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プロロジス、インドでグローバル標準の物流施設展開

2025年11月5日 (水)

話題物流不動産の世界大手プロロジスが、急成長するインド市場での事業展開を本格化させている。同社は世界20か国で5600棟、1億2000万平方メートルを超える物流施設を開発・運営する、業界最大のグローバル企業。世界GDPの2.8パーセントに相当する年間約2.7兆米ドル相当の商品流通を支えている。日本には1999年に進出し、「賃貸用物流施設」という概念や、ランプウェイ、カフェテリアなどを備えた先進的な物流施設の開発で、市場の発展を牽引してきた。

▲パリで開発中の駅直結型都市型物流施設(クリックで拡大、完成イメージ 出所:プロロジス)

近年では、フランス・パリでの駅直結型都市型物流施設、オランダでの世界初のゼロカーボン認証施設、カナダでの木造建築の採用など、サステナビリティや効率性を追求した革新的な取り組みが注目されている。そんなプロロジスが次なる成長市場として注目しているのが、インドだ。

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プロロジスは現在、インドの主要都市である、ベンガルール(ホスコテ)、チェンナイ(スリペルデュール)、タミール・ナードゥ(ホスール)、プネ(サナスワディ)の開発中物件に加え、デリー(グルガオン)、ムンバイ、プネ(チャカン・マハラシュトラ)の合計7物件を開発計画中。これらの拠点は、インドの主要な消費地や生産拠点へのアクセスに優れ、今後のサプライチェーン戦略において重要な役割を担うことが期待されている。

▲青字の都市を含む7物件を開発・計画中(クリックで拡大、出所:プロロジス)

インドの物流不動産市場の現状について、同社インド法人の責任者であるヴィニート・セクサリア氏は、「インド市場には、比較的高スペックで国際基準に近い『グレードA』の施設と、より基本的な仕様の『グレードB』の施設が混在しているのが現状だ」と解説する。

インド全体では4070万平方メートルの倉庫ストックのうち、近代的な仕様を持つグレードAのストックは790万平方メートルに留まると推計されており、依然として供給が需要に追いついていない状況が見受けられる。特に大都市圏における消費の拡大やEコマースの浸透により、高品質な物流施設への需要は高まっているという。

▲インドで成長するEコマース市場(クリックで拡大、出所:プロロジス)

セクサリア氏は、「プロロジスは、日本や欧米など他の展開国と同様に、グローバルスタンダードを満たす高品質なグレードA施設をインドでも開発・提供していく。我々は30年から50年先を見据えた、世界クラスの基準を満たす施設を開発している」と、同社のインド市場における品質へのコミットメントを強調した。

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セクサリア氏が語るプロロジスのインド開発物件の特徴は、安全性、サステナビリティ、効率性、そして働く環境への配慮に集約される。

まず安全性については、防火・安全に関する国際的な規格である「NFPA」に準拠した消防設備を標準仕様とする。これはインド国内の一般的な基準(ISスタンダード)よりも厳格なもの。防火水槽の容量なども含め、より高い安全性を確保することで、入居企業のBCP(事業継続計画)に寄与し、潜在的な保険コストの削減にも繋がる可能性がある。また、消火栓ラインは地下に埋設し、万が一の際の損傷リスクも低減する。

サステナビリティへの取り組みも多岐にわたる。断熱材には厚さ50ミリの高品質なロックウールを採用し、庫内の温度上昇を抑制。外気温比で5度低い環境を実現する。これにより空調負荷を低減し、電力問題を抱えるインドにおいて省エネルギーに貢献するという。

照明は、庫内150ルクス、エプロン部50ルクスを確保する高効率なLED高天井照明を標準設置し、入居企業側の初期投資負担を軽減する。屋根はソーラーパネル設置に対応可能な構造とし、敷地内には雨水貯留池や浸透桝を設け、雨水の有効活用と流出抑制を図る。

▲プロロジス・インディア責任者のヴィニート・セクサリア氏

このほか、自然換気システム、エネルギー貯蔵・バックアップ電源システム、低VOC(揮発性有機化合物)塗料の採用なども標準仕様に含まれる。これらの取り組みにより、インドの環境認証である「IGBC」のプラチナ認証を取得予定だ。

効率性に関しては、トラックヤードの設計が特徴的だ。プロロジスの施設では、ドックに面したエプロン部分に22メートル、さらに車両動線となる道路部分に12メートル、合計34メートルの広大なトラックコートを確保している。これは一般的なインドの物流施設(28.5-30メートル程度)と比較して広く、40フィートトレーラーはもちろん、より大型の車両のスムーズな接車と構内移動を可能にし、荷役効率の向上と場内事故リスクの低減につながる。

さらに、働く人々の環境改善にも注力する。「PARKLife」(パークライフ)と名付けたアメニティプログラムを展開し、スポーツアリーナ、電気自動車(EV)充電ゾーン、ろ過機能付きの飲料水供給機、安全に配慮した歩行者用通路、AED(自動体外式除細動器)ステーションなどを敷地内に設置する計画だ。これは、人材確保が課題となりつつあるインドにおいて、入居企業が従業員にとって魅力的な職場環境を提供できるよう支援する取り組みである。男女別トイレや障がい者対応トイレも標準仕様として設置し、入居企業側の追加工事負担を軽減する。

▲PARKLifeのイメージ(クリックで拡大、出所:プロロジス)

プロロジス日本法人で開発部物流コンサルティングチームの本庄哲太ディレクターは、「当社は世界20か国目として23年からインド市場へ本格的に参入した」と説明。同氏は、10月23日に駐日インド大使館で開催されたイベントの壇上で、「日本が物流の『2024年問題』への対応を通じて培ってきた共同輸送のノウハウやDX(デジタルトランスフォーメーション)の知見は、今後労働力不足や効率化が課題となるであろうインド市場においても、将来的に実装される可能性が高い」と述べ、日本の先進的な取り組みや知見を、プロロジスのグローバルネットワークを通じてインドでの事業展開にも生かしていく考えを示した。

▲プロロジス開発部物流コンサルティングチームの本庄哲太ディレクター

インドは世界第4位の経済大国へと成長を遂げつつあり、サプライチェーンの再編が進む中で、物流・製造ハブとしての重要性がますます高まっている。Eコマースの急拡大も、先進的な物流施設への需要を後押ししている。プロロジスがインドで展開するグローバルスタンダードの物流施設は、高い安全性、サステナビリティ、効率性、そして働く人々の快適性を備え、このダイナミックな市場でビジネスを展開する企業の成長を強力にサポートする。インドへの進出や事業拡大を具体的に検討されている企業にとって、頼もしいパートナーとなりそうだ。

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