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編集部が見た先週(9/27-10/3)の物流ニュース雑感

2025年10月6日 (月)

ロジスティクス本誌編集部の記者たちが今週注目した物流ニュースを取り上げ、裏側の背景や今後の影響について座談会形式で語り合いました。記事本文だけでは伝えきれない現場の空気感や取材の視点を、読者と共有するのが狙いです。1週間のトピックを整理してみましょう。

日本郵便、車両停止1万3900日車も「配送網は維持」

日本郵便は全国で車両使用停止の行政処分を受け、合計で延べ1万3900日車に達する規模となった。背景には、ドライバー点呼の不適切実施など法令違反があり、これを是正するために国交省が厳しい対応を取ったもの。車両停止は業務に大きな影響を及ぼす可能性があるが、日本郵便は宅配・郵便ネットワークの維持を最優先に掲げ、代替輸送や応援体制を組むことで「配送網は崩さない」と説明した。郵便・宅配便は公共性の高いインフラであるため、社会への影響を最小化する取り組みが急務となっている。一方で、全国に広がる組織運営におけるコンプライアンス徹底や監督体制の不備が浮き彫りになり、再発防止に向けた内部統制の強化が問われる。

記者A「今週の大ネタと言えば、日本郵便の記者会見。点呼業務の不備を理由に国土交通省から受けた軽バン車両停止についての会見。軽バンの車両停止は、延べ日数1万3900日というんだからなかなかの数字だね」

記者B「9月3日の行政処分では111局が対象となったけど、9月末時点で処分の通知を受けたのは440局。社内調査では不備が確認された局は2391局あって、今後も毎週100局ペースで通知され、それがこれから2月ごろまで続くようだね」

記者C「輸配送ネットワークの維持に大きな影響はないということだから、見方によってはちょっと甘いんじゃないの?とも取れる処分だよね」

記者A「軽バンが1台しかない局は厳しいかもしれないけど、繁忙期の荷物量も全盛期に比べれば平時の1.5倍程度にとどまっているし、十分に凌げるという説明だったね」

記者B「足りない車両を補うための外部委託料の65億円という数字は前の四半期に出ていたけど、悲観的な印象は全然なかったもんね」

記者C「点呼未実施の改善のためのDX導入は20%程度と言ってたんだっけ?」

記者A「取り組み始めたのが遅かったから仕方ないのかもしれないけど、20%という数字はちょっと心許ないよねえ」

記者B「危機感がまるで感じられなかった。『ちゃんとやってます』という姿勢だけで、いつまでに何をどのくらいDX化するという締め切り感覚もあんまり感じられなかったし」

記者C「記者の質問でも、処分にメリハリがないのでは、という指摘も出てたよね」

記者A「現場で最初に問題が明るみになったのは近畿支局なんでしょ?」

記者B「現社長が当時の近畿支社長だったのに、責任を問われることなく社長に就任というのは、ちょっと違和感がある人事だよねえ」

記者C「普通の会社なら1回スキップさせたりしそうなもんだけど。粛々と順番通りに社長人事を進めるというのが、いかにも日本郵便らしいというかなんというか。総務省のお墨付きもいただいているので、この人事には問題はないと胸張ってたよね」

記者B「社長就任会見でも『点呼の検査は管理職として当たり前のこと』とまるで他人事みたいに言ってたし、ちょっと当事者意識が感じられないというのは否めないよねえ」

ロジスティード、営利6%で27年度再上場へ海外伸長

ロジスティードは2027年度に再上場を目指し、営業利益率6%の達成を掲げた。現在は米投資ファンドKKRの傘下にあるが、中期的には独立した上場会社として再度資本市場に復帰する方針だ。成長戦略の柱は海外事業の拡大であり、北米や東南アジアにおける物流ネットワーク強化、グローバル3PLサービスの拡充に力を入れる。国内市場が人口減少と需要停滞に直面するなかで、海外展開は収益源の多角化に不可欠とする。加えて、デジタル化やサステナビリティ対応への投資も進め、競争力を高める考えだ。ファンド主導の再編後にどのようなガバナンスと経営の透明性を確保できるかが、再上場に向けた最大の焦点となる。

記者A「お次のネタはロジスティード。今回、中期経営計画を公表したけれど、国内の事業基盤を固めると同時に、海外比率を50%以上に高めるというかなり明確な目標を掲げてるよね。特にアジア圏を中心に拠点を広げていくという話」

記者B「従来の国内中心の物流企業から、欧米の大手物流会社に並ぶ『グローバルスタンダード』を視野に入れた企業へとシフトしようとしているってことだね。彼らがベンチマークにしているのはDHLのような国際大手。実際、説明のなかでは『海外で勝ち残るためには海外基準を前提とした経営が必要だ』と繰り返し強調してたよね」

