調査・データ東京商工リサーチ(TSR)は15日、今年夏の地ビールの出荷量が4年ぶりに減少したと発表した。新型コロナ禍による落ち込みから、ここ数年回復基調にあったが、今年は物価上昇による買い控えの影響を受けた。
同社のまとめによると、主な地ビールメーカー62社の今年1-8月の総出荷量は9561キロリットルで、昨年同期を8.6%下回った。出荷量が前年を下回るのは、コロナ禍の影響を受けた20年以来、4年ぶりとなる。物価上昇による消費の抑制で、主力のスーパーやコンビニエンスストア、酒店向けの販売が不調だった。ビアパブの新規開拓などへの営業で販路拡大を進めるメーカーもあったが、消費者の側で価格やブランドによる選別志向が強まり、出荷量を減らした地ビールメーカーが多かった。
年間の出荷量を見ると、今年は1月の出荷量が791キロリットル(昨年同月比14.2%減)になるなど、出だしから低調だった。需要期の7月は記録的な猛暑で1639キロリットル(同3.4%減)と今年最多の出荷量となったが、8月は天候不順などで出荷量が落ち込み、1377キロリットル(同14.2%減)と昨年同月を大きく下回った。
メーカー別で見ると、最も多かったのが地ビール醸造全国第1号のエチゴビール(新潟市西蒲区)で、出荷量は2258キロリットル(同4.2%減)だった。出荷量は減少したものの、他のメーカーを大きく引き離し、13年連続トップとなった。スーパーやコンビニ、酒店向けが不調だったが、飲食店、レストラン向けの販路を拡大したという。
2位は「常陸野ネストビール」の木内酒造1823(水戸市)で1393キロリットル(同8.4%増)、3位は「伊勢角屋麦酒」の二軒茶屋餅角屋本店(三重県伊勢市)の852キロリットル(同6.3%増)が続いた。二軒茶屋餅角屋本店は今年4月、イギリスの国際的ビール審査会「インターナショナル・ブルーイング・アワード」で最高賞の金賞を受賞し、国際的にも評価を高めた。
1-8月の出荷量が100キロリットルを超えた地ビールメーカーは18社で昨年と同数だった。
一方で、アメーデル東京(東京都江東区)は、コロナ禍以降、地ビール販売が伸び悩み、今年1月に東京地裁から破産開始決定を受けた。ほかにも先行きが見通せず解散や廃業に追い込まれるメーカーが出ている。
同社は「大手メーカーも地ビールに参入し、市場の競争は激化している。26年10月に控える3度目の酒税改正に向け、地ビールの希少性を生かして、地ビールブームを継続できるか各社の戦略が注目される」としている。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com