ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

JILSイベントで大学と物流関連企業が交流

人材採用促進へ「物流現場に触れる教育不可欠」

2025年3月13日 (木)

ロジスティクス日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は12日、都内で「大学におけるロジスティクス・物流教育の実践状況」講演会・名刺交換会を開催した。同イベントは企業のロジスティクス・物流関係者、人事担当者と、大学教員・関係者との情報交流を促進するために企画されたもの。企業の参加は定員100人となっていたが、満員の盛会となった。

▲JILS大学におけるロジスティクス・物流教育の実践状況」講演会・名刺交換会の様子

講演会では、大学で物流関連の講座を持つ教授からの、シラバスやゼミ活動の内容、最近の学生動向などについて紹介する講演が行われた。

講演では明治大学商学部の町田一兵教授から、学生に物流業界に触れる機会を設けることで、物流を志望する学生が増えた例が紹介された。町田教授は、「実学である物流を学ぶには、産学連携を通じた現場に触れる教育が不可欠」とし、物流企業の物流センターなどの現場や、現場で直面する課題を解決する演習などを学生に経験させるという授業を設けているという。企業見学を絡めた講座にはこれまでセンコー、ユーピーアール、F-LINE、日本パレットレンタル(JPR)などに協力を仰ぎ、学生の立場から物流の仕事を体験させる機会を多く提供している。

▲名刺交換に応じる明治大学商学部の町田一兵教授

また同教授は1-2年生の英語の授業をコーディネートする立場にあったため、文学作品の読解などではなく、物流業界を中心としたビジネスを想定した講座を開設。さらに、海外での物流施設見学なども実施しており、海外での活躍を目指す学生の取り込みに成功している。

同学では物流不動産デベロッパーであるシーアールイー(CRE)の寄付口座「アート・オブ・物流」を開講し、コストコ、ビームスなど、学生にもなじみのある企業の物流事例を交えた講座を行っている。物流を軸にしながらも学生に親しみやすい話題で講義を行っており、商学部の学生だけでなく、文学部からの参加者も多く、最終的に参加者の半数が商学部、半数が文学部となっている。

町田教授のゼミ1期(2015年卒)は8人の卒業生のうち物流企業への就職はゼロ人だったが、9期(2025年卒)には24人のうち交通・物流関連への就職は10人(うち女子4人)となっており、物流志望者数、特に女子学生の増加が顕著だ。町田教授は、物流企業の人事担当者から「町田ゼミの出身者は、入社後に辞めていかない」と言われることが多いといい、教授はこれについて「実際の業界へのタッチポイントを多く作って流入を促すと同時に、仕事の実情をあらかじめ学生にわかっておいてもらうことでミスマッチによる離職が減るのではないか」と分析している。

講演会に続いて、企業と大学との名刺交換会が行われた。労働人口減少時代にいかに人材を確保していくかは、事業継続において死活問題。参加企業からは、「数多くの企業があるなかで自社を就職先として選んでもらうためにも、寄付口座などでタッチポイントを作る取り組みをさらに強化して、他社との差別化を図りたい」(SBSロジコム)など、切実な声が聞こえた。同社ほか参加企業の中にはすでに「インターンの受け入れや、物流センターの見学講座などを行っている」(ハマキョウレックス)企業は少なくなく、「そうした施策を通じてのエントリーも増えてきており、手応えを感じている」(JPR)という声も聞かれた。

これまで経験者採用のみを行っており、「新卒採用をしたことがない」という竹内運輸工業は、2026年度に初の大卒新卒採用を目指している。「これまで業界経験のない新卒を採用することで、社内にフレッシュな風を呼び込みたい」という。しかし、「これまで中高生向けの物流センター見学会などは行ったことがあるが、大学生との接触の機会はなかった」という同社。「採用に向けて、自社を知ってもらえる機会を増やせるよう、取り組みを進めたい」と強い熱意を語った。

また、「直接採用につながらなくても、物流について学生に知ってもらう機会を増やしていくことが業界にとって重要」(PALTAC)、「メーカーはものを作って売るだけではなく、その前に調達などのプロセスもある。学生さんには、モノづくりという仕事は、そうしたサプライチェーンの中でビジネスをしているのだということをまず知ってほしい」(外資系食品メーカー)など、業界や物流自体への周知理解をまず進めていくことの重要性を挙げる意見も聞かれた。

同会には東京海洋大学も参加。同大学は東京水産大学と東京商船大学が合併して生まれた大学で、商船大学があった東京江東区の越中島キャンパスは今でも海運、海事関連の学部が置かれている。また、海事関連のシステムを学ぶ領域、物流、サプライチェーンの管理を学ぶ領域などもあり、ハード面、ソフト面両面で物流人材を輩出している大学でもある。

同大学流通情報工学部門の渡部大輔教授によると、かつては同部門の卒業生の4-5割は陸送を中心とした物流企業や荷主などを中心に、物流関連への就職があったというが、現在は「2割が物流企業、2-3割がIT企業、残りは他業種の企業に就職している」というのが実態だという。物流に関する高いスキルを持っていても、他業種に流れていってしまっている現状を踏まえ、業界を上げて「物流」に人材を呼び込む施策が求められているのではないだろうか。

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com