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AIは人を助ける、データが導く物流改革の“現実解”

2025年11月7日 (金)

イベント物流業界におけるAI活用の実態と課題が、7日に開催した弊社主催の「LOGI NEXT 25」内のセッション「物流×AIの最前線──200社の実態調査から見えた、改革のヒント」で明らかになった。登壇したHacobuの坂田優氏は「個人レベルではAI活用を実感しているが、企業レベルでの実装が追いついていない」と指摘した。

▲左から赤澤氏、北川氏、坂田氏

同社が実施したアンケート調査には268名、232社が回答した。内訳は物流事業者が45%、メーカーが27%。会社として生成AIの利用を正式に許可している企業は、本社で46%、現場では33%にとどまる。一方、個人レベルでは「ほぼ毎日利用」「週に数回程度利用」を合わせると半数を超えた。

坂田氏は米国MITの調査結果を引用し「95%の企業はAI投資をしても成果が出ていない。一方で5%の企業はかなりの規模で価値を創出している」と二極化の実態を説明した。さらに「企業のAI予算の約50%は営業やマーケティングに投資されているが、最も高いROIを出しているのはバックオフィス系の仕事の自動化だ」と述べた。

同社は物流現場へのAI導入を加速するため、2025年6月にシステムインテグレーションとAI導入支援の事業部を立ち上げた。「MUVO AIラボ」では、データ分析エージェントや物流法AI先生など、無料で使えるAI機能を提供している。データ分析エージェントは12カ月分のデータを自動で分析し、改善につながる方向性を示す仕組みだ。

利用者からは「1時間かかっていた作業が15分で終わるようになった」「自分では気づけなかった改善点を提示してくれた」との声が寄せられた。坂田氏は「物流現場の方々にAIの恩恵を実感していただくことを意識している」と強調した。

ユーザー企業として登壇したスギ薬局の北川信之氏は、MUVO導入の効果を語った。「導入前は取引先の待機車両が非常に多く、2時間以上の待機は当たり前だった。しかも実態を検証できず、ただ謝るだけだった」。導入後は「30分以上の待機はほぼなくなった」と劇的な改善を報告した。

北川氏は物流データ活用の課題にも言及した。「空きスペースのあるトラックが2台あっても、1台にまとめるのは単純な話ではない。物流会社から見れば、2台走らせる方が売り上げになる。可視化の後どうしていくかという壁はまだ取り払われていない」。

坂田氏はAI活用成功の要因として3点を挙げた。「経営層からの明確な方針共有」「物流知見を持つ外部パートナーとの協業」「社内でChatGPTなどを個人で積極的に活用している人を推進役として抜擢すること」だ。

アンケートでは、AI活用に関心がある業務として「配車の自動化、最適化」が最も多く選ばれた。同社は過去のデータに基づき現実的な配車案を提示するAI配車支援機能を開発した。坂田氏は「AIによる最適なルートや距離の計算ではなく、過去のデータから現実的な提案をしてくれる」と説明した。

坂田氏は「AIは人を助けるものだ。現場の方がドライバーと一緒に楽しく働けるよう、AIがどう支援していくかに注力したい」と今後の展望を語った。

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