荷主大和ハウス工業は11日、本社で記者レクチャー会を開き、2025年上期のテナント入居動向と物流市場の現状について発表した。
同社が保有するBTS(ビルド・トゥ・スーツ)物流施設のテナント入居実績は、契約件数と面積ともに3大都市圏が6割を占めた。同期最大の契約は、アパレル関係の会社がDPL松戸で9500坪という大型床面積を借用した案件となった。地方圏では半導体関連荷物で6000坪、医薬品卸会社で5500坪の大型契約が成立し、従来業種の顧客移転が目立った。
半導体大手TSMC(台湾)の進出により九州地域での物流拠点整備が活発化する現状を受け、物流需要の総量増加を実感しているとの見解を発表。こうした半導体市場について同社ビジネス・ソリューション本部事業統括部不動産流動化推進室担当次長の広渡政和氏は「TSMC進出により九州全体で非常に幅広く、その企業だけでなく、さまざまな会社が設備投資などをした結果として、この全体の総量が増えているという感覚を持っている。熊本は非常に力強いエリアで、佐賀の都市や福岡界隈も全国的に見て非常に顕著なエリアだ」と述べた。

▲(左から)ハウジング・ソリューション本部事業統括部副統括部長の角田卓也氏、ハウジング・ソリューション本部事業統括部事業推進部分譲住宅推進グループ担当次長の中岡敬典氏、ビジネス・ソリューション本部事業統括部不動産流動化推進室担当次長の広渡政和氏
首都圏物流施設の空室率は10%で高止まりが続いているものの、新規需要は半期で10万坪以上の高水準を維持している。新規供給は建築費高騰の影響で今後減少する見通しで、需給バランスの改善が期待される。広渡氏は市場動向について「全般的に需給がこうした形になると、売却の方にも慎重になるお客さんが増えてくる。投資家さんの物流への見方というのは少し一時期みたいな過熱感から落ち着いてきたという印象を持っている」との見解を示した。
同社を含む各社とも建築費が高いなかでの着工は事業的に苦しい状態となり、供給は一旦落ち着きを見せる見込みだ。ただし需要が減っているわけではなく、マーケット的には安定的な状態が続いている。同社としては今後新規供給が多少絞られるなかでも、開発を停滞させず、今後入居が見込める物件を順次マーケットに供給していく方針だ。
EC(電子商取引)市場について広渡氏は「従来のリアル店舗での購入から、モバイル端末での買い物をする人が急増している。店舗の商品や店舗倉庫にあった商品がEC企業の倉庫へ移行する現象が起きていると思われる。物流施設がある程度供給されていても、市場での需要は継続的に高く、この傾向はしばらく続くだろうという印象を持っている。最近では、多くのCMを展開している外資のEC企業も登場してきており、この流れが安定的に続くことを期待している」と分析した。
工業団地分譲では、エンドユーザーの価格提示力が物流デベロッパーを上回るケースが増加している。中国地方の事例では、地価調査水準の坪30万円に対し、実際の成約価格は坪80万円に達した。近隣では坪90万円での売買事例も散見され、物流による土地価格牽引が産業系全般に波及している。
新規着工では、DPL相模原2で物流施設内に初のレンタルラボを併設する複合施設を建設中だ。延床面積7万8000平方メートルで、2025年9月着工、27年9月完成予定となっている。同施設は物流とラボの複合型として、比較的マーケットでラボ需要が認められるエリアでの新たな取り組みとなる。
川越では延床面積3万3000平方メートルのマルチテナント型物流施設「DPL川越」を25年8月に着工し、27年1月完成予定で進めている。福山では「DPL広島福山北」として延床面積3万7000平方メートルの施設を同じく8月に着工、26年10月完成を目指している。福山市長からは確かにマルチ型の倉庫は初めてとの評価を受けており、地方圏でも供給できるものはニーズが認められる限り積極的に展開していく方針だ。
同社は中古物件再生事業「ビズリブネス」も展開し、1992年竣工の川越物件を営業用倉庫に改装している。地域との連携では、DPL江東深川でテナントのビームズと協力し、800人が参加する地域イベントを開催した。流山では市と連携した防災講演会を実施し、災害時の避難拠点としての役割も担っている。
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