調査・データ全日本トラック協会はこのほど、交通事故総合分析センターと国土交通省の協力のもと、警察庁が公表した2024年中の交通事故統計を基に、事業用貨物自動車(軽自動車を除く)の事故傾向を取りまとめた。報告によると、トラックが第1当事者となった死傷事故件数は8619件で、15年の1万6156件から46.7%減少。長期的には改善傾向が見られるものの、依然として追突事故が全体の半数近くを占め、漫然運転や脇見運転が原因の事故も根強く残る実態が明らかになった。
追突事故が依然最多、全体の45%占める
事故類型別では、車両相互事故が9割を占め、中でも追突事故が顕著だ。24年は「追突(駐・停車中)」が3369件、「追突(進行中)」が501件の計3870件で、死傷事故全体の44.9%を占めた。15年と比べると54.7%減少しているが、依然として最も多い。出会い頭衝突(770件)や進路変更時衝突(638件)などが続き、交差点や車線変更時の不注意による事故が目立つ。
高速道路では、追突事故の割合がさらに高い。24年の高速道路上の死傷事故(1113件)のうち、追突(駐・停車中、進行中)は703件で63.1%を占めた。長時間運転や注意散漫による前方不注意が主要因とみられる。
「安全不確認」「脇見」「漫然運転」が3大違反要因
法令違反別の分析では、「安全不確認」(29.4%)、「脇見運転」(16.2%)、「動静不注視」(14.0%)が多く、死亡事故に限ると「漫然運転」(19.0%)が最上位となった。漫然運転とは、運転中に注意が運転以外に向き、相手の発見が遅れるケースを指す。24年の死亡事故のうち、漫然運転は38件で前年より14件減少したが、脇見運転(29件)や安全不確認(37件)と並び上位に位置している。
全ト協は「ドライバーが運転に集中できる環境整備が急務」と指摘。運転時間や拘束時間の適正化、休憩取得の徹底など、労働環境の改善と安全教育の一体的推進を求めている。
飲酒運転16件・整備不良5件、ゼロには至らず
飲酒運転による死傷事故は16件で、うち2件が死亡事故だった。基準値以上の酒気帯び運転が全体の9割近くを占める。全ト協は「悪質な飲酒事案の再発が物流の信頼を損ねる」として、全社的なアルコール検知と記録管理の徹底を呼びかける。整備不良による事故は5件で、近年では最少水準だが、依然として大型車のタイヤ・車輪不良や荷崩れが目立つ。
24年問題後の“質的転換”へ
全ト協の寺岡洋一会長は報告書の中で「物流業界は24年問題の先に、社会的信頼を回復する正念場にある」と強調。トラックドライバーの賃金適正化や許可更新制度、下請け制限を盛り込んだ改正貨物自動車運送事業法(2025年6月成立)を背景に、「交通事故ゼロへの意識改革が業界の存続条件」と訴えた。
同協会は、今回の統計を安全対策資料として各事業者に提供し、再発防止教育やヒヤリハット事例分析への活用を促している。
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