荷主新宿高島屋(東京都渋谷区)は5日、東日本旅客鉄道(JR東日本)、茨城県、秋田県と連携し、「はこビュン」輸送による朝どれ青果物の即日販売イベントを開催した。これは鉄道の速達性を生かし、茨城県産ぶどうと秋田県産えだまめをその日のうちに都内で販売するもので、JR東日本が展開する貨客混載サービス「はこビュン」を活用した取り組みとして5日と6日の2日間にわたって開催される。
新宿高島屋において、はこビュンと連携した取り組みは今回が初めての試み。「コロナが落ち着きを見せ始めたタイミングで、都道府県各地とのパートナーシップを強化し、隠れた地元の特産品を紹介していこうとしたのが、そもそものきっかけ」と高島屋新宿店の販売第5部次長、桑原慎太郎マネージャーはいう。東京では普段手に入らない、鮮度と独自性にこだわった商品を届けるための企画・提案に力を入れたところ、各行政側からも積極的なアイデアが寄せられたという。今回の茨城県、秋田県との取り組みも、今が旬で県として積極的に売り込みたいものを話し合い、朝どれ野菜や果物の直売という形でもっとも魅力を伝えられるサービスとして、はこビュンと連携した」(桑原氏)という。
JR東日本も、はこビュンを通じて地域の魅力を発信していきたいとしており、マーケティング本部まちづくり部門 列車荷物輸送・SCM主務の渥美雄也氏は、「グループ内だけでなく、今回のような外部の企業と連携することで、サービス活用の範囲を広げたい」と語る。今回は秋田駅からの輸送のほか、茨城県の勝田駅からの輸送というトラックとの競合も想定される運用も取り入れたが、「朝どりの青果物を、小口で迅速に届けられる付加価値を感じてもらえる機会」(渥美氏)とする。

▲左からJR東日本・渥美氏、高島屋・桑原氏
新宿高島屋では今後も、「現地に行かなければ食べられない、現地に行っても食べられないような、感動できる購買体験を提供していく」(桑原氏)姿勢である。5日のイベントは台風15号の影響を受けての予定変更などもあったが、「今後もはこビュンの利点を生かせる、付加価値のある商品を紹介していきたい。秋田・茨城に限らず連携する地域を広げるとともに、とうもろこしやアスパラガス、いちごなど季節ごとの優れた生産物を、いちばんおいしい状態で味わう機会を増やしたい」(桑原氏)と語る。
イベントでは、午前に収穫された茨城県常陸太田市産のぶどう「常陸青龍」20キロが、常磐線の特急で届けられた。茨城県の担当者は「常陸太田市でのみ栽培されている希少品種の常陸青龍を東京で紹介するのは初めて。まずは知ってもらい味わってもらうことから、常陸太田にも足を運んでもらいたい」と語る。また、秋田県産の朝どれえだまめ30キロは、秋田新幹線で秋田駅から輸送。秋田県の担当者は「小口でも自慢の青果のおいしさを紹介できることは、地元の生産者にとっても励みとなる仕組みであり、次世代に農業をつなげていくきっかけとなれば」という。
JR東日本は、今回のような小口で付加価値ある輸送サービス提案に加えて、大口輸送・定期輸送による収益拡大を目指し、E3系新幹線の荷物輸送専用車両への改造などインフラ整備を進めている。現状は、その速達性での評価が高い輸送サービスだが、今後は環境貢献などへの企業取り組みが促されることで、新たな顧客獲得にも期待を寄せ、「JR東日本グループ全体で年間100億円規模の収益を目指し、グループ間連携なども模索していく」(渥美氏)

▲売り場にはJR新宿駅公式キャラクター「しんじゅくま」(奥)、常陸太田市公式キャラクター「じょうづるさん」(手前)、秋田からはなまはげも応援に駆けつけた。
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