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九州物流総合展、地場固有課題とアジア連携模索

2026年6月25日 (木)

イベント日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が主催する「第1回 九州・東アジア 国際物流総合展 INNOVATION EXPO」が24日、25日の2日間、マリンメッセ福岡(福岡市博多区)で初開催された。東京で毎年9月に開催されている国内最大級の物流見本市が、九州エリアへ初めて足がかりを広げた形だ。

地方展開となる今回は、日本能率協会が主催する「第6回 九州建設開発総合展」や「第7回 九州猛暑対策展」などインフラ関連の専門展示会との合同開催が実現。最先端の物流システムから建設現場、環境対策にいたるまで、九州の産業インフラを支える技術が同一会場に並んだ。折しも初日は接近する台風の影響を受けた悪天候となり、断続的な大雨に見舞われたものの、初日だけで全展示会合計6179人が来場するなど、具体的な課題解決を求める来場者の熱気に包まれた。

「省力化」への切実なニーズと地場企業の存在感

同展が九州で初開催されたからこそスポットが当たったのが、地元エリアに拠点を置く地場企業のユニークなアプローチだ。

国際物流総合展自体に初出展となる四恩システム(福岡県久留米市)は、床面認識技術を用いたAGV(無人搬送車)「FSLAM(Floor SLAM/フロアスラム)」を出展。荷物の配置が頻繁に変わる物流倉庫特有の課題に対し、「ロボットの真下にある床面の細かな模様や傷を記憶して走るため、周囲の環境変化に影響を受けない」と同社担当者は語る。製造業の工場向けから、課題が山積する物流倉庫向けへの進出に向け、確かな手応えを掴んでいた。

また、機械商社の南陽(福岡市)のブースでは、箱の組み立てからフォークリフトでの運搬まで一連のラインを提案。同社産機事業本部福岡支店課長の藤原隆史氏は「完全に人を減らす『省人化』はハードルが高くても、今いる人の負荷を減らす『省力化』へのニーズは非常に切実。人手不足が深刻な九州の荷主・物流企業からの具体的な相談が増えている」と、地場ならではのリアルな課題感を明かした。

▲南陽と共同出展していた、省力化を叶えるシュマルツの移動式真空バランサー「ジャンボフレックスモバイル」

東アジアの物流網を見据えて:アリババ菜鳥が語るデータの同期

本展がもう一つ掲げたテーマが、展示会タイトルにある「東アジア」との連携に向けた布石だ。ロジスティクスイノベーションフォーラムの講演では、中国のEC(電子商取引)巨人・アリババグループの物流を担う菜鳥(ツァイニャオ)日本サプライチェーンのロジスティクステクノロジー部で日本市場の開発を担当する彭浩銘(ホウ・コウメイ)氏が登壇。爆発的なEC需要に対応してきた中国物流の実践から、日本企業への示唆を語った。

▲ホウ氏が「中国アリババの物流の取り組み」をテーマに講演

ホウ氏は、電子送り状によるデータの標準化を起点に高度化してきた軌跡を解説し、物流を「点」ではなく「ネットワーク」で捉える視点を強調。受注、在庫、倉庫、配送を一つの連続した流れとして同期させることこそが物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質であると訴えた。

講演終了後、本誌の単独インタビューに応じたホウ氏は、自らが目撃してきた日中の現場の違いについて切り出した。

▲アリババグループ/菜鳥日本サプライチェーンのロジスティクス・テクノロジー部 市場開発担当の彭浩銘(ホウ・コウメイ)氏

同氏によると、中国もかつては人手や経験に依存した時代があったが、それを打破したのは個別の「点」ではなく、一つの「ネットワーク網」で対応する仕組みであったという。これまで多くの日本の現場を見てきた中で、一部の企業に「一つの拠点の効率を上げれば、全体の効率が上がる」という個別最適のイメージが非常に強いと感じている、と分析する。

ホウ氏は日本の物流現場が持つ優れた改善力を認めつつも、その強みを最大化するために必要なのは個別のハード導入ではないと指摘する。まず着手すべきは、上流と下流のシステムを連携させる「データの同期」であるというのが同氏の持論だ。

一部で自動化が完成したら、それをコピー&ペーストして全体へ広げていく、という手法を示すホウ氏。この「段階的な全体最適」の考え方を、ぜひ日本市場の皆さんに伝えたい、と結んだ。

広域連携への足がかり:現場の課題を埋めるDX

出展規模自体は初回とあって伸び代があるものの、会場では今後の広域連携や自動化の選択肢を示す提案が見られた。

庫内のトータルソリューションを提供するタクテック(東京都文京区)は、国産AGVメーカーの匠などとコラボレーションし、WCSパッケージ「T-Link」を初披露。メーカーを問わず最小限の改造で上位システムと同期させられる仕組みであり、通販発送の拠点が多い九州において、現場の状況に応じた柔軟な自動化のあり方を提示した。

▲タクテック システム部課長の田代奈音氏

また、今回出展した韓国統合物流協会(KILA)は、「韓国も日本と同様に、EC市場の急拡大によるドライバー不足や、少子高齢化に伴う労働人口の減少という共通の構造的課題に直面している。自動化や低温物流における両国の技術・情報の交流は、今後さらに重要になる」と語り、九州をハブとしたアジア圏の対話の必要性を示唆した。

