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日通総研が荷主企業対象に調査

消費増税後の出荷量、一転「減少」の見通し

2014年2月6日 (木)

調査・データ消費税率の引き上げを2か月後に控え、「広範囲な業種で”駆け込み需要”が発生している」として、日通総合研究所は5日、「消費税増税が出荷量・入荷量に及ぼす影響に関する調査」と題するレポートを公表した。

レポートによると、駆け込み需要は昨年10-12月期から今1-3月期にかけて、消費財を中心に発生のピークを迎えると考えられ、国内向け出荷量は「相当に盛り上がる」と指摘。その一方で、消費税増税後には駆け込み需要の反動、増税に伴う実質所得の減少を反映した個人消費などの減退により、国内向け出荷量が「ある程度の落ち込みが避けられない」との見方を示している。

■駆け込み需要の発生に伴う国内向け出荷量の変化(日通総研)
駆け込み需要の発生に伴う国内向け出荷量の変化(出所:日通総合研究所)

そこで、日通総研では(1)出荷量の大きな変動が予測されること(2)昨年秋頃からトラックやドライバーの不足が顕在化しつつあること——などから、物流事業者がトラックやドライバーの適正配置に苦慮しているとみて、「変動の大きさを定量的に把握する」ため、荷主企業に対してアンケート調査を実施し、結果をまとめた。調査は昨年12月初旬に製造業、卸売業2500事業所に対して実施し、1032事業所から回答を得た。回収率は41.3%。

消費税増税を見越した駆け込み需要の発生に伴い、国内向け出荷量が「増加した」事業者数は、13年4-6月期、7-9月期では、それぞれ31件(3%)、64件(6.2%)と少なく、8割以上が「影響はない」と回答していた。

しかし、10-12月期は「増加する見込み」が205件(19.9%)となり、14年1-3月期になると、407件(39.4%)と4割近くに達した。1-3月期は、「不明」との回答も240件(23.3%)あり、日通総研では「動向を計りかねている事業所も相当数ある」と分析している。

■駆け込み需要の発生に伴う国内からの仕入れ量(入荷量)の変化(日通総研)
駆け込み需要の発生に伴う国内からの仕入れ量(入荷量)の変化(出所:日通総合研究所)

駆け込み需要の発生に伴う国内向け出荷量の増加率(前年比)みると、各期とも「10%未満」という事業所が50%前後、「10%以上20%未満」という事業所が3割強となっているが、「20%以上」という事業所も5%前後あった。

13年10-12月期に国内向け出荷量が「増加する見込み」と回答した事業所を業種別にみると、「化学・プラスチック」(26件)、「木材・家具」「電気機械」「その他の製造業」(各22件)、「一般機械」(21件)、「輸送用機械」(19件)、「鉄鋼・非鉄」(17件)——などが多く、生産財や投資財を中心に駆け込み需要が発生していると推測。

また、14年1-3月期は「化学・プラスチック」(51件)、「その他の製造業」(37件)、「一般機械」「電気機械」(各36件)、「輸送用機械」(34件)、「食料品・飲料」(30件)——などが多く、生産財や投資財に加えて消費財でも駆け込み需要が発生する見込みとなっている。

消費税増税を見越した駆け込み需要の発生に伴う、国内からの原料・中間財・製品などの仕入れ量(入荷量)の変化みると、「今年度上期で、すでに仕入れ量を増やしている」と回答した事業所は37件(3.6%)と少ないものの、「今年度下期で、仕入れ量を増やす予定」との回答は198件(19.2%)と比較的多かった。

一方、「とくに仕入れ量を増やす予定はない」が583件(56.5%)と最も多く、「不明」が205件(19.9%)、「検討中」「1月に判断する」などの「その他」が15件(1.5%)となった。

駆け込み需要の発生に伴い、「上期に仕入れ量が増加した」と回答した事業所を業種別にみると、「木材・家具」(9件)、「化学・プラスチック」「一般機械」(各6件)などが多い。また、「下期に仕入れ量を増やす予定」と回答した事業所を業種別にみると、「化学・プラスチック」(25件)、「その他の製造業」(24件)、「電気機械」(19件)、「一般機械」(17件)、「輸送用機械」(16件)などが多くなっている。

14年度の国内向け出荷量の見通しは、「出荷量の減少が見込まれる」と回答した事業所が68件(6.6%)と比較的少なかった。今年度の出荷量と比較した減少率の見通しは、10-20%の減少を見込む向きが多いが、中には25%減、30%減と大幅な減少を予測している事業所もあった。

■来年度における国内向け出荷量の見通し(日通総研)
来年度における国内向け出荷量の見通し(出所:日通総合研究所)

また、「現在のところ不透明な部分が多いが、出荷量が減少する可能性は否定できない」との回答は472件(45.7%)と多く、「出荷量の減少が見込まれる」と回答した事業所と合わせて半数以上の事業所が出荷量の減少を懸念していることになる。

それ以外では、「駆け込み需要は発生していないので、出荷量は大きく変動しない見通し」が273件(26.5%)、「景気の好転などを受けて出荷量は増加が期待できる」が64件(6.2%)、「上期は出荷量減少の懸念があるが、下期には持ち直す見通し」が69件(6.7%)、「輸出のウエイトが高いため影響は小さい」「公共事業関連のため、政府の方針次第」などの「その他」が12件(1.2%)となった。

また、「不明」が180件(17.4%)あり、消費税増税後の4-6月期以降の動向を計りかねている事業所も多いことが分かった。

これらの調査結果を踏まえ、日通総研は「消費税増税後、国内向け出荷量は一転して減少に向かう可能性が高いと考えられるが、増税に伴う影響の大きさは、現状では不透明」とまとめるとともに、増税が国内向け出荷量に及ぼす影響は「一定期間を経た後、再度検証してみる必要がある」と説明。夏頃をメドに、「改めて荷主企業に対してアンケート調査を実施し、出荷量の動向など調査したい」としている。

■レポートの全文
http://www.nittsu-soken.co.jp/report/