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ロジポケが目指す、DXによる経営改善の向こう側

2024年5月14日 (火)

▲X Mileの安藤雄真氏

話題2024年問題への対応として、事業者またぎでの遠隔点呼や運行管理など、物流の効率化を可能にする施策が次々と具体的になってきている。これらの施策に対応しながら機能を充実させている、物流バックオフィスを効率化するクラウドサービス「ロジポケ」。X Mile(クロスマイル、東京都新宿区)が提供するロジポケは、運用しながら業務をこなしていくうちに、蓄積されるデータを活用することで、さらなる業務の改善や効率化が可能になるという。活用の手法を、同社の安藤雄真氏に聞いた。また、物流に関する将来的な法整備や、物流そのもののあり方の未来像についても探る。

ストレスフリーな管理業務を通じて経営に必要なデータを蓄積

X Mileのロジポケは、運送業のバックオフィス全般をDX(デジタルトランスフォーメーション)によって効率化できるクラウドサービス。運送業務については「受注から案件管理、請求書発行まで一貫してコントロールできる」(安藤氏、以下同)ので、取引の可視化や請求漏れなどのミスを減らすことができる。また、勤怠管理、点呼、運行管理、運転者台帳など、労務と運行に関わるデータをまとめて記録、保管することができるため、ドライバーの稼働状況や勤務の間隔なども把握しやすい。

実際問題として、小規模な運送会社では社長が自らハンドルを握りながら、さまざまな管理業務や経理なども行っていることが少なくない。点呼も運行管理も法律通りにできていない会社も多く存在するのが運送業界。バックオフィス業務を部分的にアウトソーシングすることで、業務の負荷が減るのは間違いないだろう。

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2024年4月1日から施行された改正改善基準告示による「2024年問題」は、トラックドライバーの働き方改革を目指したもの。これまでも超過労働時間の順守が求められ、各運輸局の査察によって違反が認められれば文書警告や行政処分の対象となっていたが、24年4月から960時間に短縮された超過労働時間の順守とともに、適正な労働時間で運行していることの記録やその保管もさらに厳格に求められる。

当然、ドライバーの勤怠とひも付く点呼、運行管理、日報なども同様となる。これらを紙やエクセルファイルを使って手作業で行うのは時間的にも人的にもコストがかかるが、アプリを操作することで自動的に記録が蓄積し、クリック1つで監査に必要な書類が用意できるというのは、管理者にとってもドライバーにとってもありがたいことだろう。

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こうして、バックオフィス業務をDXで効率化し、誰でも仕事をこなせるようになることは現場にとっての大きなメリットになるはずだ。しかし、ロジポケから得られるメリットはそれだけはないと、安藤氏は語る。「得られたデータを活用すれば、業務全体を見直すことができ、さらなるコストの圧縮や利益率の向上などが目指せる」のだという。

データから見える化される無駄を省き、業務を効率化

前述したように、受注から請求書発行までは一貫して管理できるため、請求の取りこぼしや、支払いが本来のスケジュールより遅れるといった事態は防ぐことができる。また、車両台帳全体を俯瞰して見ることができるため、無駄のない配車を行うことがも可能だ。

実際、運送業の現場では「車両の管理が不十分なため、トラックが空いているのに傭車しているようなケースも少なくない」ため、無駄な傭車を減らすだけでコストを減らし、利益率の向上を目指すことができる。自社のリソースをフル活用するためには、業務で発生している無駄なコストを見える化する必要があるし、無駄を排除することでしか、効率的なリソース活用もできないのだ。

法改正で進む、運行管理のアウトソーシング

ロジポケのようなサービスを利用し、自社内で業務の効率化を目指す一方で、事業者またぎで運行管理をアウトソーシングすることにより、運行管理業務の一部を自社内ではやらないという選択肢も、業務効率化や工数削減の選択肢となる。安藤氏は「自社で運行管理業務をこなしきれないから他社の傘下に入り、さまざまな管理業務はそちらに任せてしまおうという運送会社が増えていくのではないか」と見る。

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昨今では物流・運送業界でもM&Aが盛んになっているが、24年問題を理由に事業継続に不安を抱える運送会社は少なくない。より制限が厳しくなったドライバーの労働時間の管理、それに伴う人材や目減りした輸送力、中継地点の確保など課題は少なくないので、無理からぬことでもある。また、労働人口の減少に伴って運行管理者も確保しにくくなり、深夜、早朝、日曜・祝日にも勤務できる人材をこれからも確保できるかと考えると、外部に任せられる部分については任せてしまった方が楽なことは間違いない。

「業務を一元化という形で外部委託することで、各運送会社にかかる負荷は減るのは確か。しかし、それはあくまで『運行管理の一元化』の効果であって、『高度化』はさらにその先にあるのではないか」と安藤氏は指摘する。

運行管理一元化の先にある、より効率的な物流の可能性

「運行管理を外部に任せることができれば業務負荷は減るが、1人分の人件費が浮いたからといって、常にカツカツで事業を回している多くの運送会社にしてみれば効果は限定的。また、物流の抜本的改革としても不十分といわざるを得ない」

小規模な運送会社にとっては人材の確保も課題だが、高騰する燃油費の運賃の転嫁や、運賃そのものの値上げなども大きな課題となっている。また30年までには全体としては20%近くの輸送力が不足するという物流全体の問題の解決に対しては、「事業者をまたいで運行管理を行うことができる」というだけでは、部分的な対策でしかないといえる。

「限られたドライバーとトラックで十分な輸送力を確保するためには、できる限りの効率化を進めていくしかない」という安藤氏。そのために不可欠なのは、より効率的な配車と、積載率の向上だろう。その実現のためには、「多数のトラックとドライバーを一元的に管理して効率的なルートを運行し、共同配送も行いながら、トラックの積載率を可能な限り上げていくような物流」が必要になるだろう。

これまでメーカーや流通は子会社の物流企業をM&Aで手放すなど、物流のアウトソーシングを行ってきた。しかし、労働人口の減少や24年問題で輸送力が不足する局面を迎えると、トラックやドライバーといった実運送を自前で用意するケースが増えてきた。また、実運送を握ることが大きなビジネスチャンスとなると見て、物流業界の外からの利用運送への参入も増えている。

原稿執筆時の24年4月30日現在ではまだ運行管理一元化すら実験段階だが、ゆくゆくは「高度にシステム化され一元管理された物流グループによる輸送が行われる」可能性は大いに考えられる。これまで、配車機能を持っていた3PLが、下請けに丸投げすることで多重下請け構造が生まれてきた。元請けから直接に近い形で実運送会社が仕事を引き受けることができるようになれば、こうした構造が解消されるとともに、運送会社やドライバーが手にする利益も多くなるだろう。

安藤氏は「運賃へのコストの転嫁が進むとともに、高い積載率と効率的な配車によって、運送会社やドライバーの利益、収入も上がっていくはず」と展望を語るとともに、「そのような物流業界の明るい未来を実現するために、個々の運送会社のDX化をサポートし、運行管理の高度化・一元化に必要な運送業務のデータ化に寄与していくこと」こそがロジポケやX Mileの社会的ミッションである、と安藤氏は強調した。