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「4月1日、物流が変わる」

マンション荷さばき義務、全国一律とならない現実

2026年4月1日 (水)

ロジスティクス4月1日、駐車場法施行令(2025年公布)の改正が施行される。共同住宅が「特定用途」に追加され、自治体が条例で荷さばき駐車施設の附置義務(建築物の敷地内に駐車施設の設置を求める制度)を課すことが可能になった。だが施行令が変わっても、条例が変わらなければ義務は発生しない。同じ規模のマンションでも、建てる場所によって適用の有無が分かれる。4月1日に変わるのは制度の根拠であり、全国一律の規制ではない。(編集長・赤澤裕介)

義務の有無は自治体の条例改正で決まる

まず制度の骨格を確認する。共同住宅が附置義務制度の対象に加わったことで、自治体は条例で荷さばき駐車施設の設置を求めることができるようになった。ただし条例を改正しなければ適用は始まらない。

駐車場法施行令第18条に「共同住宅」が特定用途として追加された。これまで百貨店、事務所、病院などが対象だった附置義務制度の枠に、共同住宅が入ったことになる。閣議決定は25年3月4日、公布は同年3月7日、施行が26年4月1日だ。

国土交通省は同時に、各自治体が条例を定める際の参考となる「標準駐車場条例」を改正した。

▲共同住宅における荷さばき施設附置制度の概要(クリックで拡大)

荷さばき車室は2トン車を想定し、幅3メートル以上、奥行き7.7メートル以上、梁下高さ3.2メートル以上とされている。居住者車両の駐車には使えない。引っ越しや送迎での一時利用は管理者の判断で認められる。

ただし標準駐車場条例は技術的助言であり、法的拘束力はない。実際の義務は、各自治体が条例を改正して初めて発生する。

今回の改正は、国が一律に義務を課したものではない。共同住宅に荷さばき施設の附置義務を課すかどうかは、自治体の条例改正に委ねられている。適用の有無は自治体ごとに分かれる。

条例改正にはパブリックコメント、議会での審議・議決、公布、施行の手続きが必要で、最短でも数か月を要する。4月1日時点で条例化を終えている自治体は限られる。

▲共同住宅への荷さばき施設附置義務の対応状況(クリックで拡大)

このほかにも改正手続きを進めている政令市はあるが、施行時期や義務の強度は自治体ごとに異なる。4月1日時点で義務が確定している自治体、手続き途上の自治体、見送った自治体が混在している。東京都は既存の駐車場条例体系を持つため、今回の政令改正への対応も新設型の自治体とは経路が異なる可能性がある。区レベルでは、足立区、江戸川区、葛飾区などが独自条例で共同住宅に荷さばき・停留空地の設置を求めている先行例がある。ただしこれらは今回の政令改正とは別系統の取り組みだ。

2024年8月時点の国交省調査では、駐車場施策全体の中で荷さばき駐車場の整備・確保を実施済みまたは実施予定と回答した自治体は3.3%にとどまった。これは共同住宅向けの条例化率ではなく、駐車場施策全体における比率だが、荷さばき対応に着手した例が少数にとどまることは示している。

複数自治体で事業を展開するデベロッパーにとっては、同じ規模の物件でも建設地によって義務の有無が異なる状態になっている。問題は、こうした制度差が共同住宅配送の現場負荷と直結することだ。

宅配便の取扱個数は24年度に50億3147万個に達した(国交省)。背景にはEC(電子商取引)市場の拡大がある。大規模物件、とくに高層の共同住宅には、複数の配送事業者の車両が集中する。国交省の検討会資料が取り上げた横浜市内の58階・1176戸の超高層共同住宅では、大手3社が1日6回、その他の軽貨物や家具・工事資材を含めると計10回の車両来訪があり、1日あたり500個の荷物が届いている。

来訪車両は宅配だけではない。別の研究では、集合住宅3棟・450世帯の物件に平日平均23.4台のサービス車両が流入しており、デイサービス車、リフォーム業者、営業車両が含まれていた。平均滞在時間は58.1分で、短期滞在の車両でも12.8分にのぼる。

さらに共同住宅にはオートロックやエレベーター待ちという構造的な滞留要因がある。1台あたりの敷地内滞在時間が長くなれば、敷地内に停められない車両は路上に出る。路上での荷さばきは、交通や生活環境上の支障を生む。

置き配や宅配ボックスの普及は進んでいるが、大型の家具・家電、冷凍品、返品集荷、複数事業者の同時配送には対応しきれない。建物側で受け止めない限り、配送負荷は路上にあふれる構造になっている。共同住宅に荷さばき施設が求められるようになった背景には、宅配需要の増加だけでなく、この滞留構造がある。

デベロッパーと管理会社にとって、確認すべきことは3段階ある。

第1に、設計中の物件について、建設地の自治体が条例を改正したかどうかを確認することだ。大阪市は4月1日に施行済みだが、他の自治体は条例の公表資料や所管部署への確認が必要になる。

第2に、条例が未整備の自治体であっても、将来の条例化を前提に設計するか、現行ルールで割り切るかの判断が求められる。標準駐車場条例の基準(100戸あたり1台)は、制度が整っていない地域でも先回り設計の判断材料になる。規定のない段階で設計した場合でも、その後に条例改正が行われれば設計変更や行政協議が必要になる可能性がある。設計と制度整備の時間差は、コストや工期に直接影響する。

第3に、既存マンションでは、乗用車の利用率が低下している場合に荷さばき枠への振替が標準条例で推奨されている。管理会社はこの選択肢を把握し、運用の見直しを検討する余地がある。

4月1日に変わるのは施行令であり、義務を発生させるのは各自治体の条例だ。さいたま市と大阪市は4月1日に施行した。横浜市は導入を見送った。東京都の新たな対応は確認できていない。同じ施行令の下で、義務が生じる都市と生じない都市がある。デベロッパーと管理会社が最初に確認すべきは、建設地の自治体がどこまで進めているかだ。

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