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自動配送ロボ、中速化で地域物流補完へ

2026年5月19日 (火)

行政・団体経済産業省は19日、「自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会」の第11回会合を開いた。2023年4月の改正道路交通法施行で低速・小型ロボットの公道走行が制度化された後、議論はより配送能力を高めた中速・小型、中速・中型ロボットの社会実装へと進んでいる。今回の会合では、買物困難者対策、車道走行と歩道との切り替え、複数台遠隔監視、走行用地図、地域合意、採算性が論点となった。自動配送ロボットの当面の実装は、一般宅配を丸ごと置き換える段階にはないが、商業施設周辺、住宅団地、中山間地など運行領域を絞った地域物流の補完用途から進む。(編集長・赤澤裕介)

中速化、配送圏を広げる条件に

協議会は19年9月の第1回以降、低速・小型ロボットの公道走行ルールづくりを軸に議論を重ね、23年4月施行の改正道交法で長さ120センチ、幅70センチ、高さ120センチ以下、最高時速6キロの「遠隔操作型小型車」が届出制で公道を走れるようになった。ロボットデリバリー協会が安全基準適合審査で合格証を交付した事業者は23年6月以降の3年間で9社に達し、首都圏ではフードデリバリーで本格実装が進み、私有地、事業所間配送、地方の実証も拡大している。

▲協議会の冒頭であいさつする経済産業省大臣官房審議官・浅井俊隆氏

今回の第11回は、低速・小型に加えて将来的に時速20キロ程度の車道走行も視野に入る中速・小型と中速・中型ロボットを論点の中心に据え、車道走行と歩道との切り替え、運行設定領域(ODD)、遠隔監視のあり方を議論した。低速・小型は遠隔操作型小型車として制度化されたが、中速化では自律走行を基本に、異常時や判断困難時に遠隔監視・操作が介入する運用設計が焦点となる。

19日の議題には、PwCコンサルティング(東京都千代田区)の社会受容性調査、トヨタ・コニック・プロ(中央区)、パナソニックホールディングス(HD)、楽天グループの買物困難者対策物流効率化実証、奈良県宇陀市の中速・中型ロボット実装に向けた取り組み、ロボットデリバリー協会の活動報告、NTTドコモビジネス(千代田区)の自律走行ロボット用地図アーキテクチャー設計書が並んだ。今回は、機体や走行技術に加えて、自治体連携、運用ルール、走行用地図の整備が議題に含まれた。3事業者の実証は、買物困難者対策とラストマイル配送の省人化・効率化を同時に狙うもので、自動配送ロボットは福祉政策と物流政策の双方の対象となっている。

中速化は配送効率と商圏範囲を大きく変える。パナソニックHDは藤沢SST(サステナブル・スマートタウン)で、原付区分の保安基準緩和を受けた最大時速9キロの中速・小型ロボットを使い、走行距離500メートルほどの配送で配達時間を低速・小型比50%短縮した。稼働時間を9-21時、1配送1個、置き配・マンション注文なしと置いた机上試算では、時速20キロ対応時に1台あたりの小荷物配送件数が11件から38件へ、サービス効率は3倍程度に高まる。商圏半径も時速6キロで1キロ、9キロで2キロ、20キロで3-4キロに広がり、人手で担う配送を代替できる割合は5%から30-40%まで上がる。

▲藤沢SSTでの実証ルート(クリックで拡大、出所:パナソニックホールディングス)

楽天グループの東京都中央区晴海サービスは24年11月6日に提供を始め、26年2月末時点でロボット10台、配送料100円、届け先188地点、対応店舗26店舗のサービスとして運用している。米アヴライド製の中速・小型機(積載容量54リットル)の最高速度を時速6キロから8キロに引き上げ、26年3月26-27日に晴海1-5丁目の片道1キロほどの区間で公道評価を実施した。楽天によると、その評価で平均配送時間が15%程度短くなり、配送時間上限を25分に置く店舗の届け先数が10%程度増えた。中速・小型を道路運送車両法上の軽自動車区分で公道走行させたのは今回が初めての試みだったと説明した。現状は遠隔監視者1人がロボット1台を見る1対1運用に保安要員を伴う方式で、中長期では車道で最高時速20キロ、歩道で最高時速10キロに切り替えながら全エリア・全時間帯で走らせ、1対多運用、保安要員なしを目指す。

