顕在化する問いがある。「使用済みEVバッテリーをどう扱うのか」。MIRAI-LABO(ミライラボ、東京都八王子市)常務で営業戦略部長の平塚雷太氏は、その出口が見えていないと指摘する。
環境のためにEVを増やす。しかし、その後工程まで設計されなければ持続可能な取り組みにはならない。中国で大量のEVが放置されているとの報道や、頻発するバッテリー火災は、普及の陰で起きる「後始末の難しさ」を突きつける。EVが地球に優しいかどうかは、走行時の排出量だけでは決まらない。使い終えた後の循環まで含めて初めて評価される。
この構造課題に対し、リサイクルではなく「リパーパス」という現実解を提示しているのがミライラボである。同社は2006年の創業以来、「環境に良いことしかやらない」を掲げ、環境技術を“実装”に落とし込むことにこだわってきた。
リサイクルの前段階を担う「リパーパス」とは
ミライラボが事業の中心に据えるのは、EVバッテリーを分解して資源化するリサイクルではない。その前段階にあたるリパーパス、すなわち用途転換による再活用である。「EVバッテリーのリサイクル技術確立にはまだ時間がかかる。しかし、車両用途では性能が不足したバッテリーを、定置型電源など別用途へ再設計し、“第二の寿命”を与えるリパーパスは可能」(平塚氏)である。これは理想論ではない。EV拡大に伴い、使用済みバッテリーが確実に増える以上、「一度で寿命を終わらせず、有効に使い切る」工程を社会システムとして組み込まなければならない。
ここで重要になるのが、リパーパス事業を成立させるための回収物流・循環物流の“出発点”と、出口戦略である。どれほど高度な再利用技術があっても、安定的にバッテリーが集まらなければ事業にならない。調達領域は最初から難所だ。事故車、リース返却車、レンタカー利用車など、発生源ごとに所有権も責任も処理フローも異なる。また、バッテリーは危険物性を伴うため、運び方・保管の仕方・評価の仕方を誤れば安全面のリスクが一気に顕在化する。循環物流は、入口の設計こそが勝負になる。
また、頭でっかちな理想論だけでは市場に受け入れられない。リパーパス製品として魅力的な商品を供給できるかという“出口”も重要なことはいうまでもないだろう。
EVのサーキュラーエコノミー実現する、世界初の連携ビジネスモデル

▲THE REBORN LIGHT smart
ミライラボのリパーパス製品群を象徴するのが、自律型ソーラー街路灯「THE REBORN LIGHT smart」(ザ・リボーンライト・スマート)だ。リパーパス蓄電池とソーラーパネルを組み合わせ、平時は再エネによる照明として、非常時は停電下でも機能を維持しうるインフラとして位置づけられる。「第11回ジャパン・レジリエンス・アワード」では最優秀賞を受賞、災害対応という現実の価値に接続した実装性が評価されている。国産EV車両が街路灯へ転じ、事故車両が災害対応電源へ転じる。環境の話を、生活と安全保障に引き寄せて語れるプロダクトは希少である。
さらに、リボーンライトを基幹としたリパーパス事業を社会実装にまで運ぶには、単体技術や個社努力では足りない。同社は、「EVバッテリーの回収から診断・開発・製造・販売・物流までを”一気通貫”で実現する世界初、世界唯一のビジネスモデル」(平塚氏)として、「EVバッテリーリパーパスプロジェクト」を展開する。
このプロジェクトの鍵を握るのが、ENEOSホールディングス、センコー(大阪市北区)、オークネット、東京センチュリー、あいおいニッセイ同和損害保険(東京都渋谷区)、やまびこ、日本パーキング(千代田区)の7社である。連携各社それぞれの得意領域で協働し、使用済みEVバッテリーのリパーパス事業スキームを構築している。同プロジェクトの「多摩グリーン賞最優秀賞」受賞は、入り口から出口までを“途切れなく”つなぐために多様な業種の企業間連携を実現した意義、ビジネスとしての継続性が評価されたものだ。

