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特積み4社が東阪間で企業横断中継輸送「baton」実証

2025年11月20日 (木)

ロジスティクス「物流コンソーシアム baton」合同記者発表会が20日、都内で開かれた。西濃運輸、トナミ運輸、福山通運、名鉄NX運輸の各社に加え、東京海上グループ、国土交通省、経済産業省、大学研究者らが一堂に会し、産官学が連携して物流のレジリエンス強化を進める取り組みを説明した。

冒頭、東京海上ホールディングスの小池昌洋社長が登壇し、物流の担い手減少や高齢化といった構造問題に触れ、「一企業では解決が難しい課題が増えている。共創を促し、共同輸送やプラットフォーム化を実装レベルで進める段階に来た」と語った。

続いて西濃運輸の髙橋智社長が講演し、トラック輸送への過度な依存や人材不足、労働集約型産業としての限界について説明した。労働力の需給ギャップ、再配達率の上昇、2030年の輸送力不足見通しなどを挙げ、「効率化・自動化・標準化は不可避だが、多くの事業者にとって投資負担は大きい。だからこそ競争から共創へ転じ、多くの事業者が連携し利用できるオープンなプラットフォームが必要だ」と述べた。

(左から)東京海上日動火災保険の城田宏明社長、名鉄NX運輸の吉川拓雄社長、トナミ運輸の髙田和夫社長、西濃運輸の髙橋智社長、福山通運の熊野弘幸社長、東京海上ホールディングスの小池昌洋社長・グループCEO

東京海上日動火災保険の城田宏明社長は、コンソーシアムの枠組みと狙いを説明。26年2月には、西濃運輸と福山通運、名鉄NX運輸とトナミ運輸が組み、中継地点でドライバーを交代する企業横断型中継輸送を関東―大阪間で実証運行すると語った。

続くトークセッションでは、西濃運輸の高橋智社長、トナミ運輸の高田和夫社長、福山通運の熊野弘幸社長、名鉄NX運輸の吉川拓雄社長、東京海上ホールディングスの生田目雅史専務が登壇した。長距離輸送の担い手不足、積載効率の改善、標準化の遅れが共通課題として挙がり、企業横断の中継輸送の仕組みを優先課題と位置づけた。

▲東京海上スマートモビリティの原田秀美社長

後半の第2部では、東京海上スマートモビリティの原田秀美社長が企業横断型中継輸送の実証内容を説明し、複数ルートでの検証を進める方針を示した。

企業横断型中継輸送の実証に向けては、5社が保有する運行データを東京海上側で初めて横断的に分析したことが大きな前進だったという。上位20路線を対象に週1万3000便を分析し、効果が高い14路線を抽出。今回はその中から2路線を選び、西濃運輸と福山通運、名鉄NX運輸とトナミ運輸の組み合わせで、中継地点でドライバーを交代して日帰り運行を実現する。

原田氏は、中継輸送の実務には多くのリスクと不安が伴うと指摘。そこでBatonでは、車両・ドライバー・貨物の3つの観点からリスクを整理し、事故対応、点呼方法、損害負担主体などを定めた「リスク負担ガイドライン」と「中継輸送協定書ひな型」を策定。さらに、送り状・荷札の扱い、待ち合わせ方法、デジタコデータの共有など、数十項目に及ぶオペレーションを事前に擦り合わせたという。

中継輸送がもたらす効果として、原田氏は「最大40%の路線でドライバーの日帰りが可能になる」と語った。若手ほど日帰り運行を希望する割合が高く、働きやすい環境づくりに直結する点を強調。今後の課題としては、車両仕様、荷役方法、伝票形式、システムなど企業ごとに異なるルールの「標準化」を挙げた。

▲国土交通省物流・自動車局
物流政策課の髙田龍・物流政策課長

会の最後に国土交通省の高田龍・物流政策課長が登壇、日本の物流が24年問題を境に転換期を迎えていると指摘した。また、政府がことし、経済産業省、農林水産省と連携し、次期「総合物流施策大綱」の検討を開始したことを紹介。標準化やDX、中継輸送などが重要テーマであり、「Batonの取り組みは大綱の方向性と一致している」と評価した。また国交省は補正予算による実装支援事業でBatonを採択し、制度・運用面の検証を後押ししている。

高田課長は、ドライバー交代方式の中継輸送を「実現性は高いが安全確保と法令順守が前提となる挑戦」と述べ、取り組みから新たな輸送モデルが生まれることに期待を示した。(土屋悟)

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