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デジタル・AI活用から現場の歩行削減まで42事例が成果競う、東京理科大に特別賞

JILS物流改善賞、最優秀賞にミスミとロジスティード

2025年6月25日 (水)

調査・データ日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は25日、「2025年度物流改善賞」の受賞事例を発表した。応募の中から選ばれた42件の改善事例の中から、最高位の「最優秀物流改善賞」には、デジタルピッキングカートの活用で大幅な省人化を達成したミスミ(物流業務部門)と、IoT(モノのインターネット)・AI(人工知能)技術でドライバーの安全運行を見える化したロジスティード(物流管理部門)の2社が選ばれた。

▲JILS・大橋徹二会長(左)から表彰状を受け取るロジスティードの面々

最優秀物流改善賞:ミスミ、ロジスティード

最優秀物流改善賞(物流業務部門)に輝いたミスミの事例は「画像・計量DPC(デジタルピッキングカート)の導入・拡大による品質・効率向上」。同社は40万点を超える膨大な在庫品を扱い、250人以上のピッキング作業員が従事する大規模物流センターにおいて、デジタル技術を活用したオペレーションの抜本的見直しに着手した。画像認識と計量機能を搭載したDPCを導入・拡大することで、人とモノの連携を最適化し、センターの使命である「確実短納期」を維持しながら、過去最大となる40人超の省人化という劇的な成果を創出した点が審査員から高く評価された。

▲最優秀物流改善賞(物流業務部門)を受賞したミスミ

物流管理部門で最優秀賞に選ばれたロジスティードの事例は「IoT×AIテクノロジーでドライバーの体調と運行を見える化し、ヒヤリハットを削減」。運輸業界で深刻化するドライバーの心身の健康状態に起因する事故への対策として、産学官連携でドライバーの健康状態や疲労、危険運転をリアルタイムに把握できるソリューションを研究開発し、全社に導入。これにより、重大事故につながる可能性のあるヒヤリハットを94%削減するという顕著な成果を上げた。テクノロジーを活用して、安全という物流の根幹を支える先進的な取り組みとして、高い評価を得た。

▲最優秀物流改善賞(物流管理部門)を受賞したロジスティード

優秀物流改善賞:アイシン、サッポロ、資生堂、北海道ロジサービス

優秀物流改善賞には5件の優れた事例が選ばれた。

アイシン・ロジテクサービスは「歩行低減レイアウト導入による空箱仕分け工程の少人化」で受賞。限られた狭いエリアでの「種まき方式」の作業による歩行距離や動線の非効率さを、コンベヤーを活用した新レイアウトで改善。作業者同士の動線衝突をなくし、1日あたり6人の省人化を実現した。

サッポログループ物流は、「サステナブルな物流改革による効率化と運用体制の構築」が評価された。24年問題への対応として、分散していた拠点を集約し、業務プロセスを見直し。ボトルネック工程の能力向上や動線のムダを排除するとともに、多様な従業員が働きやすい環境を構築した。

資生堂ジャパンは2件でダブル受賞。一つは「取引先への納品における1梱包あたりの商品入数拡大に向けた取り組み」。取引先の協力を得てまとめ発注を促すなどの施策により、主要な対象企業で2割強、全体でも1割強の梱包入数を向上させ、配送効率改善と物流課題解消に貢献した。もう一つは「店頭検品・伝票電子化アプリKakehashi」の開発。店舗での紙伝票による検品作業の非効率さと、伝票発行・仕分け作業の負荷を、スマートフォンアプリによるDXで同時に解決した。

▲2件の取り組みで優秀物流改善賞を受賞した資生堂ジャパン

北海道ロジサービスは、「ロボット×AI×現場力~革新的シッパー自動組立システムによる作業効率と働き方改革~」で受賞。冷凍倉庫新設に伴い急増した保冷シッパー組立作業の負荷を軽減するため、多関節ロボットと画像認識技術で自動化システムを共同開発。1時間あたり680箱の目標を達成し、3人分の省人化と作業負荷4分の1を実現した。

実行委員特別賞:東京理科大学

過去10年間で初めて優秀事例に選出された企業・団体の中から特に優れた事例に贈られる実行委員特別賞は、東京理科大学が受賞した。受賞テーマは「心拍を用いたピッカーの身体的・精神的負荷の推定 ~倉庫作業でのワークエンゲージメント向上を目指して~」。物流現場を見学した学生たちから、「ロボット導入で、かえってピッカーの負荷が増加しているのでは」という声が上がったことをきっかけに活動を開始。学生が考える理想の職場設計を目指し、作業負荷抑制によるワークエンゲージメント向上に挑戦したユニークな研究が高く評価された。

▲実行委員特別賞を受賞した東京理科大学

今回の受賞事例は、AIやロボティクスといった先端技術を駆使したDX事例から、現場の知恵と工夫による地道なプロセス改善まで多岐にわたった。いずれも、労働力不足やコスト上昇、安全確保といった物流業界が直面する喫緊の課題に対し、具体的な解決策と確かな成果を示しており、多くの事業者にとって貴重な示唆となるだろう。

JILS「J-CLOP」で荷主支援、人的資本経営・LXも

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