ロジスティクス国土交通省、農林水産省、経済産業省の3省は28日、「改正物流効率化法」の施行に向けた合同会議を開催した。会議には各省の担当者、学識経験者や物流に関わる企業の関係者などが集まり、活発な意見交換が行われた。

▲合同会議の様子
冒頭では物流を取り巻く現状を再確認し、具体的な対策をなにもしなかった場合、2030年には輸送力が30%以上不足するという試算が出席者の間で共有された。また特に、都市部から離れた地域で生産されることも多い農林水産物の物流についての懸念が示された。
特に議論の的となったのは、いかに現場の実態を把握するかという点である。改正案ではトラックドライバーの荷待ち、荷役にかかる時間の短縮を目指すとしており、1回の運行での荷待ちと荷役の合計を原則2時間以内に収めたい方針を示している。しかし、ドライバーにとっては荷待ちが実質的な休憩時間になっている場合があるほか、荷役に対して対価が発生しているケースもある。
改善基準告示の改正に伴い、トラックドライバーの勤務時間は超過労働時間は年間960時間におさめるように定められている。これはドライバーの働き方改革という面では意義のあることだが、一方では労働時間が短くなるため、収入が減るケースもある。現場をよく知るオブザーバーからは、荷待ち・荷役を削ることは収入減につながるケースも考えられ、全ての現場に適用していくことが果たしてドライバーのためになるのか、という疑問の声も上がった。
また、業務の効率化のための積載率の向上を、改めて荷主に求めることが確認された。積載率が上がれば運送効率が上がるが、現状では積載率の判断基準が重量のみとなっている。重さだけを基準とし、軽くてかさばるものの積載率が低く見積もられて正当な評価が得られないようでは、荷主側に不公平感が広がる懸念もある。
重量基準で積載した場合に、荷室に空きスペースができているケースもあり、重量物と軽量物を混載することで荷室を効果的に利用するという事業者をまたいだ共同配送などの試みも行われている。こうした試みの中には功を奏しているものも少なくなく、一律に重量のみにこだわらず、これからの物流効率の最適化とはどういう形なのかをあらためて考えていく必要があるだろう。
当然ながら幹線輸送と、ラストワンマイル配送では積載率がまったく異なるなど、単純に比較することはできない。法改正にあたっては、こういった個々の事情にいかに配慮するかが課題になりそうだ。
業界の健全化を進める施策として、物流事業者に対するアンケートの実施が提案された。取引のある荷主企業についての回答を点数化し、スコアが高い企業、低い企業をそれぞれ公表する予定だ。トラックGメンによるドライバーへの聞き取りなど、取引上弱い立場にある側への聞き取りはこれまでも行われてきたが、アンケートについてもこれと同様に、匿名性を担保するなど、忖度のない正直な評価を吸い上げられるかが課題になる。
また、消費者の理解を求めるための施策、地方と都心の物流格差についても活発な意見が交わされ、現場での関心の高さがうかがい知れた。事務局の代表者からは締めくくりとして、「解決しなくてはならない課題は多い」としながらも、できることから手を付け、物流の改革を着実に推し進めていく考えが示された。
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