▲「EVバッテリーリパーパスプロジェクト」連携イメージ
各社それぞれの貢献領域は、循環の“詰まり”を解消する役割分担として読むとわかりやすい。入り口にあたるバッテリー供給では、事故車や全損車、中古車、リース返却車といった発生源を“回収可能な流れ”へ接続する必要がある。ここに保険や金融、中古車両流通のプレイヤーが入る意味がある。
出口においては、運営施設や運営コインパーキングへの設置、BtoB流通プラットフォームの構築、販売面での取引先・自治体ネットワークへの展開、さらに診断・再生バッテリーを対象とした保証保険の組成まで、二次流通を前に進めて事業化につなげる具体策を明示する。“自律型エネルギーインフラ”としての研究開発を進めることで、再生可能エネルギー活用の新たな可能性も開く。同社は、EVバッテリーリパーパスを進めることで、廃棄にかかるCO2排出量の削減、新品のバッテリー製造時のCO2排出量は60%以上削減できると試算する。
そしてプロジェクトの中心に位置するのが物流である。センコーは、使用済みEVバッテリーおよびリパーパス製品の回収・配送を担い、輸送時の取り扱いノウハウや拠点運用の知見で循環を支えるリパーパス製品物流プラットフォームに位置づけられている。ただ“運ぶ”のではない。危険性を伴う物を安全に運び、品質保証付きの流通へつなぐことで、GX(グリーントランスフォーメーション)を事業に変える、物流がGXを支える、という構図が具体性を帯びる。「センコーの物流、危険物取扱いの知見と、私たちのバッテリーに関する知見を合わせて検証を重ねることで、バッテリー製品の梱包形態や積み方などの安全かつ合理的な最適解も導かれる」(平塚氏)ことが期待される。
循環を動かす中核技術「EVバッテリー劣化診断」
リパーパス事業の核心となるのは、独自の劣化診断技術にある。使用済みバッテリーは外観から状態を判断できない。内部の破損や劣化度を把握できなければ、安全も品質も担保できず、二次流通は成立しない。まだまだ使えるEVバッテリーかどうかを、効率的に診断し、品質を担保する仕組みを構築することで、はじめて二次流通とリパーパス事業が成立する。
ミライラボは、「今までは1-2日かけて診断してきたバッテリーの劣化診断を、5分以内で実現できる自動診断ラインが完成。これによって年間1万モジュール分の診断ができる」(平塚氏)体制を整えた。
EV診断を単なる「検査工程」ではなく、再生設計そのものを成立させる要として組み込むこと。さらに、この診断が“速い”ことは決定的に重要だ。診断に時間がかかるほど、在庫は滞留し、回収から再製品化までのリードタイムは延び、循環は鈍化する。循環が遅い仕組みは、事業としての継続性を失う。診断速度を上げることは、リパーパスの回転を上げることに直結する。
企業連携や独自技術によってプロジェクトを確立することには、もう一つ見落とせない意味がある。多くのEVバッテリーにはリチウム、ニッケル、コバルトなどのレアメタルが関わり、国際価格の変動や供給制約がタイムリーな課題になっている。リサイクル技術が確立するまでの間、バッテリーに国内で第2の寿命を与えることの意義も大きくなっている。日本語特有の「もったいない」のニュアンスで国内資源の海外流出を防ぐという観点からも、事業拡大の契機となるのではないだろうか。
太陽光の迷い断ち切る路面発電、その物流施設との親和性
ミライラボのGX戦略を語る上で外せない太陽光路面発電「Solar Mobiway」(ソーラーモビウェイ)についても触れておこう。

▲Solar Mobiway
ソーラーモビウェイは、既存の路面空間を活用し得る太陽光発電ソリューションで、歩行者や車両通過にも耐えうる耐荷重性能を備えたパネル設置により、駐車場などへの実装事例も報告されている。森林伐採などメガソーラーが地域との軋轢を生む場面が増える中、設置場所の受容性は化石燃料からの転換推進にも関わる論点である。
「どこに、どう敷くか」という設計自体が価値になることは、広い敷地を持つ物流施設や工場、商業施設などとの親和性の高さを意味する。屋上だけでなく、構内の広い路面や駐車場などの活用も検証できるという強みで、積極的な脱炭素取り組みをけん引することができる。
“保管拠点から防災拠点・エネルギーハブへ”という、物流施設から地域共生施設への進化も現実味を帯び、カメラと連動したスマート化など応用範囲も広がる。実際にセンコーとの事業連携では、施設へのソーラーモビウェイ設置とリパーパス蓄電池の活用検証も進んでいる。リパーパスで「蓄電」と「非常時電源」を作り、路面発電で「発電」を補う。発電・蓄電・自家消費を一体化した物流施設の強靭さは、地域の安心を支える施設としての価値を高める役割も担う。
収益化フェーズに入る意義──環境は“コスト”から“資産”へ
環境対策は、コストばかりがかさみ経営を圧迫するものと見なされがちである。だからこそ、創業以来、地球に優しいことだけに取り組んできた同社が20周年を迎え、その知見を“収益化”へと本格化するフェーズに入った意義は大きい。「環境コンセプトを貫いたことが評価され、有益な企業間連携にもつながっているのではないか。販売領域でのパートナーシップも広がり、年間1000本規模という具体的なリボーンライト販売目標で事業展開する」(平塚氏)
EV推進、太陽光推進への“迷い”を断ち切るには、ただ理想論だけではなく実益と企業価値創出につなげることが必要だ。循環設計も、構想だけでは評価されない。動いている現実こそが価値になる。福島県浪江町でのリボーンライトの導入事例は、復興とレジリエンスという文脈に接続した“くっきりした輪郭”を与える。環境対応・災害対応インフラとしての価値は、地方創生やBCPと結びつき、企業の社会的価値向上にも直結する。平塚氏は、「いかに普段から使うか、災害時にも生かせるかという、環境と防災が切り離せないという意識の高まりも事業の後押しになる。各自治体もこれまで実証やお試しのフェーズから、製品購入のフェーズに変化している」という。今後、低軌道衛星の衛星アンテナ運用における非常時電源などへと活用が広がれば、「通信」領域にも接続する“不可欠なインフラ”事業となる。
「EVバッテリーリパーパスプロジェクト」の鍵は、循環が理念ではなくビジネスモデルへ昇華しつつある点にある。劣化診断という中核技術が、調達の難しさを吸収し、品質を安定させ、保証付き流通を可能にする。企業連携が、調達から出口までを途切れなくつなぐ。そこに物流が入り、GXは“運べる仕組み”になる。こうして初めて、環境対策は“コスト”ではなく“資産”として機能し始める。
一定規模以上の荷主企業がCLO(物流統括管理者)の設置下で始動する年である。CLOに求められるのは、輸送効率やコスト削減だけではない。サプライチェーン全体の持続可能性をどう設計するかという視点である。ここで投げかけたい問いは一つだ。CLOは“運ぶ責任者”から“循環設計者”へ変われるか。
国産EV車両が街路灯へ。
事故車両が災害対応電源へ。
物流施設がエネルギー循環の拠点へ。
これは理想論ではない。すでに動き始めている現実である。(大津鉄也)

▲平塚雷太氏
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