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アクセス、雇用確保、BCP対策、顧客ニーズを汲み取る物流施設

三井不動産、東北初の物流拠点に勝算あり

2024年11月12日 (火)

▲竣工後のMFLP仙台名取I

話題三井不動産は2024年4月に宮城県名取市に「MFLP(三井不動産ロジスティクスパーク)仙台名取I」を完成させ、25年12月には同地に「MFLP 仙台名取II」を完成させる予定だ。同社が東北に物流拠点を置くのは初めてのこと。今回は両施設の魅力や、東北進出のねらいを三井不動産ロジスティクス営業部営業グループ兼イノベーション推進室主任の古賀鉄盛氏に聞いた。

物流施設の新たな“穴場”スポット

MFLP 仙台名取I・IIの魅力は立地にある。両施設は徒歩5分ほどで行き来できる距離にあり、それぞれ国道4号線に隣接、仙台東部道路「名取中央スマートIC(インターチェンジ)」から0.9キロメートルと近い。また仙台空港アクセス線「杜せきのした」駅からも歩いて12分と徒歩圏内だ。国道・ICが近いためトラックがアクセスしやすい上、交通の便も良く、従業員を募りやすい。

▲周辺広域図(クリックで拡大)

同施設は仙台市中心部への市内配送の拠点として機能する他、中継拠点としての使い方も想定されている。24年に入り、ドライバーの労働時間が規制されるなか、両施設は地方と首都圏をつなぐ拠点としての役割を十分に果たすことができる。MFLP仙台名取Iの延床面積は4万5072平方メートル、IIの延床面積は3万2491平方メートルと、中継拠点としては十分過ぎるほどのスペックだ。今まで物流施設は大消費地に近い関東・関西に集中してきたが、これからは生産地と消費地をつなぐ地方拠点が存在感を増していくことになるだろう。

東北地方、特に宮城県の海側の地域はかつて大震災で津波に襲われた。BCPの観点について古賀氏は「名取Ⅰ・Ⅱの立地は東日本大震災のときにも津波が届かなかったエリア。東北地方進出にあたって津波というBCPリスクを回避できたことは重要なポイントとなった」と話す。

▲三井不動産の古賀鉄盛氏

また、万一の浸水時にも荷物と施設を守れるよう、1階の床を浸水が想定される水位よりも高くし、発電機等の電気設備を高所に設置している。「物流施設には社会インフラとしての使命がある。24時間365日、物流を止めない施設を作ることが三井不動産のデベロッパーとしての使命と考えている。」と古賀氏。

古賀氏は「名取にはこれまで物流施設が集積してこなかった。しかし、立地の良さや雇用確保のしやすさ、BCP対策といった点からも魅力がある」と話す。名取は物流業界にとって、知る人ぞ知る穴場スポットになりそうだ。

“汎用型一辺倒”の物流施設ではニーズに応えられない

今回、名取市に中継拠点としてのニーズを見出すことができたのは、三井不動産の入念なリサーチがあったからに他ならない。古賀氏は「ニーズが先鋭化するなか、従来のような汎用型の物流施設では荷主や3PL企業に寄り添えない。これからはBTS(オーダーメイド)型の物流施設が増えていく」と分析。実際、MFLP仙台名取Iの2階部分は通常の汎用的な高さを越える7.2メートルの設計だ。「食品や日雑品、消費財などの軽い荷物を保管する場合、天井高が5.5メートルだと3段積みしかできないが、7.2メートルだと4段積みにできて保管効率が良い。こうした設計は地域の顧客ニーズを反映させた結果」(古賀氏)

▲MFLP仙台名取Iのトラックバース(左)と倉庫(右)内部(クリックで拡大)

三井不動産が寄り添うのは荷主や3PL企業だけではない。MFLPに入居する企業の従業員には「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」で使える従業員限定クーポンなどを配布。三井不動産が誇る全国有数の商業施設での買い物がお得になると聞けば、MFLPで働きたいという人も少なからずいるはずだ。古賀氏も「商業施設と物流施設の立地選定には共通点が多々ある。施設同士が近くにあることも多く、クーポンを利用する機会は少なくないはず」と自信ありげに語った。

さらに三井不動産は名取市と災害協定を締結。有事の際にはMFLP仙台名取I・IIの一部を避難場所として提供する予定だ。交通量の増加などから、物流施設がもたらすマイナス面にも配慮する必要がある。同社は、施設を利用する荷主企業や3PL企業と共に、地域に寄り添う物流施設を開発していく考えだ。

今後の展望について古賀氏は「さらに物流拠点を増やしていく予定」としながらも、「従来と同じやり方で開発を進めるのではなく、しっかりと顧客ニーズを汲み取り、より顧客満足度の高い開発とすることを念頭に置く」とコメント。その上で同氏は「三井不動産には庫内のレイアウトができる者、配送のシミュレーションができる者など、物流のエキスパートがそろっている。だからこそ、多種多様なニーズに合致した物流施設を提供できる。」と自信をのぞかせた。

「MFLP仙台名取I」概要

所在地:宮城県名取市飯野坂字南沖74-1
敷地面積:2万60平方メートル(6068坪)
延床面積:4万5072平方メートル(1万3634坪)
貸床面積(合計):3万9585平方メートル(1万1975坪)
倉庫:3万4427平方メートル(1万414坪)
トラックバース:49台、4241平方メートル(1283坪)
竣工:2024年4月
交通:仙台東部道路「名取中央」スマートICから900メートル、仙台空港アクセス線・杜せきのした駅から徒歩12分

https://mflp.mitsuifudosan.co.jp/logistics/mflp-sendai/

「MFLP仙台名取II」概要

所在地:宮城県名取市
敷地面積:1万5962平方メートル(4829坪)
延床面積:3万2491平方メートル(9828坪)
着工:2024年9月
竣工:2025年12月(予定)

https://mflp.mitsuifudosan.co.jp/logistics/mflp-sendai-2/


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