イベントLOGISTICS TODAYとGOドライブ(東京都千代田区)は19日、「事故は防げる。物流『安全文化』その再生と定着 〜『安全』を『掛け声』から『仕組み』へ変えた、逃げ道のない改革の全貌〜」を開催した。
本イベントは、グループ会社である関東西部運輸が2014年に死亡事故を起こし、19年に事業許可取り消し処分を受けるという、どん底の危機から劇的な安全改革を成し遂げた西部運輸(広島県福山市)の事例を軸に、テクノロジーとアナログな取り組みを融合させた「科学的な安全管理」のあり方を提示するものとなった。

イベントの冒頭、LOGISTICS TODAYの鶴岡昇平記者が登壇し、トラック運送事業者にとって「安全運転」が単なる業務目標ではなく、企業の存続や経営基盤に直結する最優先課題であることを問題提起した。
鶴岡記者はまず、今回のメイン事例となる西部運輸の概要を紹介。これほどの巨大組織でありながら、同社が21年の77件から25年の41件へと、わずか4年間で事故件数をほぼ半減させるという劇的な成果を上げた事実を提示した。
この驚異的な事故削減を可能にしたのが、デジタコを用いた改善基準告示の監視といった徹底的な法令順守、過去の事故原因から導き出した独自の「SSEIBU RULE」(西部ルール)の策定、そしてYouTube配信による「Web安全講習会」という3つの軸であると説明。安全対策やコンプライアンスの順守を徹底することは、コストや「守り」の業務ではなく、荷主からの信頼を獲得し、物流危機を乗り越えるための「最大の営業ツールであり、攻めの生存戦略」であると語り、本編セッションへとつなげた。

<左から>LOGISTICS TODAY編集部の赤澤裕介取締役社長兼編集長、西部運輸取締役・安全指導部長の占部恵司氏
続くパートでは、LOGISTICS TODAY編集部の赤澤裕介編集長が聞き手を務めた西部運輸への現地取材・対談映像が上映された。登壇した西部運輸安全指導部の占部恵司取締役部長は、かつての行政処分という苦い経験を「怪我の功名」と表現した。
「法律を守らなければ、会社がなくなる。自分たちの生活の場が失われる」
この理屈ではない強烈な危機感が全従業員に植え付けられたことで、同社はコンプライアンスを単なる対応コストではなく、企業が生き残るための「生存戦略」(存続条件)へと再定義した。
その意識変革は具体的な経営成果にも結実している。労働時間規制が強化された「2024年問題」を逆手に取り、ドライバーが中間地点で交替する「ドッキング便」(中継輸送)のネットワークを構築。法令順守を徹底する姿勢がコンプライアンスリスクに敏感な荷主から高く評価され、長距離輸送の受注増加という形で「安全が最大の営業ツールになる」ことを数字で証明した。結果として、グループ全体1600台の車両を保有しながら、21年の77件から25年には41件へと事故件数をおよそ5割削減するという驚異的な成果を叩き出した。
西部運輸の安全文化を支える核が、過去の事故原因を徹底追求して具体化された独自の運転ルール「SEIBU RULE」(西部ルール)である。
同ルールでは具体的な行動としてまず停車時の輪止めの徹底が義務付けられており、抜き打ちチェックによる実施率は95.6%に達しているものの、100%未達を課題と捉えて指導書発行による是正措置を運用している。
また、車間距離については前車が通過してから3秒後に自車が通過する間隔の確保を徹底する「0-1-2-3」ルールを設け、ウインカー運用の強化としては法令基準より厳しい「進路変更3秒前の合図開始」や「8回以上点灯」を社内基準として適用している。
また、コロナ禍を契機に集合型からYouTube配信へと切り替えた「Web安全講習会」は、受講実績が従業員数を超えるほどの定着を見せている。場所や時間を選ばず休日出勤の負担をゼロにする利便性だけでなく、動画視聴後のアンケートで具体的な意見・感想のテキスト入力を必須とすることで、「自分の頭で具体的に考えさせる」教育イノベーションを実現した。
さらに同社は、自社のトラックがルール違反をしていたら直接連絡してほしいと社会へコミットメントを宣言している。一般からの通報をリスクではなく教育の機会と捉える「逃げない姿勢」が、ドライバーに看板を背負うプロとしての健全な緊張感を与えている。

