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バース予約は万能薬か、荷待ち削減阻む「運用の壁」

2026年1月16日 (金)

ロジスティクス荷待ち・荷役問題の解消に向け、バース予約システムやトラック動態管理システムへの期待が高まっている。改正改善基準告示の施行や「2時間ルール」の提示により、荷待ち時間の削減は努力目標ではなく、実質的な義務として荷主・物流事業者双方に突き付けられた。とりわけ荷主側にとっては、構内オペレーションを平準化し、トラックを「待たせない」仕組みづくりが、法令対応と経営課題の両面から避けて通れないテーマとなっている。

その解決策として真っ先に挙げられるのが、バース予約システムだ。物流拠点への到着時間を事前に調整し、トラックを時間帯ごとに制御することで、荷役作業を計画的に進める。理屈の上では、荷待ちを発生させにくくする合理的な仕組みである。

しかし、現場の評価は必ずしも高いとは言えない。

「予約枠がすぐに埋まり、結局は早着して待つしかない」「予約操作をドライバー任せにした結果、かえって現場の負担が増えた」。こうした声は、業種や地域を問わず共通して聞かれる。バース予約を導入しても、荷待ち時間が思うように減らないケースは少なくない。

形骸化するバース予約、その原因はどこにあるのか

問題の本質は、バース予約が「システムを入れれば解決する」類の施策ではない点にある。多くの物流拠点では、予約枠の設計が現場の処理能力や日々の変動を十分に織り込めていない。遅延を前提としない厳格な時間設定は、交通渋滞や前工程の遅れといった現実的な要因によって容易に破綻する。

その結果、ドライバーは予約時間よりも大幅に早く到着し、構内外での待機を余儀なくされる。表面上は「予約制」でも、実態としては荷待ちが温存されているケースも多い。

さらに、運用の主導権が曖昧な点も見逃せない。本来、バース予約は荷主や物流センターが主体的に構内オペレーションを管理するための仕組みだが、実際には運送事業者やドライバー任せになっている例も少なくない。中小事業者ほど、複数の拠点・複数の予約システムへの対応を強いられ、デジタル化が新たな負担となっている。

デジタル化の方向性は一つではない

バース予約やトラック動態管理と一口に言っても、その設計思想は提供事業者ごとに異なる。どの業務を起点に荷待ち問題を捉えるかによって、システムの位置付けも変わってくる。

例えば、両備システムズ(岡山市北区)は、単なる予約管理にとどまらない「庫内状況の可視化」に強みを持つ。同社のバース予約システム「R-BERTH」は、WMS(倉庫管理システム)との連携を前提としており、予約データを作業計画や人員配置に直結させる設計が特徴だ。これにより、車両の到着時間だけでなく、積み荷の内容や作業進捗に応じた柔軟なバース割り当てを可能にしている。

さらに、AI(人工知能)を活用した「到着時間予測」機能の実装で、交通状況などの外部要因による遅延を事前に把握。現場が「次に何が起きるか」を予見できる環境を整えることで、手待ち時間の削減と庫内生産性の最大化を同時に追求している。物流現場の知見を活かし、バース予約を「構内DX」の起点として位置付けるアプローチだ。

▲R-LOGI for Truck Berthはプランニング、オペレーション機能を中心に、必要に応じてチェックイン機能、バース管理機能、誘導管理機能などを追加可能(出所:両備システムズ)

一方、Hacobu(ハコブ、東京都港区)は、トラックの位置情報などの動態データ活用に強みを持つ。車両の稼働状況や移動状況を把握することで、現場で起きている変動を前提とした運用を支援する点が特徴だ。時間を固定的に管理するだけでなく、状況に応じた判断を可能にするための情報基盤として位置付けられている。

ハコベル(中央区)は、輸送手配や物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の領域から事業を展開してきた立場を生かし、バース予約を個別拠点の課題としてではなく、輸送全体の流れの中で捉える視点を持つ。幹線輸送やラストワンマイルを含めた輸送計画と連動させることで、到着時間の調整を前後工程と切り離さずに考えるアプローチだ。

さらに、古野電気は「入退場の自動記録」という、より現場の基盤に近い切り口から荷待ち削減を支援している 。同社の車両入退場管理サービス「FLOVIS」(フロービス)は、ETC通信と車番認識を併用し、ドライバーに負荷をかけず滞在時間を正確に可視化する 。

特筆すべきは、カメラが苦手とする濃霧や降雪といった悪天候下でも、ETC技術により確実なエビデンスを取得できる点だ。受け付けでの記帳や目視に頼る運用は、説明責任を果たせないだけでなく、車両集中による公道渋滞や荷待ち増大を招く経営リスクとなる 。まずは入退場という「事実」を確実に押さえることが、2時間ルールへの対応と「選ばれる荷主」になるための現実的な一歩であると提唱している。

ITは荷待ちを「消す」のではなく「管理する」

もっとも、バース予約や動態管理を高度化したとしても、すべての荷待ちをゼロにできるわけではない。突発的な欠品、検品トラブル、天候不順、事故渋滞など、人為的に制御できない要因は必ず発生する。重要なのは、荷待ちを完全に排除することではなく、それを誰の責任で、どのように管理するかを明確にすることだ。

取適法の施行により、荷待ちや荷役作業を無償で押し付ける行為は、法的リスクを伴うものとなる。荷主側がバース予約や動態管理を主導し、荷待ちを構造的に減らす努力を示すことは、コンプライアンス対応としての意味合いも強まっている。IT導入は、省力化や効率化だけでなく、適正な取引関係を支える基盤としての役割を担い始めている。

バース予約システムは、もはや導入の是非を議論する段階を過ぎた。問われているのは、それをどのように使いこなし、業務に組み込むかである。予約枠の設計、変動を前提とした運用、動態データとの連携、構内オペレーションとの一体化。これらが噛み合って初めて、2時間ルールは現実の制約として機能する。

荷待ち削減は、単なる現場改善ではない。物流の持続可能性、ドライバーの労働環境、そして法令順守という複数の要素が交差する経営課題だ。バース予約と動態管理は、その解決に向けた重要な手段であると同時に、企業の物流に対する姿勢そのものを映し出す鏡でもある。

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