ロジスティクス総合物流企業への転換を急ぐ日本郵便。その中核を担うグローバルビジネスソリューション室が、中国や韓国からの輸入越境EC(電子商取引)需要の取り込みを加速させている。
同室を率いる堤貴志ビジネスソリューション推進部長兼グローバルビジネスソリューション室長は、次のように総合物流にかける強い決意を語る。「国内外の国境が消失していくこれからのボーダーレスな世界において、あらゆる産業のビジネスを育み、つなぐための強固なサプライチェーンを構築する架け橋となる」

▲日本郵便の堤貴志ビジネスソリューション推進部長兼グローバルビジネスソリューション室長
同室はことし4月、関空地域での需要獲得に向けて大阪へ体制を拡大した。強力な営業施策の推進により、韓国発の国内宅配シェアを4割まで高めるなど、独自の高速配送網を構築。国内外を結ぶプラットフォーム構築の最前線を追った。
郵便減少の危機感と合理的な方向転換
財務省関税局のデータが示す通り、中国や韓国からの少額輸入貨物が急増を続ける。このように、国内市場の縮小や従来の郵便物数の減少を補うためにも、輸入越境EC(電子商取引)市場の拡大する需要を捉えることは同社にとって死活問題だ。
同室の戦略を具体的に推進する湯地定裕課長は、減少を続ける普通郵便物の配送インフラを有効活用する背景を説明する。

▲日本郵便の湯地定裕課長
同氏によると、全国8万台の郵便バイクの機動力と郵便物数の減少に伴って生じる積載スペースの余力に対して、急成長する越境EC市場から獲得した小サイズの「ゆうパケットパフ」を詰め込んで効率的に配達することは、既存の配送インフラを最大限に有効活用して収益を拡大させる観点から、同社の郵便・物流事業戦略上、極めて合理的な方向転換(ピボット)を意味しているという。既存の資産を徹底的に使い倒し、新たな成長領域へシフトする必死の努力がここに結実している。
小型荷物に特化した「ゆうパケットパフ」
日本郵便は2025年2月に法人向け新サービス「ゆうパケットパフ」の提供を開始した。

▲小型荷物に特化した「ゆうパケットパフ」(出所:日本郵便)
A4相当サイズの専用袋に入れば厚さ制限なく差し出せる方式を導入している。サイズごとの複雑な計測の手間を省き、全国一律運賃とした。指定場所ダイレクトや置き配などの非対面配達を原則とすることで、配送コストと再配達負荷を低く抑えた商品だ。
このサービスは、もともと輸入越境ECでの活用を念頭に開発され、韓国発の荷物獲得で活用されるだけでなく、袋による簡易梱包が主流の中国の販売事業者向けにも幅広く展開している。
中国の「袋」と韓国の「箱」に応じた最適スキーム
輸入越境EC荷物を引き受ける上で、同社は対象国の商慣習や商材の特色を緻密に見極めている。同室の西久保太志課長は、その違いを次のように説明する。

▲日本郵便の西久保太志課長
「中国と韓国は全く別物だ。韓国はブランド力を重視し、自社のブランドを育てたいという売り方をする。そのため箱を綺麗にするなどイメージを非常に大事にしており、アパレルであってもブランドの箱という形で届く。一方で中国は、同じ商品を複数の事業者が販売して価格競争を行う傾向が強く、少しでもコストを抑えるために袋による簡易梱包が主流だ」
この中国特有の梱包習慣や需要を確実に取り込むため、日本郵便は傘下の国際物流企業TOLL(トール社)と、中国の巨大EC物流事業者ワイズエクスプレス(上海市)による合弁会社として、24年4月に「Toll Wise Digital Link」(トールワイズデジタルリンク=TWDL、シンガポール)を設立した。アセットを持たない4PL事業者として物流の最適化をプロデュースする役割を担う。

▲JPグループの戦略的パートナーシップ(出所:日本郵便)
同社の総合物流戦略部の堀弦課長は、その役割を次のように語る。「TWDLは、越境ECの荷物を日本郵便の国内配送へとつなげるJPグループの戦略的な国際ゲートウェイ企業。ECの受注処理、追跡の可視化、荷物データ作成等のデジタルプラットフォームやこれまで培った中国国内の越境EC企業の顧客基盤・プレゼンスに強みを持つワイズエクスプレス、物流専門性のあるトール、そして日本国内での強固で確実なラストマイルネットワークを持つ日本郵便とが掛け合わされ、TWDLは拡大している。」
「同社を通して、日本郵便と連携した高い配送品質と競争力のある提案を中国の大手EC事業者へ直接アプローチすることで、日本向け輸送ルートへの荷物を獲得できている」
この画期的な共創スキームの結果、ことし4月期において同社経由で日本郵便へ差し出された数量は、対前年同期比50倍に拡大するという驚異的な実績を達成した。

▲日本郵便の堀弦課長
信用と技術が裏付ける博多保税倉庫の自動化ライン
韓国からの輸入ECにおいてはQoo10(キューテン)が非常に高い利用率を誇り市場を牽引している。AppBrew(東京都文京区)が運営する美容プラットフォーム「LIPS(リップス)」において、ユーザー3000人以上を対象とした調査では、コスメを購入する際、最も利用しているECサイトとして半数を超える51.4%がQoo10を挙げた 。

▲2人に1人が、ECサイトとしてQoo10 を利用(出所:AppBrew)
燃油価格高騰などの影響から、従来の航空輸送から海上輸送への移行がメジャーな潮流となるなか、日本郵便は通関・保税大手の国際エキスプレス(東京都品川区)と25年10月に業務提携を締結した。同社の博多保税倉庫内に「新福岡郵便局粕屋分室」を設置している。
釜山から博多への航路では、一般のコンテナ船ではなく旅客フェリーを活用する。朝に港へ到着してから速やかにトレーラーでコンテナを引き出すことが可能であり、ドアツードアで2から4日という航空輸送と遜色ない超短時間配送を実現した。
粕屋分室では、国際エキスプレス領域の通関用マテハンから日本郵便領域の区分機へと、シームレスに荷物を搬送する。同社初となる一気通貫型の自動化オペレーションを確立した。西久保課長は次のように誇る。
「この特殊な保税連携ノウハウにより、Qoo10のメガ割をはじめとする大規模セールに伴う超繁忙期においても、1日数十万個という膨大な処理能力を発揮し、他社の追随を許さない競争力を構築している」
総合物流プラットフォームの確立へ
ユニバーサルサービスの持続性を確保する構造改革を断行しながら、この中国と韓国における輸入越境ECでの圧倒的な成功実績を確かな一歩とする。
堤部長は真の「総合物流企業」への歩みとミッションについて、あらためて強いメッセージを寄せた。「総合物流とは、単に自社の立ち位置の変更に留まるものではない。国境が消失していくこれからのボーダーレスな世界で、あらゆる産業のビジネスを育み、つなぐための強固なサプライチェーンを構築する架け橋となることだ 。国際物流企業トールが持つ国際物流の広範な専門性、国際郵便を通じて長年培ってきたグローバルな仕組み、そして日本全国津々浦々まで毎日確実に届ける強固な最終配達網という、他社には真似できない多層的な資産をグループ内に網羅している」
「M&Aによるトナミホールディングスの完全子会社化や、外部の有力企業であるロジスティード(東京都中央区)との資本業務提携の成果も柔軟にはめ込みながら一体的に事業運営を行い、国内外を結ぶ最も利便性の高い物流プラットフォームを確立していく」
厳しい逆風に立ち向かう日本郵便の挑戦は、確実な成果とともに新たな物流の地平を力強く切り拓いている。(菊地靖)

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