行政・団体全日本トラック協会(全ト協)は9日、第227回常任理事会と第217回理事会合同会議を開催した。会議では、主要議事の承認に加え、国土交通省からの政策説明、さらには近代化基金の運用見直しを巡る活発な議論が行われた。
冒頭の挨拶に立った寺岡洋一会長は、昨今頻発する線状降水帯による豪雨や大型台風、全国各地での地震といった自然災害に対し、「全ト協としての備えは十分なのか」と強い危機感を表明した。 全ト協ではすでに47都道府県・各地方自治体と災害時の協力に関する覚書を締結しているが、いざという時の緊急物資輸送や食料・備蓄確保の体制について、「本当の有事における実効性を確保するため、緊急時の対応というものをもう一度見直していくべきだ」と述べ、災害対応体制の総点検と実働計画の具体化を進める方針を示した。

▲全日本トラック協会会長の寺岡洋一氏
また、寺岡洋一会長は6月25日の通常総会から2週間も経たない時期に本合同会議が開催された点に触れ、今回の審議事項が入退会・代表者変更の追認1件のみであることから、遠方から役員を招集する対面開催の効率性に疑問を投げかけた。このため、同様の追認案件については書面承認の活用や、開催時期を7月末から8月末へとスライドさせるなどの運営改善案を提示。次年度に向けて具体的な見直しを検討していく考えを示した。

▲国土交通省大臣官房総括審議官の岡野まさ子氏
続いて、来賓として出席した国土交通省幹部からの挨拶が行われた。まず、国交省岡野まさ子大臣官房総括審議官が登壇。昨年4月から施行された改正物流効率化法の成果に触れ、近々公表予定の調査結果において、ドライバーの「荷待ち・荷役時間」が前回比で大幅に減少する見込みであること、また宅配便の再配達率も改善傾向にあることを報告した。岡野氏は「これらは現場の皆様のご尽力の賜物」と謝意を述べるとともに、今後「適正原価制度」の検討会や、実務レベルの「物流政策推進関係者会議」を早期に立ち上げ、全ト協にも中心メンバーとしての参画を要請していく考えを示した。
次に、国交省道路局の渡邊良一高速道路課長が挨拶し、全ト協からの最重点要望事項に対する道路関係の取り組みを説明した。災害に強い道路ネットワーク整備として、圏央道の千葉県区間(ミッシングリンク)を2026年度に開通させる予定であることや、茨城県区間の4車線化を順次進める方針を報告。さらに、深刻な駐車スペース不足に対応するため、NEXCO管理用地等の活用も含めて今年度中に500台以上の駐車マスを増設する計画を明らかにした。また、9月に予定されている東名高速の深夜施策に関する現場ヒアリングに渡辺氏自身も参加し、ドライバーの生の声を聴取して施策に反映させたいとした。

▲国土交通省道路局高速道路課課長の渡邊良一氏
その後の国交省幹部の退席に続いて、国土交通省物流自動車局の指田徹・貨物流通事業課長より説示が行われた。指田氏は、同日合同会議に先駆けて行われた自由民主党トラック輸送振興議員連盟において、全ト協から出されていた燃料価格高騰への対応や税制改正に関する最重要要望事項に対し、政府の激変緩和措置による価格抑制や、燃油サーチャージ導入・適切な価格転嫁の徹底を引き続き支援していくと回答。走行距離課税については動向を注視し、具体的な動きがあれば連携して対応すると述べた。

▲国土交通省物流・自動車局貨物流通事業課長の指田徹氏
また、トラック適正化法に基づく「適正原価制度」について、28年6月までの導入に向けて近々有識者などによる検討会を設置し、算出の枠組みや基本的な考え方の議論を開始することを報告。さらに、実務レベルで課題解決を図る「物流政策推進関係者会議」を早期に立ち上げ、全ト協にも中心メンバーとしての参画を求めた。
その他の議事終了後に行われた質疑応答では、物価や燃料、車両価格の上昇に伴う運転資金の確保を巡り、活発なやりとりが交わされた。
兵庫県の代表者から、多くの都道府県で「近代化基金」が設備投資用途に限定されており運転資金に充てられない現状を踏まえ、同県が独自に別の金融機関と提携し、利子補給を行うスキームで運転資金を支援している実績(兵庫モデル)が報告された。
これを受け、会員の資金繰り支援のために近代化基金の使い道を運転資金へも拡大してほしいとの要望が出された。
これに対し寺岡洋一会長は、他県では運転資金への基金活用が原則認められていない現状を確認した上で、基金の融資窓口が慣例的に商工中金に限定されている点について、「より有利な条件を提示するほかの金融機関との連携も検討すべきではないか」と問題提起を行った。
この運転資金対象化の是非や金融機関連携のあり方については、今後経営改善委員会において、歴史的経緯の検証や兵庫モデルの横展開の可能性を含めて深く検証し、検討結果を後日理事会へ報告することで合意した。(土屋悟)
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