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日本郵便、総務相に報告書、収支改善策打ち出す

2011年1月31日 (月)

行政・団体郵便事業(日本郵便)は28日、片山善博総務相に対し、2010年度中間決算の実績と事業計画との乖離(かいり)を分析した報告書を提出した。この中で日本郵便は、短期的には2012年度には会社全体で、中長期的には5年間でゆうパック事業の単年度黒字化達成を掲げ、当面の収支改善施策を打ち出した。一方で、「これらの取組みでは、目標達成に向けてなお不足が見込まれる」として、日本郵政グループ各社に対して可能な支援を要請するほか、人事・給与面の措置も引き続き検討する。

 

報告書によると、同社は事業計画で、通期で売上高1兆8232億円、営業費用1兆8395億円、営業損益163億円の赤字を計画していたが、上半期だけを対象とした収支予算は策定せず、内部の経営管理上の計数として「売上高は8201億円、営業費用8845億円、営業損益643億円の営業赤字」を見込んでいた。これに対して、中間決算では、売上高が上半期の計画額を179億円下回る8022億円、営業費用は計画額を105億円上回る8950億円、営業損益は計画額を285億円下回る928億円の赤字となった。

 

乖離額285億円のうち、JPエクスプレス(JPEX)との事業統合に関連して発生した営業損益の悪化額は244億円。このうち、(1)事業統合に向けた準備作業を進める中で詳細な検討を行った結果生じた収益の減少、費用の増加による営業損益の悪化額は82億円(2)事業統合直後に発生した送達遅延に伴う混乱に起因して生じた営業損益の悪化額は162億円――となる。

 

売上高を業務別に見ると、郵便業務収益は計画額を61億円下回る6171億円、印紙受託業務収益は計画額を4億円下回る251億円、その他売上高は計画額を114億円下回る1600億円で、その他売上高のうち、ゆうパック収益は計画額を82億円下回る739億円、ゆうメール収益は計画額を40億円下回る764億円となっている。

 

それぞれの売上高が計画額に達しなかった要因
郵便業務では、IT化に伴う請求書の電子化の進展などにより、普通郵便収入が減少した。郵便物数、郵便業務収益の長期的な減少トレンドを反映したものだが、今後、電子化のさらなる進展などで、減少傾向が加速する恐れもあることから、「経営上極めて深刻な状況にあると認識している」とした。

 

ゆうパックは、同業他社との競争で事業統合前から取扱物数の減少が続いており、4月から6月までの3か月間では、ゆうパックの取扱物数は計画を196万個下回る4766万個(対計画96.0%)、収益は計画額を16億円下回る266億円となった。また、事業統合後の7月から9月までの3か月間では、取扱物数は計画を613万個下回る9731万個(対計画94.1%)、収益は計画額を66億円下回る473億円となった。このうち、事業統合直後に発生した送達遅延に伴う混乱の影響によって更に顧客が他社に移行したことなどにより減少した収益は29億円、ゆうパックの1個当たりの平均単価が想定を下回ったことなどにより減少した収益は33億円と見込まれる。

 

ゆうメールは、上半期の取扱物数が、前年同期に比べると5.1%増加の12億4000万通となったものの、計画に比べると取扱物数、収益ともに下回った。

 
営業費用がかさんだ要因
上半期の営業費用については、郵便局への委託手数料、広告宣伝費、日本郵政への各種事務委託手数料など、計画額を下回るものもあったが、人件費、集配運送委託費などが計画額を上回ったため、全体では計画額を105億円上回った。

 

具体的には、送達遅延に伴う混乱への対応と回復のため、正社員の超過勤務手当や非正規社員の賃金が増加したこと、臨時便の増発を行ったことなどにより、人件費で40億円、集配運送委託費などで20億円、それぞれ事業計画では見込んでいなかった費用が追加的に発生した。

 