▲GOドライブ取締役ビジネス本部本部長の武田浩介氏
後半のソリューションセッションでは、AIドラレコ分野の第一人者であるGOドライブ取締役ビジネス本部本部長の武田浩介氏が登壇。同社が提供する次世代AIドラレコ「DriveChart」(ドライブチャート)を用いた、根性論に頼らない論理的な事故削減ステップが解説された。
ドライブチャートは、外向きカメラと内向きカメラに加え、AI画像処理技術を搭載。ながら運転(スマホ注視)、脇見・居眠り、車間距離不足、一時停止不履行といった、事故の前段階にある「頻発するリスク行動」を自動で検知・可視化する。顔認証技術によりICカード不要で運転者を特定し、その場で音声アラートを鳴らしてリスク運転をリアルタイムに抑止する。
武田氏は「事故は希少事象であるため結果だけを見ていてはPDCAサイクルが回りにくい。事故上流のリスク行動を定量管理することが重要」と指摘。週次のサマリーメールを活用した定期振り返りや、同社カスタマーサクセスによる運用ルールの策定支援が、現場への確実な定着を後押ししているとした。

▲モデレーターを務めたLOGISTICS TODAYの鶴岡昇平記者
セッションでは、安全指導における実務的な課題についても激しい議論が交わされた。特に多くの事業者が頭を悩ませる「若手運行管理者からベテランドライバーへの指導」や「ベテラン層の慢心」への対策について、GOドライブの武田氏は経営陣の姿勢と具体的な指導の仕組み化の重要性を説いた。
まず経営トップの姿勢について、武田氏は「管理者や社長に怒られるからやるのではなく、ドライバーが事故に遭わないよう、本人の生命や健康を一番に考えて言っているという強いメッセージを経営層からちゃんと発信していただくことが非常に大事」と指摘。
その上で、現場での公平なルール適用について「何か一つ悪い動画を見つけて吊るし上げるように怒るのではない。一定の基準に達したら個別の面談を行うといった明確な統一ルールを敷くべき。そうすることで、現場の若い運行管理者も個人攻撃を避けた客観的な対話が可能になる」と語った。

▲西部運輸は2021年比で事故件数をおよそ半分に削減(出所:西部運輸)
さらに、運転行動の評価方法については「指導が罰することを前提とした減点方式になりがちだが、スコア化によって良い運転を可視化し、表彰する文化を築くことが有効」と指摘。また、「北風と太陽」の寓話を引いて、「細かい指導で縛る『北風』ではなく、褒めて自発性を促す『太陽』のアプローチを採ることで、社内の6-7割が正しい運転をするようになれば、同調圧力(集団規範)が良い方向に働き、ベテラン層の行動変容すら自然に促すことができる」と論理的なアプローチを提示した。
実際に西部運輸の現場でも、仲間の実際の事故映像を講習に活用したところ、ドライバー側から「自分事として捉えられる。もっと事故映像を見たい」という内発的なニーズが発生するまでの変化が起きているという。
事故削減で浮いた保険料を従業員の福利厚生や安全機器へ再投資する業界の好循環事例なども紹介され、安全対策が単なる「守り」のコストではなく、採用力強化や企業価値向上に直結する「攻め」の経営課題であるという認識が改めて共有された。
最後に、本誌の鶴岡記者が「今年も『Safety Driving Award 2026』のエントリーがまもなくスタート。本誌でもこの取り組みに継続的に注目し、詳細を発信していくので、ぜひ興味・関心のある方は参加を」と力強く呼びかけ、客観的な評価指標であるアワードへの挑戦が企業のさらなる安全文化を強固にする好機であることを提示し、熱気あふれるイベントは幕を閉じた。
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