▲楽天グループの自律配送ロボット(出所:楽天グループ)

トヨタ・コニック・プロは岡山県勝央町吉野地区どんどん市場で、生活道路を通行止めにし往復1600メートルほどを最大時速8キロで自律走行させた。中型機体の最大積載量は200キロ規模で、過疎地で配送容量を確保する設計だ。生活道路を通行止めにした条件下の実証であり、一般交通と混在する常時運用とは段階が異なる。

▲生活道路を通行止めにして行った往復1.6キロの自律走行実証(クリックで拡大、出所:トヨタ・コニック・プロ)

中速化は配送圏を広げる一方、交通参加者としての責任を重くする。速度差、追い越し、停止時の扱い、歩道と車道の切り替え、車道での二段階右折など、低速・小型では相対的に目立ちにくかった論点が議論の対象に加わる。中速・中型については、低速・小型と異なる安全議論が要るとの声も協議会で出ている。緊急停止は、低速・小型なら車体の停止ボタンで対応できるが、中速・中型は車道で速度も高く、同じ方式は現実的ではない。

社会受容性の面では、PwCコンサルティングが日本全国400人、実証地域の都心部・地方部各200人を対象に800人規模(回収874件)のアンケートを実施した。自動配送ロボットの認知度は全国で4割ほど、実証地域では7割程度に達し、実物を見た経験は全国1割ほど、実証地域で5割ほどに広がっている。地域での走行を歓迎する回答は実証地域外で5割程度、実証地域で6割強にとどまる一方、配送ロボットを知っている層では8割ほどに上がる。CG映像を踏まえた安心感も全体で3割程度、認知層では5割程度まで上がる。

制度面のヒアリングでは、中速・小型は原付や電動キックボード、中速・中型はミニカーのルールをベースに自動運転の要素を加味する整理が出た。事故時責任については、製造者よりも運行主体を主たる責任主体とみる整理が現実的との見方も出た。自賠法の枠組みに組み込む可能性も論点となった。都市交通の観点では、26年に生活道路の法定速度が時速30キロに引き下げられる動きを踏まえ、配送ロボットの運用は時速20キロ未満を目安とする方向となった。日本の道路の7割ほどが生活道路にあたる。

宅配単体の赤字、地域で束ねる前提に

▲クレヴォンの中速・中型配送ロボット(出所:宇陀市)

ここでの補完は、宅配便の全域配送を置き換えるものではないが、店舗、拠点、住宅、公共施設を結ぶ短距離・定常の配送を、地域交通や買物支援、見守りと組み合わせて維持する設計を指す。買物困難者対策の事例として取り上げられた奈良県宇陀市は、人口2万5829人、65歳以上比率44.4%の中山間自治体で、25年9月1日に「宇陀市中速中型自動配送ロボット実装共創会議」を設置した。経済産業省、近畿経済産業局、奈良県、ロボットデリバリー協会、奈良工業高等専門学校、出前館、保険会社、地元運送事業者など16の企業・団体が加わる。エストニアのクレヴォン(現インディゴ・テクノロジーズ)が開発した中速・中型機「CLEVON1」の導入を見通し、25年度に機体調達と技術・法規制の事前検討、26年度に国内法規制との調整と走行トライアル、27年度に非公道での実証、28年度の公道実証を目標に据える。

トヨタ・コニック・プロが勝央町実証で示した試算では、宅配需要は446世帯、平均単価2000円ほど、月間売上100万円規模に対し、想定粗利率は25%で粗利25万円ほどにとどまり、想定固定費50万円ほどが発生するため、宅配需要の単体では赤字となる。同社は総括で、自治体がハブとなって単体事業に閉じず公共性を含めて束ねること▽地域の事業者、住民が運用に関与できる仕組み▽技術は完成形を前提とせず実環境で走らせながら成熟させること▽不備や未成熟さを許容して共に育てる地域の受容性──の4点を成立条件として挙げた。

▲どんどん市場の商圏において宅配需要だけでは事業が成立しない(クリックで拡大、出所:トヨタ・コニック・プロ)