また、混乱の終息後も、引き続き円滑な業務運行の確保などを最優先としたため、非正規社員の雇用の見直しや運送便の便数の削減などが進まず、人件費で22億円、集配運送委託費などで52億円の費用がさらに増加した。

 
収支改善施策
中長期的には、ゆうパック事業の5年程度で単年度黒字化を達成し、大口顧客を対象に、区分作業などの集中処理・機械化、区分拠点への持込みを誘導するなど顧客とのワークシェアリングによりコスト削減につながる取組みを推進する。また、収益性が高い中小口の顧客については、後納差出しの簡素化など、利便性の向上を図る。

 

商品・サービス面では、携帯電話やパソコンから郵便物を作成・発送するなどITを活用した商品、個人情報保護への関心の高まりに対応した商品、スピードサービスの分野でサービスレベルを明確化した商品などの検討を進める。郵便の毎年度500億円程度の減収トレンドに対応するため、郵便などの区分作業などの集中処理・機械化、集配業務の生産性の向上などの抜本的な取組みにより、生産性の向上に努める。また、郵便のユニバーサルサービスを下支えする収益源となるよう、成長性が高い通販市場などでの小型物品などの発送需要を取り込むなど収益の増加に努める。

 

ゆうパック事業では、集配外務員や郵便局など個人との接点が多い強みを活かして、成長性が高いインターネット通販、地方特産品などのBtoCセグメントや個人オークションが拡大しているCtoCセグメントをターゲットとし、これらの成長分野の物流を取り込むとともに、支店営業体制の強化と宅配標準オペレーションの活用などにより、収益性が高い中小口の顧客のシェア拡大につなげる。郵便ネットワークとのシナジーを活かすため、薄物・小物のゆうパックに重点を置き、ゆうメールも組み合わせた営業活動を行う。また、郵便局の地域性を活かしたゆうパックの商品開発を行うなど、郵便局との一体的な営業などを推進する。

 

特にゆうパック事業の収支悪化の要因分析を踏まえ、当面、業務運行の確保やサービス水準の維持を優先にしたことにより費用の削減や効率化が進んでいない部分を見直す。具体的には、業務量に応じた要員の適正配置や集配委託契約の見直しなど、オペレーション費用の削減に徹底的に取り組むとともに、採算性の観点から必要な顧客との取引条件の見直しなどや中小口の顧客に対する営業の強化などに取り組むことにより、収支改善を図る。

 

さらに、郵便とゆうパックの混載による効率的なネットワークの実現を基本としつつ、戦略的に重要な顧客セグメントごとに求められるサービス水準を踏まえ、送達速度を中心にサービス水準全体の総合的な見直しを行う。これにより「ゆうパックの取扱物数は一定程度減少するものの、ゆうパック事業の将来に向けた成長性を確保しながら、短期的な収支改善を実現することができる」としている。

 

具体的には、運送便の見直し、業務量に応じた要員の適正配置の徹底、集荷体制の見直し、集配作業の生産性の向上、集配委託契約の見直し、顧客との取引条件の見直し――などの施策を実施する。

 

運送便の見直しでは、事業統合前のゆうパックと同様、原則として郵便物とゆうパックの混載を基本とした運送便の設定を行うことにより、集配運送委託費などの削減を図るとともに、運送便の積載効率の向上を図る。また、コンビニ顧客など、事業戦略上重要な顧客セグメントの維持・獲得のため、必要に応じ、航空便や直行便などを設定する。顧客対応が必要となることから、2011年6月の実施を目指して検討する。また、それまでの間でも、荷量に応じた運送便の見直しや臨時便の抑制など、集配運送委託費の削減に取り組む。

 

また、統括支店などの内務要員について、平常期の業務量、運送便の見直し後の業務量に応じた適正な要員配置に見直すことにより、人件費の削減を図るとともに、非効率となっている集荷体制を見直し、人件費、集配運送委託費の削減を図る。さらに、社員執行の集配作業の生産性を向上させ、集配運送委託費の削減に取り組む。