ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

新名神6人死亡で運送会社を捜索

2026年3月22日 (日)

事件・事故三重県亀山市の新名神高速道路下り線で20日午前2時20分ごろ、子ども3人を含む6人が死亡する多重事故が起きた。三重県警は21日、大型トラック運転手の勤務先である運送会社HIROKI(ヒロキ、広島市安芸区)と関係先を家宅捜索し、運行記録簿、ドライブレコーダー、健康管理資料を押収した。事故原因はまだ確定していない。ただ、逮捕された運転手は20年以上無事故のベテランで、車両は購入4か月の新車だった。経験や新車という条件だけでは事故を防げなかった可能性が浮かび上がった。(編集長・赤澤裕介)

事故は亀山市安坂山町の野登トンネル(全長4.1キロ)付近の走行車線で起きた。現場の1キロ先で工事による車線規制があり、制限速度は50キロに引き下げられていた。渋滞が発生し、停車していた車列の最後尾から順に乗用車A、その前に乗用車B、さらに前方に大型トレーラーが並んでいた。後方から走行してきた大型トラックが乗用車Aに追突し、その衝撃で乗用車Bと大型トレーラーも巻き込まれた。計4台の多重事故になり、大型トラックと乗用車2台が炎上。火災は1時間半ほどで鎮火した。なお、現場位置について報道では「トンネル内」とするものと「出口付近」とするものがあり、正確な地点は捜査で確定される。

乗用車Bから成人男女2人と子ども3人、乗用車Aから成人1人の遺体が見つかった。成人男性1人は車外で発見されており、県警はトラックがかなりの速度で突っ込んだとみている。22日時点で6人全員の身元は特定に至っていない。焼損が激しく、司法解剖とDNA鑑定で確認を進めている。

県警はトラックを運転していた広島県安芸高田市の運送会社社員、水谷水都代(みつよ)容疑者(54)を自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで現行犯逮捕した。容疑を認めている。21日に津地検へ送検された。

事故の影響で新名神高速の菰野インターチェンジから亀山西ジャンクション間が通行止めとなり、解除は20日午後9時だった。未明から同日夜まで、名古屋-大阪間を結ぶ幹線が長時間にわたって遮断された。

▲事故の時系列(クリックで拡大)

確認された事実と未確認の事項

捜査は初期段階にある。事故原因の確定にはドライブレコーダー映像、タコグラフの速度記録、AEB(衝突被害軽減ブレーキ)の作動データ、点呼記録、運行指示書の解析が必要だ。22日時点でこれらの結果は公表されていない。以下では報道で確認できた事実と、まだ確認されていない事項を分けて整理する。

勤務先のHIROKIは法人登記上の所在地が広島市安芸区瀬野西で、報道によると長距離の一般貨物輸送を主力とする。保有車両台数、従業員数、安全性優良事業所(Gマーク)の取得有無、過去の行政処分歴は、22日時点の公開情報では確認できていない。

水谷容疑者は2021年11月に入社し4年以上勤務。入社前を含め20年以上無事故だったと社長と親族が報道各社に話している。社長は「まさかこの人が」と話した。社内で最も新しいトラックを任され、車両は4か月前に購入し、3月16日に点検を終えたばかりだった。飲酒検査では問題なかった。車両には飲酒検知に関する設備があったとされるが、車載のアルコールインターロックなのか、点呼時の検知器運用なのかは報道からは判別できない。

事故直後、水谷容疑者本人から社長の携帯電話に連絡があった。社長によれば気が動転して支離滅裂な内容だったという。

社長は休憩管理について「4時間ごとの休憩を徹底している」としつつ、休憩が不足した場合は「個人の裁量」に委ねていたと説明している。改善基準告示は連続運転4時間を上限とし、少なくとも30分の休憩を義務づけている。ただし、事故当日の水谷容疑者の出発地、出発時刻、休憩取得地点、連続運転時間は報道されていない。改善基準告示に違反する運行だったかどうかは現時点で不明だ。

県警の調べでは、トラックは規制速度の50キロを超えて走行していた疑いがある。ブレーキ痕の有無やAEBの作動状況は解析中。報道によると、国土交通省中国運輸局も運行管理の実態調査に着手した。

確認できていない重要事項は大きく5つある。事故直前のトラックの走行速度、ブレーキ操作の有無、AEBの搭載有無と作動状況▽事故当日の運行タイムライン(出発地、休憩地、連続運転時間)と点呼記録、運行指示書の内容▽HIROKIの保有車両台数、従業員数、Gマーク取得有無、過去の行政処分歴▽トラックの車両型式と安全装備の仕様▽NEXCOによる工事規制の予告標識設置位置、渋滞末尾への警告車配置の有無。

なお、大型車へのAEB義務化は車両区分ごとに段階的に導入されており、年式上は搭載対象の可能性があるが、個別車両の型式と搭載有無は未確認だ。

これらが明らかになるまで、事故原因の断定はできない。国交省の事業用自動車事故調査報告書には、工事規制下の渋滞停止車列にトラックが高速で無回避追突し、背景に過酷勤務、睡眠不足、運行管理上の問題があったとされる類似事例がある。ただし、その報告書では連続乗務日数、休日取得状況、拘束時間、仮眠時間、到着時刻のプレッシャーまで検証した上で疲労を主因と認定している。今回の事故でそこまでのデータがそろっていない以上、原因の断定は時期尚早だ。現時点で言えるのは、工事規制下の渋滞末尾に規制速度を超えていた疑いのある状態で追突した可能性があるということまでで、疲労、前方不注視、急病、安全装置の不作動など複数の可能性があり、優劣はつけられない。

▲確認された事実と未確認の事項(クリックで拡大)

この事故は特殊な事例ではない。高速道路では渋滞末尾への追突が繰り返し起きている。NEXCO中日本の統計では、25年の管内死亡事故21件のうち停止車両への衝突や単独事故が14件を占め、全体の半数を超えた。NEXCO東日本の24年データでは渋滞末尾での死傷事故が325件にのぼり、増加傾向にある。

事業用トラック全体でも追突は主要な事故類型だ。全日本トラック協会のデータでは、事業用トラックの人身事故のうち追突事故は半数以上を占める。工事規制下の渋滞末尾への追突は、道路管理者側の対策(規制表示の視認性、渋滞末尾警告、情報提供)と、運送事業者側の対策(運行管理の実効性、車両安全装備の活用、運転手教育)の双方が問われる事故類型だ。

NEXCO中日本側の対応も今後の焦点になる。工事規制区間の予告標識は何メートル手前から設置されていたのか。渋滞末尾に警告車両は配置されていたか。これらは22日時点では公表されていない。

6人が亡くなった。子ども3人が含まれている。事故原因の確定と責任の所在は捜査に委ねるほかない。捜査初期段階であり、今後の進展で事実関係が変わる可能性がある。

ただ、この事故が突きつけているのは個別の原因追及だけではない。トラック輸送は事故の確率をゼロにできない産業だ。その前提で、確率を最低限まで下げる投資と仕組みが自社に備わっているか。24年の改正物流関連2法では荷主にも荷待ち時間の短縮や積載効率の向上といった物流効率化の努力義務が課された。運送会社の安全管理を支える適正運賃と運行条件の確保は、制度上も求められている。運送会社も荷主も大手物流企業も、自社の物流がこの問いに耐えられるかを点検すべきときだ。

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com

LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。

ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。