
▲三井不動産執行役員ロジスティクス本部長の篠塚寛之氏
拠点・施設三井不動産は11日、ロジスティクス事業の説明会を開催、事業を通じた社会課題解決への取り組みおよび新規開発物件について、同社執行役員ロジスティクス本部長、篠塚寛之氏が発表した。
同社は、2012年4月より本格的に物流施設事業に参入し、現在までに計67物件を開発・運営している。ことし4月には、新たに三井不動産グループの長期経営方針「& INNOVATION 2030」を公表した。この新しいグループ長期経営方針に基づいて策定された新事業戦略では、国内新規8物件の開発を決定して国内外開発施設は75物件に。延床面積600万平方メートル、累計投資額1兆2000億円に事業拡大することが報告された。
事業戦略におけるテーマは「ロジスティクス事業の更なる成長」、「事業領域の拡大」、「ESGへの取り組み強化」として、これらの取り組みにより、「産業デベロッパー」として、社会のイノベーション・付加価値の創出に貢献するとしている。
コア事業である「ロジスティクス事業の更なる成長」戦略となる街づくり型物流施設開発としては、地域に開かれた広場や保育所を併設した「MFLP船橋」、職業訓練施設も入居する複合用途の「MFIP羽田」のほか、ことし9月末には、新たなフラッグシップ施設として、日鉄興和不動産との共同事業による、都内最大の物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」が完成する。同施設では、災害時には、地域住民1000人の緊急一時退避場所となり、敷地内に併設する高台広場は緊急着陸用のヘリポートとしても使用可能。さらに、ドローン用の実証実験フィールドと賃貸用 R&D区画を整備し、板橋区内における災害時に備えて、ドローンによる物資配送や災害支援活動の実証実験などを実施予定で、その他施設でも地域防災や地域貢献イベントの開催など、地域と一体の街づくりを展開する。

▲「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」の完成イメージ
また、23年4月に発足した物流コンサルティングプラットフォーム「MFLP & LOGI Solution」では、50社以上のパートナー企業ネットワークを生かし、荷主企業のサプライチェーンの改革を支援するサービスを提供する。国内ハウスビルダーとの連携プロジェクトでは、物流コストを「見える化」し、将来計画も見定めた上で、工場・倉庫拠点の集約や輸配送料金プランの見直しを行い、サプライチェーンの改革支援を行った。
ことし4月からは、EC事業者に対し「MFLP & LOGI Sharing」の提供を開始。「MFLP船橋」内の「EC自動化物流センター」のシェアリング、注文受け付けや配送手配、在庫管理などのフルフィルメントサービスを担うことで、EC事業者の支援事業を展開する。そのほか、中部圏での中継拠点ニーズに対応した事業機会の拡大、フィジカルインターネット構想への参画、待機時間削減のための取り組み強化などを目指す。
「事業領域の拡大」では、冷凍冷蔵倉庫の開発推進を掲げた。同社初のマルチテナント型冷凍冷蔵倉庫となる「MFLP杉戸」(仮称)や「MFLP船橋南海神」など計4物件の開発を予定する。参入が難しいとされる冷凍冷蔵倉庫分野へは、参入タイミングも慎重に検討されたとするが、「商業施設事業におけるスーパーマーケットなどとの連携の強み」(篠塚氏)を生かして、今後エリアの拡大も計画する。
さらに、データセンター(DC)の積極展開も重要施策として、アジア最大級のDC計画など、用地取得の強化、拡大を図る。今年度は既存3施設に加えて東京都日野市、相模原市でのDC計画を計画する。また、工場・インフラなどの重要アセットにも事業ウイングを広げ、三井不動産の源泉グルメお取り寄せプラットフォーム「mitaseru」(ミタセル)の製造拠点の新設など事業を拡大する。
「ESGへの取り組み強化」では、太陽光発電設備の設置を推進し、オンサイトによるグリーン電力の供給や、テナントの要望に応じた専有部への「グリーン電力提供サービス」など、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進。23年10月には、同社と三井不動産ロジスティクスパーク投資法人が保有する全施設の共用部供給電力の100%グリーン化を達成したことを公表した。さらに、24年度中の着工を予定している「MFIP海老名」では、三井不動産グループが北海道に保有する大規模森林の木材を、構造材、内装・仕上げ材に使用し、「植える、育てる、使う」のサイクルを回すことで、持続可能な森林経営による“終わらない森”創りを目指すとしている。
資材高騰や賃料転嫁の難しさなど、物流不動産事業には厳しい社会状況もあるが、篠塚氏は「プロしか生き残れないマーケット」になってきていると表現、これまでの知見や連携を生かした事業機会を拡大していくと語った。
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