ロジスティクス日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は25日、第15回定時総会を開催し、2025年度の活動方針と事業計画を明らかにした。24年5月に改正物流関連2法が公布され、25年1月には政令が施行されるなど、物流業界が大きな変革期を迎えるなか、25年度は「物流統括管理者連携推進会議」(J-CLOP)の展開を核に、業界の「改正物流関連2法」への対応を強力に支援していく。併せて、「人的資本経営」(HRM)の推進と「LX」(ロジスティクス・トランスフォーメーション)による全体最適の実現を2本の柱とし、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速させる。

▲JILSの第15回定時総会の様子
25年度活動方針の3本柱、「J-CLOP」を核に新法対応へ
総会で示された25年度の活動方針の最大の柱は、「持続可能な社会の実現」を掲げたJ-CLOPの本格展開だ。改正物流関連2法への対応という喫緊の課題に対し、産・学・官が連携して物流統括管理者(CLO)の担うべき役割を整理し、課題解決に向けた方向性を議論するほか、産業界や行政に対して情報発信を行う。全国各地でJ-CLOPの開催に向けた検討も継続する。また、物流業界の構造的な課題である多重下請け問題についても、関連団体と連携しながら対応策を検討するとしている。
第2の柱は「HRMの推進と企業価値向上」だ。23年度から有価証券報告書での人的資本情報の記載が義務化されたことを受け、JILSは人的資本経営推進委員会を設置。25年度は、これまでの活動を発展させ、物流企業向けの開示項目ガイドラインの検討・作成を進め、各社の「人的資本経営」への対応を具体的に支援する。さらに、これまで物流DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の能力要件などをまとめてきたが、今後は経営層であるCLOのあるべき姿の検討や、CLOに求められる役割・能力要件をまとめ、人材育成メニューの開発にも着手する。
第3の柱は「LXによる全体最適の実現、標準化の推進」。AI(人工知能)技術などの進化を背景に、テクノロジーを活用したデータドリブンなロジスティクスを構築し、経営と物流戦略を連携させ、全体最適を実現することを目指す。企業内・企業間のテクノロジー活用には、ハード・ソフトだけでなく、用語や業務プロセスを含む広義の標準化が不可欠として、標準化活動にも注力する。
24年度の振り返り、24年問題対応と組織基盤強化

▲JILSの大橋徹二会長
24年度の活動報告では、大橋徹二会長が「トラックドライバーの働き方改革関連法の施行に伴う24年問題があったが、会員の努力や行政の支援により、目に見える大きな混乱はなかった」と振り返った。JILSとしても、この課題解決に向け、CLOが定期的に意見交換できるJ-CLOPを立ち上げるなど、経営視点での対応を進めてきた。
組織基盤の強化も進み、法人会員数は過去最高の1084社に到達。同業・異業種交流や情報収集を目的とした入会が増加傾向にあるという。また、24年9月に開催した「国際物流総合展2024 Logis-Tech Tokyo 2024」も過去最高の出展者数と来場者数を記録し、盛況のうちに終了したことが報告された。
JILSは、予測困難な外部環境や国内の構造的な課題が山積するなか、今後も物流・ロジスティクスの重要性を産業界に広く普及させ、経営課題として取り組むことを支援していく方針だ。25年度は、国際物流総合展「INNOVATION EXPO」(9月、東京ビッグサイト)や「ロジスティクスソリューションフェア2026」(26年2月、同)の開催も予定しており、業界全体の課題解決と発展に貢献していく。
経産省・江澤氏「フィジカルインターネット実現へ連携を」

▲経済産業省の江澤正名氏
総会後の懇親会で挨拶した経済産業省の江澤正名氏(商務・サービス政策統括調整官)は、物流への注目度が高まっている現状に言及。改正物流関連2法の施行により、荷主に対して「物流効率化に向けた取り組みが義務化」され、特定荷主には「計画策定が求められる」と、荷主側の責務が大きくなっている点を強調した。
その上で、「複数企業による連携と物流の効率化を支援するため、令和6年度補正予算も確保した。国交省とも連携し、ロジスティクス全体の効率化を目指す」と述べ、政府の支援体制をアピール。さらに、中長期的な視点として「2040年を目標にフィジカルインターネットの実現を目指し、パッケージ物流の効率化と最適化を進める」との考えを示し、JILS会員企業の積極的な参画と連携に期待を寄せた。
国交省・木村氏「適正原価の実現には荷主・物流事業者の協力が不可欠」

▲国土交通省の木村大氏
続いて登壇した国土交通省の木村大氏(大臣官房審議官、物流・自動車局担当)は、「2024年問題は大きなトラブルなく終わったが、2030年には輸送力が3分の1不足するという危機感は変わらない」と警鐘を鳴らした。
政府の対策として、物流革新に向けた政策パッケージに加え、新たに成立した「トラック適正化法(改正下請法・受託中小企業振興法など)」に言及。「適正な原価の設定や、多重下請け構造の是正が進められる」と法改正の意義を説明した。
木村氏は、価格転嫁の重要性について「トラックだけでなく、倉庫や物流全般のコストが上がっており、賃上げのためにも価格転嫁を余儀なくされている」と指摘 。その上で、「単価が上がる分、これまで通り積載率4割でトラックを出していいのか。荷主の皆さん同士がまず連携し、トラックを無駄に使わない努力が必要だ。単価は上がっても、物流事業者との連携による効率化で、トータルコストは上がらないように努力していく。こうした取り組みにおいて、物流統括管理者の役割がますます重要になる」と述べ、荷主と物流事業者が協力して生産性向上に取り組むことの重要性を強く訴えた。
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