▲左から韓国統合物流協会(KILA)のLee(リー)氏、Seo(ソウ)氏、Lee(リー)氏

地域特性に合わせた施設展開:迫る「竣工」への戦略

こうしたハード・ソフトの需要を受け止める「器」の側面でも、九州市場の動向に注目が集まっている。

物流施設「Landport」シリーズを展開する野村不動産のブースでは、今後の竣工計画を見据えた商談が行われていた。同社は2027年度にかけて、北九州(苅田、小倉)、福岡(古賀、糟屋、鳥栖)など、九州エリアでの施設展開を控えている。

▲野村不動産 西日本支社インフラ・インダストリー事業部事業課 田中陽樹氏

同社西日本支社インフラ・インダストリー事業部事業課の田中陽樹氏は、エリアごとの明確な戦略を次のように明かす。「古賀や糟屋といった福岡インター周辺は都市部への店舗配送や食品、卸小売業の集積地。そのため、多頻度配送に対応できる設計にしている。一方で、港や自動車産業の集積地に隣接する北九州エリアは、大型の工業品や原材料をスムーズに扱える仕様など、地域特性に合わせて住み分けを行っている。今回の初開催を通じて、九州地場のお客様とダイレクトに接点を持てたことは大きな一歩」と語った。

【総括】地方開催の真価と「改正法」への伴走

地方開催としての第一歩を刻んだ同展について、主催事務局の日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所第1部副部長の大西康晴氏と同第1部プログラムプランナーの橘詩乃氏は、2日間の会期を終え、地方が直面する構造改革への課題と未来の展望をそれぞれの視点から総括した。

▲日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所第1部副部長の大西康晴氏

まず、制度やマクロな業界動向、そして今後の広域展開の視点から、大西氏は改正法への対応と全国への波及について次のように警鐘を鳴らす。

「26年4月に改正物流効率化法が全面施行された現在、荷主企業にはCLO(物流統括管理者)の選任や、経営課題としての物流改革が義務として迫られている。2024年問題は決して過去のものではなく、地方の荷主・物流企業にとって今まさに現在進行形の経営課題だ。輸送だけ、倉庫だけを個別に改善して他に負荷を押し付けるアプローチはもはや通用しない。今回会場で見られたようなデータとハードの融合、そして段階的な全体最適を泥臭く実行し、持続可能な物流構造を地域一体となって築いていく必要がある」

▲左から、日本ロジスティクスシステム協会の大西康晴氏、橘詩乃氏

この問題意識を九州にとどめず、製造業の集積地へ広げる動きも始まっている。同協会は本展示会を27年4月、ものづくりの中枢である名古屋・中部エリアでの開催を決定している。自動車産業をはじめ強力な製造サプライチェーンを持つ中部へ取り組みを広げることで、地域単位の物流改革を産業インフラ全体の底上げにつなげる考えだ。

一方で、地方開催がもたらす地場へのインパクトやアジア連携の可能性について、橘氏は来場者の熱気と地理的優位性を活かした手応えを語った。

「接近する台風の影響による悪天候下でのスタートであったが、具体的な課題解決を求めて来場される方々の熱意を肌で強く感じた。東京の展示会へ直接足を運ぶことが難しい地方の荷主企業や配送業者に対し、こちらから地域に赴き、半導体や農産品といった九州の地域特性に合わせた解決の場を提供することの大切さを再確認している」

特に九州はアジアの玄関口であり、韓国統合物流協会(KILA)の出展やアリババ菜鳥の登壇に代表されるよう、国際的な広域連携のポテンシャルが極めて高いエリアだ。少子高齢化や労働力不足という日韓共通の構造的課題に対し、九州をハブとしたアジア圏の対話や技術交流を加速させる意義は大きい。地方における物流構造改革のヒントを提示して幕を閉じた第1回の展示会だが、同協会としては来年も引き続き九州での『第2回』開催を6月に決定しており、地域に寄り添った課題解決の場を全国の各エリアへと着実に波及させていく意気込みだ。

緊迫する過渡期、地方のハブに求められる実践

東京圏のような圧倒的な物量やメガ規模の施設スペックで圧倒するのとは異なり、今回の九州開催が浮き彫りにしたのは「地域特性に寄り添った最適化」という泥臭くも切実な、地方物流のリアルな姿だ。2024年問題の節目を超え、CLOの選任義務化が4月から始まった今、荷主と物流企業の双方が「個別の改善」というこれまでの限界を痛感している。

悪天候下で交わされた熱い商談の数々は、単なる情報収集の域を超え、生存戦略としてのシステム連携や省力化への真剣な模索そのものであった。アジアへの地理的近接性と、半導体や農産品といった特有の需給ギャップを抱える九州市場だからこそ、この地で芽生えた「段階的な全体最適」のうねりが、今後全国の各地方へと波及していく強力なベンチマークとなることを確信させる2日間であった。(東京編集部・林花代子)

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