記者C「人材戦略でも動きが具体的で、例えばネパール人ドライバーの採用に踏み出していて、すでに面接を進めている。来年春から実際に戦力として投入するというから、日本の大手物流会社としてはかなり踏み込んだ決断だよね。国内のドライバー不足が限界に近づく中で、外国人材を本格導入する最初の事例になる可能性もある」

記者A「ただ、こうした成長戦略の裏には資本の問題があって、大株主である米投資ファンドのKKRの意向が強く影響してるね。ロジスティードは2027年度に再上場を目指すと公言しているけど、その本質はKKRにとっての出口戦略ということだよね。あくまで、投資資金を回収し利益を確定するための上場であって、上場後の経営方針や資本構成がどれだけ安定して続けられるかは、今のところちょっと未知数かな」

記者B「上場した後もKKRがロジスティードの株を持ち続けるかというとそうも思えないもんねえ。ともあれ、これまでもロジスティードは割と海外志向でやってきていて、今後もその路線で行くってことだね。国内市場が縮小していくのはどう見ても明らかなわけで、その中で海外へ打って出るのは現実的な選択だよね。むしろ日本発の物流企業が国際舞台で存在感を示すためには、やらないとどうしようもない。NIPPON EXPRESS(NX)グループが先行しているなかで、ロジスティードが第2のグローバルプレーヤーを狙うという構図」

記者C「海外に目を向けたらインドなど成長していく市場はたくさんあるからね。そこに経営資源を振り分けていくというのはグローバル物流企業としては正解なんだろうね」

記者A「先行するNXは、海外進出する日本企業にくっついていって仕事をもらいながら、現地の企業も開拓してといったことを長年続けている企業。ロジスティードがそこにどこまで追いついていけるのかに注目だね」

稼げなくなった海コン輸送、運賃交渉と多重構造の壁

コンテナ輸送を担うトラック運送業界では、収益性の低下が深刻化している。背景には燃料費や人件費の上昇に加え、海コン輸送特有の多重下請け構造が存在する。元請けと下請けの間に複数の仲介業者が入ることで運賃が目減りし、最終的に実際に輸送を担うドライバーの手元に十分な収益が残らない。運賃交渉の機運は高まりつつあるが、力関係の不均衡や業界慣行の硬直性から大きな改善には至っていない。加えて、港湾周辺の待機時間や荷役の非効率も収益を圧迫する要因だ。業界としては「標準的な運賃」の普及や取引の透明化を推し進める必要があり、構造的課題を乗り越えられるかどうかが持続可能性の鍵を握っている。

記者B「お次のネタは、東京港の海コンを輸送している運送会社の話題。東京港もご多分に漏れず、荷待ち待機はかなり深刻。慢性的な混雑に加えて、先日のシステム障害発生ではトレーラーが3時間から4時間待たされるのは当たり前で、ひどいときには10時間を超えるケースもあったとか」

記者C「システム障害もかなり大変なことになってるみたいだね。まあ、それ以前から東京港の荷待ちは問題だったわけだけど。以前も東京港の荷待ち改善を進めているという取材をしたことがあったけど、実効性は今ひとつだったみたいだねえ」

記者A「億単位の国費をつぎ込んで整備された待機場所も、わずか数日で運営が立ち行かなくなり、そのまま放置されているという話もあり、なかなか改善は難しそうだよね。どうしたって長時間の荷待ちが発生して、拘束時間が長い割に稼げないということになっちゃってる。結果として、『コンテナ輸送はやりたくない』って敬遠するドライバーが増えてるみたいだけど、それも無理はないよね」

記者C「本来、コンテナ輸送って効率的に荷物を運ぶためにやるものなわけで。それを東京港みたいに長時間の荷待ちしないと運べないとなると、なんのためにやってるの?という話だよねえ。それでしわ寄せがいくのが、多重下請け構造のなかで最末端の輸送事業者。ドライバーはたくさん走って稼ぎたいのに長々と待たされて、待機時間は報酬に反映されない。これじゃあ若手ドライバーがやりたがらないのも無理ないよね」

記者A「しかも、けん引免許を取るのに100万円くらいかかるんでしょ?なんのためにわざわざ金かけて免許を取るのかという話でしょ」

記者B「東京港自体、もうキャパオーバーなんですよね。荷役の機材も古くて非効率的だし、人員も足りてない。その辺含めてトラック協会から申し入れをしているとは聞くけど、改善されるのは5年とか10年とか先。ドライバーのなり手もいないし、何かしら手を打たないと、コンテナを使った国際物流自体がどこまで続けられるのか危ういよね」

記者C「東京湾岸は豊洲のタワマンや若洲のゴルフ場なんかもあったりするけど、その土地があるなら、少しは港湾の整備に回してのよかったというのはあるね」

記者A「人が住む場所というのも大事なんだとは思うけど、東京港をしっかり水深取った港湾にして、経済のために使うというようなことをしてもよかったと思うだけどねえ。海運政策でそういうことができなかったから、シンガポールや釜山に負けちゃったというのがあるんだろうけど」

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