話題インドは現在、名目GDPで世界第4位に位置し、製造・物流分野でも日系企業の進出が加速している。急成長する市場の一方で、複雑な法制度、州ごとに異なる商習慣、多言語社会という現実が、事業展開の大きなハードルになっている。こうした環境下で、デジタルによる共通基盤づくりは“あれば便利”ではなく、“なければ始まらない”段階に来ている。
この課題に挑むのが、Zenport(ゼンポート、東京都千代田区)とTebiki(テビキ、新宿区)の2社だ。
前者は国際取引の効率化を、後者は現場教育の標準化を進めており、いずれも「断片化された現場をデジタルでつなぐ」ことをテーマにしている。日本企業がインド市場で持続的に事業を展開するために欠かせない、2つのデジタルソリューションを紹介する。
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Zenport──分断された貿易業務を「つなぐ」
Zenportの太田文行社長は、グローバルサプライチェーンの“現場の非効率”を指摘する。「多くの企業がいまだにPDFや紙書類でやり取りをしており、担当者が手入力でデータを転記している。情報が国境を越えるたびに分断され、確認や修正に膨大な時間を取られている」と語る。

▲Zenportの太田文行代表取締役
Zenportが提供するクラウドプラットフォーム「ZENPORT」は、こうした課題を解消する“貿易の情報基盤”として設計されている。発注書や船積み書類、インボイス、通関関連書類など、これまで企業・フォワーダー・金融機関が別々に扱っていたデータを一元化し、クラウド上で共有できる。AI-OCRによる自動読み取りや入力補完、AI-BPO(AI+人的監査)による業務最適化で、書類処理や照合作業を最大80%削減できるという。
さらに同社は、「ZenConnect」「ZenSync」「ZenGrid」といった統合モジュール群を開発中で、物流・金融・在庫管理などの周辺システムともAPI連携を進めている。太田氏は「私たちが目指すのは、単なる書類の電子化ではなく、取引全体の標準化だ」と語る。
すでに大手メーカーや商社、国際物流企業などが導入を進めており、紙やメールで分断されていた取引データの統合管理を実現。インド市場では、地場フォワーダーや中小輸出業者との連携を加速させている。「政府や大企業の制度整備を待つのではなく、民間の実務から国際物流をデジタル化していく。それが私たちの使命だ」と太田氏は強調する。
Tebiki──“見る教育”で現場力を底上げ
クラウド動画教育サービスを展開するTebikiは、製造・物流・小売など幅広い業界で、スマートフォンで撮影した作業映像をAI(人工知能)が解析し、動画マニュアルとして自動生成する仕組みを提供している。
同社海外事業部の檜山達矢マネージャーは「現場教育はどうしても属人的になり、担当者が変わると品質が落ちる。Tebikiは、作業者自身が撮影した映像をAIが解析し、字幕や音声を400言語以上に自動変換することで、誰でも同じ内容を理解できる」と説明する。

▲Tebiki海外事業部の檜山達矢マネージャー
導入企業では教育時間を平均75%削減し、ミス発生率を30-40%低減。こうした成果を背景に、インド、タイ、ベトナムなど多言語環境の現場で導入が進む。動画はクラウド上で共有され、スマートフォンやタブレットからいつでも閲覧可能。管理者は閲覧履歴や再生回数をリアルタイムで把握し、教育の進ちょくを可視化できる。
「多様な言語と文化を持つ国こそ、動画教育の効果は大きい。特にインドは州によって教育水準や言語が異なり、現場力をそろえるのが難しい。動画によって“共通の理解”をつくることが、人材育成の第一歩になる」と檜山氏は語る。同社では今後、現地法人の設立も視野に入れ、グローバル製造・物流業界での標準化支援を進めていく方針だ。
インド進出のカギは「人と情報の可視化」
貿易の透明化と人材教育の平準化──この2つは、インドに進出する日本企業に共通する大きな課題だ。Zenportは情報を、Tebikiは技能をそれぞれつなぐことで、現場の「共通言語」をデジタルで築こうとしている。
異文化・多言語の壁を越えて生産性を高めるには、人と情報の可視化こそが出発点である。両社の取り組みは、単なるIT導入を超え、“デジタルを通じた日印連携の実践モデル”として注目を集めている。
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