採算は、走行速度に加え、店舗側のピッキング、積み込み、受け渡し、利用者がマンション前で受け取る手間の累計で決まる。ロボットが移動する時間以外の工程が固定費として残る。ロボット本体、遠隔監視、保険、走行用地図、通信、メンテナンス、配送拠点、荷物受け渡し設備までを含めた総コストを誰が負担するかが事業設計の論点となる。事務局は、地方物流維持のためにロボットが提供できる価値として、道路環境、荷物の内容、配送先に応じた他の配送手段との使い分け、充電スポット完備の物流拠点、自動積み卸し機器、データシェア、配送ルート最適化を挙げており、自治体、地域スーパーマーケット、宅配事業者、EC(電子商取引)事業者、医療・福祉が費用を分担する地域インフラ型の運用設計が想定される。

複数台運用は、ロボットデリバリー協会が遠隔監視者1人で4台を常時目視監視する1対4運用を進めている。24-25年に10台同時運行実証が行われ、同時監視可能数の拡大に向けた検討が進む。協会内では、目視監視なしの1対多運用に向けて、操作可能台数の増加、介入時の他機体の運行継続、目視監視の必要性検証を続けている。事故時の情報提供を受けて安全基準とガイドラインを見直す事故情報収集スキームの運用開始も見通す。国際標準化ではIEC(国際電気標準会議)で自動配送ロボットの安全基準開発が最終承認に向けた投票ステージに近づく。保安要員を伴う運用が続く限り省人化効果は限定的で、目視監視なしの1対多運用を実現できるかが、社会実装の進み方を左右する。

▲遠隔操作型小型車の複数台運用のイメージ(クリックで拡大、出所:ロボットデリバリー協会)

走行用地図も地域展開の費用を左右する。NTTドコモビジネスは19日、自律走行ロボット用地図アーキテクチャー設計書(25年度検討版)を提示した。同社は、自律走行ロボットに必要な地図を社会システムとして整備する考え方を打ち出し、地図データの収集、更新、配信を協調領域と競争領域に切り分けた。運行禁止エリア、信号機の位置・状況、設備の所在・状態、道路工事、気象などの情報を継続的に更新できなければ、地域ごとに初期整備費が膨らみ、ロボット配送の横展開は進みにくい。

26年3月31日に閣議決定された総合物流施策大綱(26年度-30年度)は、人口減少と少子高齢化で配送維持が危ぶまれる地域の新たな輸送手段として、配送能力を高めた中速・中型と中速・小型ロボットの実用化に向けた実証実験、安全性検証、走行ルール整理を求める。私有地を含めたラストマイル配送の効率化に資するユースケースの創出も促す。事務局は19日、自由討議の論点として、中速・中型、中速・小型ロボットの社会実装に向け検討すべきこと▽遠隔操作型小型車の社会実装に向けた採算性向上、市場インパクト積算、社会受容性、安全性、ユースケース拡大、海外モデルの検証▽物流活用に必要なロボットの仕様、運用、拠点──の3点を提示した。

社会実装には、機体の速度向上に加えて、保安要員なしの運用、遠隔監視、事故時の責任関係、店舗側の作業、走行用地図、地域合意、費用負担の一体設計が前提となる。速度向上が配送圏を広げる効果は確かだが、保安要員を伴う運用が続く限り省人化効果は限定的で、宅配需要単体では採算も合いにくい。実装は、自治体や地域事業者が費用負担、運行責任、店舗作業、地図整備、地域合意を束ねられる場所から進む。当面の主たる領域は、一般宅配の全面代替には至っていないが、地域物流を維持する補完用途にある。

(出所:トヨタ・コニック・プロ)

◆ この記事をより深く理解するために ◆

「NEDO、直近3年を自動配送ロボの集中的実証期間に」(25年2月)
今回の協議会で中速・中型ロボットを論点の中心に据える前提となった、社会実装検討WGの取りまとめ。本記事の制度設計の議論軸はこのロードマップの延長線上にある。

「川重、院内配送ロボ運用開始」(26年4月)
病院構内など走行可能区域を絞った定常運用の典型例。地域物流補完としてのロボット配送の現実的な利用イメージを示す。

「三井不、自動配送ロボ導入でアウトレット内物流刷新」(25年6月)
商業施設構内での自動配送ロボット活用事例。買物困難者対策と並ぶ、限定エリア実装の代表的なユースケース。

「ラストマイル配送ロボの世界市場、31年に2倍規模」(25年11月)
海外を含めた中速・中型化、都市・中山間地向け展開の市場動向。日本の議論を国際比較で位置付ける材料。

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