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人とロボットが共存する未来の物流現場を創造

2024年11月14日 (木)

話題物流業界では完全な自動化に対して慎重な姿勢を崩さない企業が多い。特に小・中規模の倉庫や施設においては、まとまった設備投資が必要な全自動化は現実的な選択肢とは言えない。しかし、人手不足が深刻化している今、機械に頼らずに作業することにもまた限界がある。

こうした課題への解決策の1つを提供したのが、2020年創業のLexxPluss(レックスプラス、川崎市川崎区)だ。同社は自律搬送ロボット「Lexx500」(レックス500)を用いて倉庫の部分的な自動化を実現している。そんなLexxPlussの取り組みや目指す未来を、阿蘓将也代表取締役CEO(最高経営責任者)に聞いた。

▲LexxPluss代表取締役CEO、阿蘓将也氏

混雑した場所でも滑らかに、日本の物流現場に合ったソリューション

Lexx500は指定されたルート(A-B間など)を自動で行き来し、台車ごと荷物をピッキング・リリースする機械だ。台車を引く人間の代わりを務める機械と思ってもらえれば良いだろう。決められたルートを往復するだけなら、自動倉庫の方が効率で優っているように思われても仕方ない。しかし、Lexx500の強みは人間の作業員がいる現場での運用を前提に設計されているところにある。同機は人や障害物を自動で検知し、それらを避けたり、必要なら停止したりして衝突を防ぐ。専用のラックを組んだり、床にテープを貼ってロボットの動線を確保したりする必要もなく、人間と同じ空間で作業にあたることができる。自動倉庫などとは違い、既存の現場を改造する必要はない。

▲LexxPlussの強みは導入ハードルの低さにある

本体も現場にフィットするように設計されている。Lexx500の回転半径はわずか38センチ。小回りが利くので、狭い倉庫内や人が頻繁に通行する混雑した場所でもスムーズに動ける。小売業や卸売業の現場では、いまだに台車を用いた手動の荷物搬送が主流だ。同機はそのような現場に機械に合わせた改造を強要することなく、それでいて従業員の負担を軽減してくれる。

また1台からの導入が可能であり、拡張性も高い。阿蘓氏は「人間をメインにしてきた現場にいきなり複数台の機械を入れるのは難しい。そのため1台から試せるようにした」と話す。

人件費が高い国においては、工場内のオペレーションを完全に自動化することによる金銭的なメリットが大きい。しかし、日本は人件費が安価なため、全自動化における導入コストが割に合わないと考える企業もまだまだ多い。そのような背景からも、LexxPlussは人と機械が共存する、日本の物流現場に合ったソリューションの提供に力を入れている。

他社との協業・連携を積極的に行い、業界全体の変革を目指す

阿蘓氏がLexx500の開発に至ったのには、独自のキャリアが大きく影響している。かつてドイツ有数の自動車システム会社で技術開発を担当していた同氏は、当時のことを「社会課題に直結するソリューションを提供できているという実感があまりなかった」と振り返る。最先端の技術を駆使しながらも、社会に限定的なインパクトしか与えられていないと感じていたのだ。

▲川崎にある本社オフィスには開発用のラボを併設する

そんな阿蘓氏にとって転機となったのは、物流業界との出会いだった。工場内での自動運転システムのプロジェクトを手掛けた際、阿蘓氏は物流現場に残るアナログなオペレーションに驚きを覚えた。EC(電子商取引)市場の拡大を受け、即日配送が当たり前になった昨今においてさえ、物流事業者の多くは旧態依然とした手作業に頼っている。いまだに連絡手段としてファクスを使っている事業者も少なくない。そのような現状を目の当たりにした阿蘓氏は「物流こそ、新しい技術を適用することで大きなインパクトを残せる業界にほかならない」と感じたという。

新しい技術を開発し、業界に大きなインパクトを与えるために、阿蘓氏は他社との協調・協業を大切にしてきた。複雑なフローに対応するため“個別最適”が進んだ物流業界では、工程ごとにまったく異なるシステムを採用している事業者も多い。そんななか、LexxPlussは自社技術をオープンにし、他企業と協業することで、より広範囲をカバーできて、しかも柔軟性の高いソリューションを開発しようとしている。

また、同社はロボティクス分野にとどまらず、さまざまな解析ツールやソフトウエアも提供している。これにより、倉庫全体のオペレーションの最適化を図り、物流事業者が抱える多様な課題の解決に乗り出したい考えだ。

▲Lexx500と阿蘓氏

未来を見据えた成長と課題、目指すは物流業界大手への躍進

24年、LexxPlussは創業4年目を迎える。今後の課題について阿蘓氏は「製品の量産体制は整ったものの、クオリティ向上は引き続き求められている」と語る。Lexx500は現場で働く機械だからこそ、導入してみて初めて予想外の不具合が生じることもある。阿蘓氏は「現場のニーズをより深く理解し、組織として継続的なサポートを行っていきたい」と話し、製品の改良を続けながら顧客満足度を高める方針を掲げる。

さらに今後はロボットメーカーにとどまらず、物流業界の問題解決を図るコンサルティング企業としても存在感を発揮していきたいという。最終的には、物流業界における大手企業としての地位を確立し、業界全体をけん引する存在となることを目指している。

この先、LexxPlussの成長が物流業界全体にどのような影響を与えるか。その動向からは目が離せない。人とロボットが共存する”効率化された未来の物流現場”を目指し、同社は今後も業界の注目を集め続けるだろう。

一問一答

Q.スタートアップとして、貴社はどのステージにあるとお考えですか?

A.ステージとしてはシリーズAだと考えています。ただ、私自身の肌間だと、現状ではLexxPluss としてやりたいことの1%もできていないと感じています。まだまだやりたいこと、やるべきことはたくさんあります。

Q. 貴社の“出口戦略”、“将来像”についてお聞かせください。

A.まずはIPO(新規上場)を目指します。もちろん、手段としてのM&Aも選択肢の一つです。倉庫全体の業務を受注できるようなことがあれば、同社が得られるメリットは非常に大きいと感じています。

「LexxPluss」ホームページ