ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

点呼・運行管理DXが導く未来、生き残りへ早期着手を

2024年5月22日 (水)

話題本誌LOGISTICS TODAYは21日、オンラインイベント「運送経営が変わる〜運行管理の自由選択が示唆する物流会社再編時代の到来〜」を開催。運行管理高度化によって実現する運送経営の未来像や課題について、2部構成のパネルディスカッションが行われた。

運送事業者にとって大きな変化の局面、DXの準備怠るな

パネルディスカッションの第1部では、運行管理高度化・一元化にどう取り組むべきかについて、遠隔点呼システムのクラウドカメラで圧倒的なシュアを誇るセーフィー(東京都品川区)営業本部の中原航氏、運送事業者の事業支援プラットフォーム「トラッカーズ」を展開するAzoop(アズープ、港区)の朴貴頌・代表取締役CEOが登壇した。

 

▲セーフィー営業本部、中原航氏(左)、Azoop代表取締役 、朴貴頌氏(右)

セーフィーの中原氏は、点呼システムの高度化に活用できるソリューションとして同社のクラウド録画サービスを紹介。導入の容易さやコストの低さといった優位性により市場をリードしているとした。また、クラウドでの映像データと点呼システムとを連携することで、さらなる物流事業効率化の拡大につながることを示した。また、同社が提供するような運用しやすいシステムこそが、現場での安全を担保すると強調した。

Azoopの朴氏は、運行管理の一元化に伴う運行管理の受委託において、日々の接点のないドライバーや車両の管理・状態を適切に把握することが重要であると指摘。各委託会社は、日々の運転者や車両の管理を厳格に行い、適切な記録や開示の責任を負う必要があると強調した。また、そうした客観的なデータによるエビデンスを持つことで、受託してもらえる事業者になることが重要と訴え、日々のコンプライアンスの徹底に加え、トレーサビリティーを確保すべきだと語った。

運行管理高度化・一元化については、両者ともに運送事業者の生産性向上に寄与するとし、早くから準備することが次の有効な一手につながるという点で意見が一致。物流データの標準化など、さらなる高度化も視野に入れた取り組みへ、早期に着手する重要性を語った。

また、運送事業者のあり方が変化し、M&Aなどによる集約が加速するとの見方も提示され、運送会社の数が減少に向かうことが想定されるとし、変化に対応するためにもDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた未来への投資が必要な局面であることも語られた。

運行管理高度化・一元化の課題とは?

パネルディスカッション第2部のテーマは「運行管理の高度化がもたらす課題」。デジタコや点呼システム開発を手掛けるNPシステム開発(松山市)取締役名古屋支店長の可児勝昭氏と、帳票基盤ソリューション開発のウイングアーク1st物流プラットフォーム事業開発部部長の加藤由貢氏、運送業務DXツール「ロジポケ」を提供するX Mile(クロスマイル、東京都新宿区)代表取締役CEOの野呂寛之氏が登壇した。

▲NPシステム開発取締役名古屋支店長の可児勝昭氏

NPシステム開発の可児氏は、このほどの法改正を「チャンス」と捉え、今後数年の間に運送会社の淘汰が進み、デジタコの正確な利用の教育、遠隔による運行管理による運行管理者の勤務時間削減、共同輸送など協力会社との連携による効率化が「生き残り」に必要と考える。また、運送会社の淘汰により、運送会社と荷主の立場が対等、あるいは逆転し、賃金交渉の環境も改善すると見ている。

NPシステム開発の「AI点呼システム」では、遠隔点呼や自動点呼の最新の運用に対応しながらも、対面点呼のコミュニケーションを重視、可児氏は点呼には対面と機器の使い分けによる精度の高い運用を推奨。機器やシステムももちろん大事だが、一方で人間性や信頼性を中心に規制改革やその対策について考えることを課題に挙げた。

▲ウイングアーク1st物流プラットフォーム事業開発部部長の加藤由貢氏

ウイングアーク1stの加藤氏も、運送会社淘汰の可能性を指摘し、先の規制緩和によって運送会社自体が増えすぎたことで、運賃の過当競争を生み、運送業界の労働環境と待遇の悪化につながった現状を指摘する。

加藤氏は、物流関連2法改正に盛り込まれたいわゆる商慣行の見直しによって対応が迫られる、物流に関わる取引業務・受発注をオンライン化する機能を持つ「IKZO Online」を紹介。契約ごとではなく運行ごとに連絡・報告義務が生じる法改正によって、運送会社が荷主と交渉するために活用することを訴えた。荷主とオンラインでつながることで、情報を共有できるだけでなく、その業務の省力化にもつながり、法改正に加え、このようなデジタルツールの活用によって、物流の効率化だけでなく、古い商慣行と荷主と運送会社の行動変容にもつながるとした。

▲X Mile代表取締役CEOの野呂寛之氏

X Mileの野呂氏は、独自に実施した物流の24年問題の実態調査から浮かび上がってくる課題を示し、課題解決に向けた同社ソリューションのロジポケを紹介した。荷主との運賃交渉などによる賃金水準の向上、離職率の改善、シニア層の活躍、他業界からの人材流入など、人材採用と業務効率化の両機能を備えたプラットフォームとして、ロジポケの有用性を説明。運行管理の一元化に必要な基本情報の集約管理による効率化と、変化への備えを重要視した。

運行管理の一元集約化では、「システム導入のコスト的ハードルを下げることが重要」(野呂氏)、「集約された情報には、個人情報他さまざまな情報が蓄積され、それは財産であると同時にノウハウであり、全てを見える化すると他の問題も生じる可能性がある。すべてを見える化するのではなく、見える範囲の限定や権限を設定できる仕組みが大事で、その上で共有できる情報の線引きが必要」(可児氏)など、それぞれの知見から将来的な運行管理の「事業者またぎ」、BPO化への課題が指摘された。